女子魔術学校のアミル 3
文字数 1,856文字
『虚ろ』という存在は、魔術士にとっては秘宝にも近しいものである。
数十年に一度発見されるかどうかの、希少な存在。その意味を説明するにはまず、魔術士がどうやって魔術を使うのかという部分に言及しなければならない。
魔術士は、基本的に自らの持つ魔力を使用し、深淵に潜り一定の法則により精霊に干渉し世界に影響を及ぼす魔術を繰り出す。魔力は後天的に増幅し、生まれながらの総量による個人差はそれほどではなく、アミルのように『色付き』ともなれば殆どが生まれつきというより、その後の人よりも遥かに秀でた努力によって魔力を所有しているとされる。それは半端な努力でどうにかなる範囲を、越えてしまっている。
ただしそれはあくまで基本的であり、実は魔術士はもう一つ利用している力がある。
それが世界に元よりあるエーテルと呼ばれる、魔術士にとってのもう一つの魔力。正しくは、魔術士の中にあり魔術に使用されるエーテルは魔力と呼ばれ、それ以外は全てエーテルと呼称されているだけで元は同じものだ。
第五原素とも呼ばれるエーテルは、原初より世界に自然に存在し、天使や魔族といった高次生物はエーテル以上の物質で構成され、人間は第五原素以下で構成されている。
だから人間自身もそれぞれ、魔術士ではない普通の人間ですら、基本的にその身には微小なエーテルが存在している。存在しているからこそ、個を保てると言っても間違いではない。
世界にたゆたうエーテルは人為的にかき集める事は難しいが、集めれば大きな魔術を使用出来る。だから増幅魔術としてエーテルを集める魔術や、道具にエーテルを込める方法も存在する。けれどそのどれもが集められるエーテルは微小なものだ。例えば普通の魔術士が『色付き』を超えるような、そんな魔術を使えたりはしない。
それら全ての例外存在が、『虚ろ』。
彼ら『虚ろ』は生まれながらに身の内に全くエーテルを持たない人間を指す。本来であれば生物としてまず間違いなく生存不可能な状態であるが、何らかの力により生存する事が出来ている存在が『虚ろ』とされる。大半は、高次生物の干渉を受けているとされるが、歴史上も数える程しか存在しない彼らに関して分かっている真実は殆ど無い。
重要なのは、『虚ろ』はその身にエーテルを宿さない故か、世界に漠然と存在する自然のエーテルを無自覚に集める事が可能である点。
正しくは自然のエーテルが空いている場所を埋めるかのように、勝手に『虚ろ』に集まってくる。そして『虚ろ』自身の中には入れず、集まった高濃度のエーテルは常に『虚ろ』の周囲に存在する事になる。それは、魔術士達が自分たちでかき集める量よりも遥かに多い。
普通の魔術士が、『色付き』を凌駕出来る程に。
故に彼ら『虚ろ』は、魔術士にとって秘宝である。歴史上確認された『虚ろ』の周囲は、魔術士同士の争乱が絶えないのもその為。手に入れればどんな魔術書よりも遥かに大きな力になる。
但し、彼ら『虚ろ』はある問題により総じて成人する事も無く短命に終わっている。更に最期の殆どは、精神崩壊という最悪の状態で。
問題は、『虚ろ』は魔力場に対して精神的な影響を非常に受け易いという事。
魔力場とは、全ての人間が己の内包する魔力の総量により自然と周囲に発生させているもの。魔術に対する抵抗力にもなるもの。
魔力を殆ど持たない普通の人は自分を少し包む程度であるし、魔術士となれば相応の範囲になると共に、使用する魔術の有効範囲の目安ともなる。『色付き』の魔術士ともなれば、その範囲は優に街2~3個は覆える。
基本的に視覚で確認出来る訳でもなく、静電気のようなそれは微弱で、より強い魔力場があれば他の者達の魔力場は悉く掻き消される。例えばおよそ『色付き』の魔力場の中で魔力場を保てるのは同じ『色付き』のみで、他は魔術士であっても魔力場はあってないようなもの。魔術が使用出来ない訳ではないが、周囲の魔力場は完全に『色付き』のものになっている。
およそ人の多い場所においては魔力場は不安定になりやすい。
そして彼ら『虚ろ』は、自分が存在する場所の魔力場が安定していなければ健全な精神状態を保てず長時間それが続くと精神崩壊するという特徴がある。故にその希少さと効果により不安定な争乱の中にあり易い彼らは長生きする事は難しく、仮に争乱の中に無くとも、普通の人の中では安定した魔力場とは言えず、やはり長生き出来ない。
『虚ろ』である事が分かる前、物心つく前に死亡しているケースも少なくないという。
数十年に一度発見されるかどうかの、希少な存在。その意味を説明するにはまず、魔術士がどうやって魔術を使うのかという部分に言及しなければならない。
魔術士は、基本的に自らの持つ魔力を使用し、深淵に潜り一定の法則により精霊に干渉し世界に影響を及ぼす魔術を繰り出す。魔力は後天的に増幅し、生まれながらの総量による個人差はそれほどではなく、アミルのように『色付き』ともなれば殆どが生まれつきというより、その後の人よりも遥かに秀でた努力によって魔力を所有しているとされる。それは半端な努力でどうにかなる範囲を、越えてしまっている。
ただしそれはあくまで基本的であり、実は魔術士はもう一つ利用している力がある。
それが世界に元よりあるエーテルと呼ばれる、魔術士にとってのもう一つの魔力。正しくは、魔術士の中にあり魔術に使用されるエーテルは魔力と呼ばれ、それ以外は全てエーテルと呼称されているだけで元は同じものだ。
第五原素とも呼ばれるエーテルは、原初より世界に自然に存在し、天使や魔族といった高次生物はエーテル以上の物質で構成され、人間は第五原素以下で構成されている。
だから人間自身もそれぞれ、魔術士ではない普通の人間ですら、基本的にその身には微小なエーテルが存在している。存在しているからこそ、個を保てると言っても間違いではない。
世界にたゆたうエーテルは人為的にかき集める事は難しいが、集めれば大きな魔術を使用出来る。だから増幅魔術としてエーテルを集める魔術や、道具にエーテルを込める方法も存在する。けれどそのどれもが集められるエーテルは微小なものだ。例えば普通の魔術士が『色付き』を超えるような、そんな魔術を使えたりはしない。
それら全ての例外存在が、『虚ろ』。
彼ら『虚ろ』は生まれながらに身の内に全くエーテルを持たない人間を指す。本来であれば生物としてまず間違いなく生存不可能な状態であるが、何らかの力により生存する事が出来ている存在が『虚ろ』とされる。大半は、高次生物の干渉を受けているとされるが、歴史上も数える程しか存在しない彼らに関して分かっている真実は殆ど無い。
重要なのは、『虚ろ』はその身にエーテルを宿さない故か、世界に漠然と存在する自然のエーテルを無自覚に集める事が可能である点。
正しくは自然のエーテルが空いている場所を埋めるかのように、勝手に『虚ろ』に集まってくる。そして『虚ろ』自身の中には入れず、集まった高濃度のエーテルは常に『虚ろ』の周囲に存在する事になる。それは、魔術士達が自分たちでかき集める量よりも遥かに多い。
普通の魔術士が、『色付き』を凌駕出来る程に。
故に彼ら『虚ろ』は、魔術士にとって秘宝である。歴史上確認された『虚ろ』の周囲は、魔術士同士の争乱が絶えないのもその為。手に入れればどんな魔術書よりも遥かに大きな力になる。
但し、彼ら『虚ろ』はある問題により総じて成人する事も無く短命に終わっている。更に最期の殆どは、精神崩壊という最悪の状態で。
問題は、『虚ろ』は魔力場に対して精神的な影響を非常に受け易いという事。
魔力場とは、全ての人間が己の内包する魔力の総量により自然と周囲に発生させているもの。魔術に対する抵抗力にもなるもの。
魔力を殆ど持たない普通の人は自分を少し包む程度であるし、魔術士となれば相応の範囲になると共に、使用する魔術の有効範囲の目安ともなる。『色付き』の魔術士ともなれば、その範囲は優に街2~3個は覆える。
基本的に視覚で確認出来る訳でもなく、静電気のようなそれは微弱で、より強い魔力場があれば他の者達の魔力場は悉く掻き消される。例えばおよそ『色付き』の魔力場の中で魔力場を保てるのは同じ『色付き』のみで、他は魔術士であっても魔力場はあってないようなもの。魔術が使用出来ない訳ではないが、周囲の魔力場は完全に『色付き』のものになっている。
およそ人の多い場所においては魔力場は不安定になりやすい。
そして彼ら『虚ろ』は、自分が存在する場所の魔力場が安定していなければ健全な精神状態を保てず長時間それが続くと精神崩壊するという特徴がある。故にその希少さと効果により不安定な争乱の中にあり易い彼らは長生きする事は難しく、仮に争乱の中に無くとも、普通の人の中では安定した魔力場とは言えず、やはり長生き出来ない。
『虚ろ』である事が分かる前、物心つく前に死亡しているケースも少なくないという。