第4話

文字数 1,512文字

その後も、への字口のおばあちゃんは、
花壇で楽しげに仕事をしている、おじいちゃんと
綺麗な花をただただボーッと見続けていました。
ただただボーッっと。
ただただボーッっと。
毎日、ボーッっと。
ある日、いつものようにベッドから花壇を
見ていた時、おばあちゃんの胸がドキッとしました。
今日の花は、、、、

花が嬉しそうにみえる。花が喜んでいる。
そう見える。
いやいやバカバカしいそんな事。

でもそう見えた。
いやいやそんな事、あるわけない。
でもたしかにそう見えた。

毎日、あのじいさんが花に話しかけてるのを見ていたから、私もおかしくなってしまったのかもしれん。

でも花が喜んでいる、そう見える、、、

ベッドから半身起き上がって花壇を見ている、
への字口のおばあちゃんの目は、ビックリまなこで見開いたままです。

ドキッ ドキッ ドキッ ドキッ 
おばあちゃんの胸がドキドキ鳴っています。
ドキッ ドキッ ドキッ ドキッ
ドキッ ドキッ ドキッ ドキッ
ビックリまなこだった、おばあちゃんのシワシワの目からいつしか涙が一粒、ポロリと落ちていました。

そうか、、、、そうだったんかぁ、、

家の畑の種は咲かなかったんじゃない、
私の畑で咲きたくなかったんだ。

悲しいとか 憎いとか 怒りでいっぱいの
畑に花を咲かせたくなかったんだ。
そうだったんか、、、
咲きたかったはずなのになー私が、、、
そう思った途端、への字口のおばあちゃんの目から30年分かと思えるような、涙がポロポロポロ
ポロポロポロと止めどなく流れてきました。
そして誰にも気づかれないように声をころしながら、ベッドで涙を流し続けていました。
そうか、そうだったんだ、そうだったんだ。
ごめんよ、、、ごめんよ、、、

そんな事があってから数日がたち、おばあちゃんの口はいつしか、への字口ではなくなっていました。
今まで話しなどしていなかった、病室の人とも
恥ずかしげに話しをする事がありました。
2階の窓から花畑の手入れをしている おじいちゃんに小さな声で話しかけたりもしました。
息子達と孫に囲まれて、優しい笑顔に囲まれて
幸せそうに、おばあちゃんは亡くなりました。

おばあちゃんが亡くなった後、おばあちゃんの
花畑に摩訶不思議な事が起きたのです。

ある日、花畑に30年分の花の種が芽吹き、早送りのように一斉に花が咲き出したのです。
季節など関係なく、水などあげていなくても、
茶色の地面がみえなくなるほど、花が地面から盛り上がり小山が出来るほど咲き乱れ、この世のものとは思えぬほどの驚きと綺麗さでした。
そして、1日だけ満開の花を咲かせた後、花はすべて風に散らされ空に舞い上がり空が花柄になったかのようでした。そして一瞬時間が止まった?と思った後に、すーっと消えてなくなってしまいました。
その花々を見た人達は、あまりの綺麗さに涙をながし、天国にはこんな花が咲いているんだろうかとくちぐちに話していました。
花がすべて消えた後ご近所さんは
「今のは何?何のしわざ?おばあちゃんが魔法をかけたのかしら、魔女的なおばあちゃんではあったけど」
「おばあちゃんに見せてあげたかったね」
「30年も待ったんだもの」
「どうしようもない頑固なおばあちゃんだったけど、最後は穏やかな、おばあちゃんになったらしいわよ」
「あのおばあちゃんが変わるとは思えなかったけどね」などなど
そして口を揃えて言う事は、さっきの花が畑に少しでも残ってくれたらおばあちゃんが喜んだでしょうねと言う事でした。
でも、ご近所さん達には分かりませんでしたが、
畑の隅に以前から咲いている1輪の白い花の横に、 もう1輪白い花が仲良く並んで咲いていたのです。
その2輪の花は畑の片隅から枯れてなくなる事はありませんでした。
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