第2話:学問の目覚め、彼女との思い出

文字数 1,645文字

 その後、寝る間も惜しんで読んだ。すると集中力がついた。また、日本人の気質と全く違うロシア人の考え方、行動など興味深い。その中でも最後の「静かなるドン」は、長編過ぎて、読み終える頃、最初の頃の出来事と流れを忘れてしまう程だ。仕方なく、もう一度読み直した。

 とにかく、忍耐強いというか辛抱強いというか生きると言うことの喜怒哀楽、厳しさ、荘厳さ、激しさに圧倒されてしまった。お姉さんに、感想を聞かれ、正直に答えると、自分だけで、考えることが身についてきたわねと誉められた。そして、次に、日本の小説も読んでご覧なさいと言われた。

 川端康成の「雪国」、夏目漱石の「坊ちゃん」、「こころ」、幸田露伴の「五重塔」、太宰治の「走れメロス」、宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」、「セロ弾きゴーシュ」も読みなさいと文庫本を貸してもらい読んだ。最後に、最近読んだ、フランソワーズ・サガンの「悲しみよ、こんにちは」を渡された。

 こうして中学2年になる頃には、苦手だった国語が克服でき、主要5科目の成績が急上昇し、クラスベスト3、学年でも、もう少しでベスト10と言うところまで来た。一方、清水のクラスでは、赤茶色の髪の毛の色白の娘さんがいて、仲良くなった。彼女は、一目見て外国人の娘とわかり名前を中本薫子と言った。

 関西なまりの日本語を使うので面白いと思ったのが、きっかけとなり、つきあい始めた。英語がとても上手で、彼女と一緒に英語の発音や会話の練習をするようになった。話をしてみると、お父さんは、以前、亡くなった。お母さんと2人暮らしで、同じ団地の住人だとわかった。

 しかし、彼女は、自分の事について、ほとんど話さず、神戸で育ったとだけ教えてくれた。そして、彼女も関東に来るのは、初めてであり、東京の新宿、渋谷、銀座、横浜、山下公園、中華街、江ノ島にも連れて行ってあげた。彼女は、なぜか、とても警戒心が強く、打ち解けてくれるまで、随分時間がかかった。

 しかし、中学2年時には、勉強を教えた。しかし、集中力がありかなりの勢いで勉強をして、中学2年、夏休みの頃には、クラスでも上位の成績になり、地元の公立の名門高校を目指すと言い始めた。どうしてもそこに入りたいと必死に勉強し清水と成績で競り合う迄になった。

 何か、理由があるなと思い聞くと、どうしても、私が稼がないと将来食べていけないと話した。母が、病弱で、内職しか出来ないので、何とか、楽にさせてあげたいと言うのが本音だと打ち明けた。公立高校を出て、給料の良い銀行には行って、母に、良い生活をさせたいと、話すようになった。

 その後も頻繁に、将来の話をしていた。その頃、清水は、近くのキリスト教会で毎週、日曜日のミサの後、60分間の英語教室を開いているのを知り、参加し始めた。それにより英語も強化できた。中学2年の2学期、一斉テストで、学年ベストテンに入り最高成績となり大喜びした。

 今後の進路を考え、持っても得意科目はと考えると地理、歴史、政治経済だったが、生かせる仕事の領域は狭いと考えた。次に得意な数学を使えて新しい研究がしたいと漠然と考え出した。その頃、化学実験の授業で、劇的な瞬間を経験した。それは、透明な水溶液に、透明な試薬を入れると色が付き驚いた。

 それが妙に気になり、そうだ、化学を勉強しようと漠然と考え始めた。その話を両親にすると驚いていた。母が、うちは、お金が少ないから大学まで出せないと言いだした。父が、お前は、健康な体なのだから中卒で働けと言い、せいぜい公立の工業高校までだと言い放った。その話しを聞き、内心、かなり傷ついたが仕方がないと思い直した。

 その後、中学卒業後の進路の資料を調べると5年生の工業専門学校があり八王子に国立高専がある事がわかった。そして育英会の奨学金をもらい国立の工業専門学校に入りたいと言い出すと、母が、それならOKと言った。父が、そこまで必要ないと言ったが、母が、あんたが学歴がなくて給料が少ないと言い、父の意見を退けた。
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