第4話 クリーニング屋
文字数 743文字
すいませーん
あーはいはい。いらっしゃいませー
クリーニングお願いしたいんですけど。これ全部
はい、えーと……
ワイシャツ３枚、スーツ、冬のコート、ダウン、カシミヤセーターと、7点ね。
こちらのスーツ、汗抜きクリーニングにします？
汗抜きクリーニング？
ええ。水洗いで、汗に含まれる皮脂まで落とせちゃうんです。だから、黄ばみとか、加齢臭とか、あと下受けからの恨みつらみとか、取引先からの怨嗟とかも落ちますよ？
え、最後の何？ 逆に怖いよ、そんなこと言われても。
うん、まぁ、じゃあ……お願いします。
プラス700円ね。
あと、カシミヤセーターはね、デラックスコースがお勧めなんだけど、どうします？
それ、何が違うの？
デラックスコースっていうのは、デラックス洗剤で、マツコデラックスが作業担当して、仕上げにデラックス加工するんです
え、マツコデラックス？
今、さらっと言ったけど、真ん中おかしかったよね？
あと、ダウンに防水加工も付けます？
流したな。クリーニング屋だけに。
防水は……付けます。雪の日とかも着ることあるから
はい、じゃ伝票切るんで、ちょっと待ってくださいね
はーい。あれ？ ここに貼ってある、これ……何これ、以下のものは特別料金ですってやつ。
海外ブランド、本革、レザー製品、皮パーツ、鋲、金具、スタッズのついたもの、和服……はわかるけど、メンヘラ女が編んだ手編みのセーターって何？
それ、すごく重いんで
いや、重いけど。確かに重いけど！
ホント重いんですよ。フォークリフト使って運ばないといけないんです。
こないだ無理したら腰痛めちゃって
んなわけあるか！
はい、じゃー10300円ね
高っ！ え、そんなすんの？
ふとんとか毛布とかも、よかったらお持ちくださいね。これ、割チケ。
また流したな
クリーニング屋ですからね
おしまい
