15歳の私へ

文字数 997文字

長々とホームシック話を書いてきたわけだが、慣れてくると本土での生活も楽しいものだった。同じような思いを持って生活する下宿の仲間達、クラスで1人ぼっちだった私に声を掛けてくれて仲良くなった友人達。街に出れば島にはないたくさんのお店があって、買い物も外食もおしゃべりもとても楽しかった。

高校3年生の時、大学受験の願書を出すために、郵便局へ行かなければならなかった。
平日の17時までしか開いていない郵便局が、学校から徒歩20分ほどのところにあった。往復40分、昼休みに行くしかないが、それだと昼食を食べる暇はない。でも行かなければならない。
きっと他の子達は親に行ってもらっているんだろうなと思うと、なんだかやりきれない気持ちになったことを覚えている。
この頃の私は今までの人生の中で、良くも悪くもいちばんしっかりしていたな、と思う。
「誰にも頼らず、ひとりでやらなきゃ。」
という思いが強かった。

しかし大人になるにつれ、気付いたことは、人はひとりでは決して生きられないということだ。助けてほしい時に手を差し伸べてくれる人は必ずいるということ。
島を出てから、出会った人たちに何度も支えられて、今の自分がある。
高校時代、いつもお昼はコンビニのおにぎりとパンを一個ずつ買って食べていた私に、友人のお母さんは何度か美味しいお弁当を作ってくれた。
朝寝坊して、遅刻しそうになった時、下宿のおばちゃんは軽トラで学校まで送ってくれた。おにぎりと卵焼きも持たせてくれた。
大学時代、風邪をこじらせて1週間ほど寝込んでいた私を友人が心配して、1人暮らしのアパートに来てくれた。なかなか出ない私をとても心配して、何度もインターホンを押し、電話を何回もかけ続けてくれた友人。
いろいろな人たちの優しさがありがたかった。
もしも今、15歳の私に会えるならばこう言いたい。
「ひとりじゃないんだよ。困ったときに助けてくれる人たちがたくさんいる。ひとりで抱え込まずに肩の力を抜いてごらん。」
と。

「誰かに頼っていいんだ。」
と気付いた私は、今では周りに頼りっぱなしである。
大人になり、就職、結婚、出産をし、島からはもっと遠い場所へと引っ越した。故郷とは海の色が随分と違う場所だ。
今では年に2回、子供たちを連れて帰省する。
私が子供時代を過ごした、昔と変わらないその場所で、自分の子供たちと過ごす時間は、なんだか懐かしかったり、嬉しかったりするものだ。
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