童話と不思議編
文字数 1,333文字
★童話編
ヒトデ/アパート/引越しの手伝い
「おやヤドカリさんどちらへ?」
「ヒトデさんこんにちは。ええ、新しい家を探しているのです」
「またお引っ越しですか、お手伝いしましょうか」
「いえいえ私は一人で平気です。それよりアナゴさんたちが大変だそうで。防波堤のアパートが地震で壊れたとか」
「では私はそちらに手伝いに行きましょう」
しいたけ/馬/輪ゴム
ななちゃんは椎茸が大嫌い。でも先生は一口でも飲み込めるまでは帰っちゃダメという。
教室の後ろで泣きながら一人もぐもぐしていると、足元に輪ゴムが飛んできた。
顔を上げると窓から変な馬の首がにゅうっと生え、驚いた拍子にごっくんした。
段ボールの馬の首の下で、ゆうくんがえへへと笑っていた。
池/揚げ足/ランドセル
「相撲とろ」
池から声がしたけど、僕は振り返らない。
「なんでこの頃無視する?」
「お前は揚げ足取りばっかだ」
僕は吐き捨てた。
それは今日友達に僕が言われた言葉だ。相撲の話じゃなかったが。
「四つに組めばいいのか?」
返事もせず、ランドセルを鳴らして走り去る。彼をも失うことを予感しながら。
★不思議編
馬/カメラ/一見さんお断り
競馬の予想が百発百中と噂に高い、一見さんお断りの占い館に潜り込み、店内の様子を隠しカメラでまんまと盗撮に成功した若いライターは、週刊誌に持ち込む記事を作ろうとその写真をPCで開いた途端意識を失った。
翌日、馬の蹄で無茶苦茶に踏み荒らされた遺体がアパートで発見されたという。
クローバー/フルート/驚愕の事実
「ここで毎日フルートを吹いていた人を知りませんか」
私は、犬の散歩をしていた青年に尋ねた。
「対岸で泣いていた私をいつもその音が慰めてくれたのでお礼が言いたいのです」
青年は首をかしげた。
「昔そんな人もいたけれど何年も前に亡くなって最近は見ないよ」
私の手から四つ葉がぽとりと落ちた。
アザラシ/壺/三倍返し
子供にいじめられていたアザラシを助けた男は、お礼に海底の城に招待されたが、すぐに里心がついてしまった。
女王は「お土産に」と美しい壺をくれた。
男が自宅に帰り着き壺を開けると、中には通常の3倍の滞在費用請求書が入っていた。
この間のアザラシがすごみながら取り立てにやってきた。
マシンガントーク/金縛り/口喧嘩
深夜2時。金縛りと共に耳元でマシンガントークが聞こえてくる。
「ねえきいてんのあんたそんなんだからいつまでたっても出世できないのよこの前だって…」
やめてくれ勘弁してくれ。
口喧嘩で勝てないからつい殺っちまったのに、これじゃ何も変わらない。眠れなくて死にそうだ。
俺は110を自ら押した。
聖徳太子/じゃがいも/機織り
曾祖母の遺品の機織り機を処分すると聞いたその夜、幼い私と曾祖母がマックにいる夢を見た。
彼女は「揚げたじゃがいも」が好きで、よく私をダシにして食べに行っていたのだ。
夢の曾祖母は笑いながら、お小遣を織り機に隠したからね、と言う。
翌日調べると、本当に聖徳太子の一万円が挟まっていた