第28話
文字数 2,522文字
目が紫色に光った。なんだこれ、だんだん視界がぼやけ......
☆☆☆
いつになく彼女のことが魅力的に見える。触れたときにしかわからないずっしり重みのある胸の感触、艶々しい唇、そして純粋な目。僕を動揺させるには十分すぎるものだった。
どうして? その言葉を繰り返すたびに疑問が湧く。敵はどこだ。
その言葉と共に僕は目の前にいた黒帽子黒外套の敵に気が付く。足は考えるまでもなく走り始めた。
彼女の剣を交わし距離を取ろうと後退する。エイビスさんの星は未知数だ。怪我人に無理を強いるわけにもいかない。回転と同時に鉾を引き抜き距離を作る。
武装発光で視界を奪い距離を詰め自分の空間に持ち込む。気づけば壁に激突していた。
彼のステッキがしなり僕に攻撃を仕掛ける。距離を一定に取り僕の攻撃の瞬間を止めようと動く。動きが読まれている。
エイビスが進もうと動く。それを手で拒否する。僕の手は衝撃を受け痺れが身体じゅうを走った。
僕の頭は真っ白になった。目の前にいるのは誰だ? 僕が憶えていたのはミカロと違い乱暴でなくて麗らかで礼儀正しい彼女だ。視界には乱雑に敵に斬りかかる彼女が見えた。
女性は恐ろしい。僕は立ち上がることを忘れていた。
剣は姿を消し、彼女は地に膝を着いた。彼女を連れ戻し際、僕は彼の剣をもろに受けた。足から血が流れていく。
エイビスさんは気を失っている。急いで戦闘を終える必要が出てきた。姿が視界を外れた瞬間、上空に飛び位置を確認。
お気に入りに右手で押さえる帽子を狙う。
敵の地に蜘蛛の糸が張られる。この好機を僕は逃さない。敵をきり刻み壁に吹き飛ばす。
鉾を振り下ろした瞬間、彼は完全に動きを停止させた。
よし。あとはエイビスさんを連れて行けば。
いない。悲鳴が耳に入る。ワインズは彼女の首元に剣を向けていた。
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敵はフォメアを見た瞬間、標的を変えた。だが俺の身体は動きを見せなかった。フォメアでも無理か。
フォメアの声で氷柱は姿を消した。手のうちから氷が形成される。厄介だな。フォメアは固まった状態の俺とナクルスに首を傾げる。
全身に力を入れ、踏み出す。これでわかんだろ? 首を元に戻した。よし。
敵は俺を標的に突き進む。拳をこちらに突き付けると同時に武器は姿を消した。
動く。拳を弾き腹に一撃を叩きこむ。入った感触がねぇ。距離を取られ俺は動きを止める。ナクルスが近づき敵は氷柱を用意する。ナクルスが止まったかと思いきや氷は水に変わりナクルスはヤツを壁の中に吹っ飛ばす。
体までは氷じゃねぇみたいだな。おかげで何とかなりそうだ。
敵はこっちに笑顔を見せ氷柱を両手に構える。フォメアは首を振った。
ナクルスが俺の方向に飛び上がり俺たちに重みがかかる。
ナクルスが地に付いた瞬間、体が軽くなった瞬間とともに、俺は体を屈めた。目に穴が開くかと思った。あと少しで目線がドーナツになるところだった。
敵は氷柱を投げ俺を囲もうと動く。ナクルスが動こうとするが、そのときにはフォメアが俺の隣にいた。
違ぇ。一番辛ぇのは誰かを捨てなきゃいけないことだ。どうしてこんなときばっかりあいつらのことを思い出しちまう。俺がそれを望んでんのか? それが俺の、俺たちの運命なのか?
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★★☆
お前があれを残した意味が分かった。変革を起こしてやるよ。
上空に飛び上がり態勢を整える。俺が不思議な空間に進入すればどうなるかは気になるがそんなこと言ってられねぇ。敵の頭を狙い、拳を振り上げ飛びかかる。
スピードが跳ね上がり俺は敵のつららに突っ込んだ。ナクルスは倒れている。そういうことかよ。敵は吹き飛び俺は肩からつららを引き抜く。
鉄は氷も砕く、ってな。とっさに自分を変化させたみてぇだけど、防御してないのと変わらねぇな。
俺はグッドサインを送った。