第1話

文字数 1,621文字

 おにわのちゅーりっぷがさいたひのこと。じょうろでおみずをあげていたゆうなちゃんのもとへ、へんてこないきものがやってきました。ふわふわのけなみをしていますが、にほんあしでたっていて、いぬやねこではありません。からだはあかるいおれんじいろで、くまでもありませんでした。
「あなたはだれ?」
「おれはかいじゅうだ。はらがへって、くいものをさがしてる。」
 かいじゅうにあうのは、はじめてです。かいじゅうはこどもなのか、ゆうなちゃんよりちいさくて、ちっともこわくありませんでした。
「まあ、たいへん。わたしのおやつをわけてあげるわ。」
「それじゃあ、くわせてもらおうか。いただきまーす!」
 おそとにおやつはありません。ふしぎにおもっていると、かいじゅうはかだんのちゅーりっぷにむかって、おおきくくちをひらきました。
 ぱくり!
 たいせつにそだてたちゅーりっぷは、はらぺこのかいじゅうに、みんなたべられてしまいました。いっぽんのこらずなくなって、ゆうなちゃんはかなしくなりました。


「かだんのおはなは、おやつじゃないわ。」
「おれは、きれいないろがついた、たのしいものがこうぶつなんだ。だけど、おかしいな。ぜんぜん、はらがいっぱいにならないぞ。もっとたくさんくわないと。」
 かいじゅうは、にわからとびだしていきました。やさしいゆうなちゃんは、かいじゅうがしんぱいで、いそいであとをおいかけます。
 まちのなかは、たくさんのいろであふれていました。あかいぽすと。みどりのき。ぎんいろのくるま。しろいかべのおうち。
「ごちそうがいっぱいだ。いただきまーす!」
 ぱくり!
「わあ、ぜんぶたべちゃった!」
 なんて、くいしんぼうなのでしょう。けれど、かいじゅうはこまったかおをしています。
「ちっともまんぷくにならないぞ。もっとたべなきゃ。」
 かいじゅうは、はしりだしました。


 ふたりがついたのは、こうえんです。あおいぶらんこも、むらさきのべんちも、きいろいしーそーも、ぱくり! かいじゅうは、ひとくちでたべてしまいました。
「どうしてだろう。たべてもたべても、はらがへるんだ。だんだん、かなしくなってきた。うわーん!」
 かいじゅうは、とうとうなきだしてしまいました。

 ゆうなちゃんはあたりをみまわします。かだんもまちもこうえんも、からっぽです。だいじなものがなくなって、たのしいひとはいませんでした。きっと、みんなのかなしいきもちまで、いっしょにたべてしまったから、かいじゅうはなみだがでるのでしょう。
「なかないで。あなた、きれいないろをした、たのしいものがこうぶつなんでしょ。わたしが、たべさせてあげる。だから、これまでたべたものを、かえしてほしいの。」
 かいじゅうはうなづきます。おおきなこえで、がおー!とほえると、ちいさなたつまきといっしょに、たべたものがくちからとびだしました。かぜにのって、もちぬしにはこばれていきます。すっかりもとどおりになったので、みんなはおおよろこびでした。
「はらぺこだけど、かなしくなくなったぞ。」


 なきやんだかいじゅうとてをつなぎ、ゆうなちゃんはおうちへかえりました。おどうぐばこから、くれよんをとりだします。
「うまそうなくれよんだね。」
「たべちゃだめよ。ちょっとまってて。」
 ゆうなちゃんはくれよんで、おえかきちょうにえをかきました。かわいいりぼん。ぴかぴかのおほしさま。ぐるぐるきゃんでぃ。かいじゅうのために、たくさんのいろをつかって、だいすきなものばかりかいていきます。
 おえかきなのに、おりょうりとおなじだなんて、あんまりへんてこで、どんどんたのしくなりました。
「どのえも、すごくうまそうだな。たべていいの?」
「ええ、どうぞ。」
 ぱくり!
 かいじゅうは、おなかをなでて、にっこりわらいます。
「おいしかったよ、ごちそうさま!」
 ゆうなちゃんとかいじゅうは、うれしそう。おにわへでたふたりは、ちゅーりっぷのかだんのまえで、なかよくあそびました。
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