通信病院
文字数 4,437文字
近年、稀に見る爆発的なインフルエンザウイルスの感染。
病院に溢れかえる患者。そして、蔓延るウイルスは猛威を奮い続け、入院患者で溢れかえる事で病院は機能不全に陥る寸前。
これに伴い、注目を集めたのが。
「オンライン診察」
オンラインの回線を利用して病院に行かずとも、ある程度の診療をしてもらえるシステム。病院代金はクレジットや電子マネーを利用して払い、接触は一切ない。
医者もオンラインであるため、患者との接触もなく、病気が移る心配もない。
そして、このオンライン診察を受けようとしているのが、自分だ。
朝から酷い熱と重度の倦怠感。立つのもやっとで、目の前がぼやける。
これはヤバイ、と思って救急車を呼んだら
病院に溢れかえる患者。そして、蔓延るウイルスは猛威を奮い続け、入院患者で溢れかえる事で病院は機能不全に陥る寸前。
これに伴い、注目を集めたのが。
「オンライン診察」
オンラインの回線を利用して病院に行かずとも、ある程度の診療をしてもらえるシステム。病院代金はクレジットや電子マネーを利用して払い、接触は一切ない。
医者もオンラインであるため、患者との接触もなく、病気が移る心配もない。
そして、このオンライン診察を受けようとしているのが、自分だ。
朝から酷い熱と重度の倦怠感。立つのもやっとで、目の前がぼやける。
これはヤバイ、と思って救急車を呼んだら
と簡単にあしらわれる。
近寄ってくる死の気配。藁にも縋る思いでオンライン診察を受ける。
診察を受ければどれだけ重度なのかわかる筈。そして、あわよくば入院できるかもしれない、という考えから受付をする。
診察を受ければどれだけ重度なのかわかる筈。そして、あわよくば入院できるかもしれない、という考えから受付をする。
ボロボロの体を起こし、なんとかこたつの上にノートパソコンを起動させ、ライブカメラを起動。これでもかと言う厚着をして診察の順番を待つ。
しばらくおまちください、という画面が何時まで経っても変わらない。イライラから直ぐに切ってしまいそうな衝動に駆られたが、我慢だ。
それから十分後、パソコンの画面が唐突に切り替わる。
画面には病院の診察室らしき背景と、目の前に白衣を着た女医がいた。
肩まで伸びた茶髪に、つぶらな瞳。細く、しなやかな首と白衣からチラリとのぞかせる鎖骨。モニター越しに映る女医は非常に若く、リモートに慣れてないのか、落ち着かない様子でこちらを見ていた。
しばらくおまちください、という画面が何時まで経っても変わらない。イライラから直ぐに切ってしまいそうな衝動に駆られたが、我慢だ。
それから十分後、パソコンの画面が唐突に切り替わる。
画面には病院の診察室らしき背景と、目の前に白衣を着た女医がいた。
肩まで伸びた茶髪に、つぶらな瞳。細く、しなやかな首と白衣からチラリとのぞかせる鎖骨。モニター越しに映る女医は非常に若く、リモートに慣れてないのか、落ち着かない様子でこちらを見ていた。
この瞬間だけは、病気に感謝してしまう。
おーい、と不安そうにこっちを見て手を振る女医。
それを見て自分も手を振る。
それを見て自分も手を振る。
モニターに食らいつく。何言ってるんだこの女医!
大声を出したせいで、咳がひどくなる。ふらりと立ち眩みもする。
よろける自分を見て、モニターの女医の顔が大きくなる。
よろける自分を見て、モニターの女医の顔が大きくなる。
この女医は喧嘩売ってるのか?
白衣についている名札を確認すると「八武」と書いてある。
白衣についている名札を確認すると「八武」と書いてある。
自信の無い感じで言葉を口にすると、女医も自分の名前を言われたのが分かったのか、あたふたする。
なんだよそれ、縁起の悪い名前だなって思ったら本当に縁起悪いのかよ。
いや、でも流石に流行中のインフルエンザと、この明らかに体調の悪い自分を見たらどんなヤブであろうと見抜ける筈……!
いや、でも流石に流行中のインフルエンザと、この明らかに体調の悪い自分を見たらどんなヤブであろうと見抜ける筈……!
八武さんは持っている電子カルテに自分の名前を記入する。
こうやって話している限りは普通に可愛い女性なのに。
こうやって話している限りは普通に可愛い女性なのに。
信じられない言葉を耳にする。
これが冗談じゃなく、真剣に聞いてる風なので質が悪い。
これが冗談じゃなく、真剣に聞いてる風なので質が悪い。
女医はモニターから一度離れて、横にある戸棚から何かを取り出す。
それは電子体温計だった。それを無造作に自分の脇に挟み、一分もすると計測が終わった電子音がモニター越しに響く。
それを取り出し、女医はにっこり笑って。
それは電子体温計だった。それを無造作に自分の脇に挟み、一分もすると計測が終わった電子音がモニター越しに響く。
それを取り出し、女医はにっこり笑って。
自分の提案に、驚き、なるほど、と言わんばかりに手を叩く。
ダメだ、この医者。マジでヤブかもしれない。
とりあえず怒りを抑えて体温を測る。ピピピ、という電子音が聞こえて取り出すと、そこに表示されている体温は「41度」朝よりも上がってる……マジでヤバイぞ。
41度と表示されている体温計をモニター越しに八武さんに見せる。
ダメだ、この医者。マジでヤブかもしれない。
とりあえず怒りを抑えて体温を測る。ピピピ、という電子音が聞こえて取り出すと、そこに表示されている体温は「41度」朝よりも上がってる……マジでヤバイぞ。
41度と表示されている体温計をモニター越しに八武さんに見せる。
自分の気迫に気圧され、八武さんはびくびくしながらカルテに記入していく。
くっそ、怒鳴りすぎて眩暈がする。直ぐにでもモニターを切りたい。けど、このままだと薬がもらえない。それに、この女医が診察して重症となれば入院の手配などをしてもらえるかもしれない
ほ、ほほぅ! と何やら瞬きを何度もしながらカルテに記載していく八武さん。
それから、むむ、と唸るような声を出してカルテを見つめる。
なんだ? 今の問診で何かわるい所が見つかったのか?
それから、むむ、と唸るような声を出してカルテを見つめる。
なんだ? 今の問診で何かわるい所が見つかったのか?
今までにない緊張した面持ちの八武さん。まさか、何か悪い病気の兆候が見られたのか?
申し訳なさそうに謝る八武だが、こっちは意味不明過ぎて困惑してる。
なんで急にハンバーガーの話が出てくるんだよ!
なんで急にハンバーガーの話が出てくるんだよ!
あー、クソ。なんてついてないんだ。
頭の血管が切れそうなぐらい辛い。早く終わらせてほしい。
頭の血管が切れそうなぐらい辛い。早く終わらせてほしい。
何で独り身心配されなきゃならんのだ。
この人顔が良くなかったら即座にパソコンの電源消して寝てるぞ。
この人顔が良くなかったら即座にパソコンの電源消して寝てるぞ。
言われた通りモニターを前に大きく口を開ける。すると、女医はふむふむ、と何やら納得したような相槌を打つのが聞こえる。
何でこの人虫歯とか見てるの?
熱があるのに喉を見ろよ。
熱があるのに喉を見ろよ。
薬という単語を聞いてようやく一息ついた。
入院にはならなかったが、薬を受け取れるのは大きい。
入院にはならなかったが、薬を受け取れるのは大きい。
気付けば、全速力で走ったように息を荒げていた。
ツッコミが多すぎて追いつけない。
ツッコミが多すぎて追いつけない。
一時はどうなるかと思ったが、何とか一安心だ。
やっとこれで安心して寝られる。
診察も終わり、ノートパソコンを閉じて深い眠りについた。
やっとこれで安心して寝られる。
診察も終わり、ノートパソコンを閉じて深い眠りについた。
翌日、死にそうだった体はなんとか安定を取り戻す。
そして昼頃に、呼び鈴がなるので行くと、そこには大きな発砲スチロールの箱を手にした配達員が現れる。
そして昼頃に、呼び鈴がなるので行くと、そこには大きな発砲スチロールの箱を手にした配達員が現れる。
郵便屋に言われて、伝票にハンコを押す。代金は思いのほか高い。それだけすると郵便店員はささっと波を打つように去っていった。
手にした発泡スチロールの箱の蓋を崩し、それを見る。
手にした発泡スチロールの箱の蓋を崩し、それを見る。
そこから現れたのは「激やせ! ダイエット食品サプリ!」というものであった。
THE END