4話 異世界道路の日常
文字数 2,178文字
「よくやったぞ冴木!!」
前室に戻った冴木はカイゼルに褒めの言葉を貰った。
「ありがとうございます」
「それでじゃが。早速明日水道を供給する菅の工事をしたいのだ。その警備を頼めるかの?」
「分かりました!!」
さっきの一件で自信のついた冴木はハッキリとした返事をカイゼルへ。
「それじゃあアルバ。呼んでくれ」
「はい」
アルバはそう言うと前室のドアを開け一旦外へ。
「誰を呼ぶんですか?」
「工事業者じゃ」
「でも今まで工事はしていなかったんじゃ?」
「いや。田舎の方に限ってじゃが工事はちらほらと行われていた。しかし都心となると別なんじゃ、荒くれ者の運転手が絶えないのでな、保安官を動員して取り締まりを行ってはいるが死傷者が増えるだけでな」
「なるほど……」
「今からくる業者も国道の水道工事中に多くの怪我人を出したのじゃ」
「失礼します!!」
その声とともに入ってきたのは緑色の肌をした妖精 ゴブリン。
黄色いヘルメットを被ったそのゴブリンは王様に深く礼をした。
「ゴブリン水道の現場責任者タケヤマだ。後は冴木とアルバに任せたぞ。私はユリウスの事情聴取の様子を見に行かねばならんからな」
カイゼルはそう言うとその場を後にした。
「どうもはじめまして……」
冴木は初めて見るゴブリンという存在に少し恐怖を感じていた。ゴブリンと言うとRPGでよく出てくるモンスターだからだ。そしてこのタケヤマというゴブリンもそのRPGに出てくるものと大差ないが唯一違う点は棍棒を手にしていないこととヘルメットを被っていること。
「俺達は前に仲間を轢かれたんだ。王様の頼みじゃなかったらこの工事は断っていた」
「はあ……」
「テレビの中継を見ていた。お前さんなら前みたいなことにはならないと信じてるぞ」
タケヤマはそう言うと冴木の胸をどんと叩く。
「早速だが工事の打ち合わせをしたい。俺達の会社へ来てくれ」
タケヤマはそう言うと前室を出て行く。
すぐにアルバと共に冴木も後を追う。
そして城下町を歩いていく。
「城下町には道路がないだな」
冴木の歩いている道は人やゴブリンなど様々な種族の者しかおらず、車輪のついた乗り物は全く通っていない。
「そうです。城下町は王の住む城が近いですから危険を考慮して車の通る道路は全て城下町外にあります」
「俺の会社は城下町を過ぎて国道を渡ってすぐの所にある」
「説明しますと、城下町を越えると車を止める駐車場が広がっていてその外に国道1号が伸びています。そのさらに外側は一般の住宅街が広がっています。ちなみに城下町は市場や宿、貴族階級が住む住居などが主です」
「あの、それにしても何で俺達の周りには兵士が?」
冴木はそう言うと周りを囲む甲冑を来た兵士に視線を送った。
「それは大臣だからです。それに今朝のことで冴木は英雄扱いです。それに加え警備省という新しく設立された省を快く思わない車の運転手が多いでしょうからね」
「そっか」
やがて城下町を抜けると城下町を円状に囲む駐車場スペースへと足を踏み入れた。
「すごい広さだな」
「この城下町は観光地として人気ですからね」
冴木の見渡す限りに広がる駐車場は今まで色々な場所の駐車場警備をしてきたがそれを遥かに凌駕するものだった。
「この駐車場を通り抜けるだけでも危なそうだな……」
「俺も何度か死にかけたぞ」
駐車場にある車はほとんど停まっていたが、中には駐車できる空きスペースを探そうと駐車場内を高速で走り回るオープンカーが多い。
その時大きな衝突音が鳴り響き、そこから煙が浮き上がる。
「おい!! 事故だぞ!?」
「大丈夫です。すぐに保安官が来ます。それにこんな事故は当たり前のように起きてますから」
アルバは当然の景色を見るように悠々と通り過ぎていく。
それは冴木の周りを囲む兵士やタケヤマも同じだった。
やがて駐車場を抜けると、兵士達は引き返して行った。
「さぁここが一番危ないんじゃ……」
そう言ったタケヤマの目の前にあったのは冴木が王室の窓から見たあの道路。
「ここが国道1号です」
「でも信号があるじゃないか」
「この信号は機能していません。信号無視は日常茶飯事なんです。なので合間を縫って渡るしかありません。警備省の設立のお陰で現在歩道橋の設立計画がありますが暫くはこの状態でしょう」
よく見ると、片側三車線の両脇には道路沿いを進むための歩道があるがそこを通っているのはほとんどバイク。おそらく歩道と車道を隔てる段差が低いためだろう。
さらに三車線の間に取り残された人達があちらこちらに存在しており、全く信号が機能していない事が分かる。
「ここは地獄かよ……」
「よし!! 今じゃ」
タケヤマの掛け声で冴木、アルバはケンタウロス達が走る車線を渡る。
しかし一旦そこで停止。空を切るようにオープンカーやスポーツカーが平均80kmのスピードで走っている。
「渡るのにめっちゃ時間かかりそうだな……」
「よし。行くぞ!!」
タケヤマの掛け声でさらに一車線前へ。
「これ本当にヤバイな……」
前室に戻った冴木はカイゼルに褒めの言葉を貰った。
「ありがとうございます」
「それでじゃが。早速明日水道を供給する菅の工事をしたいのだ。その警備を頼めるかの?」
「分かりました!!」
さっきの一件で自信のついた冴木はハッキリとした返事をカイゼルへ。
「それじゃあアルバ。呼んでくれ」
「はい」
アルバはそう言うと前室のドアを開け一旦外へ。
「誰を呼ぶんですか?」
「工事業者じゃ」
「でも今まで工事はしていなかったんじゃ?」
「いや。田舎の方に限ってじゃが工事はちらほらと行われていた。しかし都心となると別なんじゃ、荒くれ者の運転手が絶えないのでな、保安官を動員して取り締まりを行ってはいるが死傷者が増えるだけでな」
「なるほど……」
「今からくる業者も国道の水道工事中に多くの怪我人を出したのじゃ」
「失礼します!!」
その声とともに入ってきたのは緑色の肌をした妖精 ゴブリン。
黄色いヘルメットを被ったそのゴブリンは王様に深く礼をした。
「ゴブリン水道の現場責任者タケヤマだ。後は冴木とアルバに任せたぞ。私はユリウスの事情聴取の様子を見に行かねばならんからな」
カイゼルはそう言うとその場を後にした。
「どうもはじめまして……」
冴木は初めて見るゴブリンという存在に少し恐怖を感じていた。ゴブリンと言うとRPGでよく出てくるモンスターだからだ。そしてこのタケヤマというゴブリンもそのRPGに出てくるものと大差ないが唯一違う点は棍棒を手にしていないこととヘルメットを被っていること。
「俺達は前に仲間を轢かれたんだ。王様の頼みじゃなかったらこの工事は断っていた」
「はあ……」
「テレビの中継を見ていた。お前さんなら前みたいなことにはならないと信じてるぞ」
タケヤマはそう言うと冴木の胸をどんと叩く。
「早速だが工事の打ち合わせをしたい。俺達の会社へ来てくれ」
タケヤマはそう言うと前室を出て行く。
すぐにアルバと共に冴木も後を追う。
そして城下町を歩いていく。
「城下町には道路がないだな」
冴木の歩いている道は人やゴブリンなど様々な種族の者しかおらず、車輪のついた乗り物は全く通っていない。
「そうです。城下町は王の住む城が近いですから危険を考慮して車の通る道路は全て城下町外にあります」
「俺の会社は城下町を過ぎて国道を渡ってすぐの所にある」
「説明しますと、城下町を越えると車を止める駐車場が広がっていてその外に国道1号が伸びています。そのさらに外側は一般の住宅街が広がっています。ちなみに城下町は市場や宿、貴族階級が住む住居などが主です」
「あの、それにしても何で俺達の周りには兵士が?」
冴木はそう言うと周りを囲む甲冑を来た兵士に視線を送った。
「それは大臣だからです。それに今朝のことで冴木は英雄扱いです。それに加え警備省という新しく設立された省を快く思わない車の運転手が多いでしょうからね」
「そっか」
やがて城下町を抜けると城下町を円状に囲む駐車場スペースへと足を踏み入れた。
「すごい広さだな」
「この城下町は観光地として人気ですからね」
冴木の見渡す限りに広がる駐車場は今まで色々な場所の駐車場警備をしてきたがそれを遥かに凌駕するものだった。
「この駐車場を通り抜けるだけでも危なそうだな……」
「俺も何度か死にかけたぞ」
駐車場にある車はほとんど停まっていたが、中には駐車できる空きスペースを探そうと駐車場内を高速で走り回るオープンカーが多い。
その時大きな衝突音が鳴り響き、そこから煙が浮き上がる。
「おい!! 事故だぞ!?」
「大丈夫です。すぐに保安官が来ます。それにこんな事故は当たり前のように起きてますから」
アルバは当然の景色を見るように悠々と通り過ぎていく。
それは冴木の周りを囲む兵士やタケヤマも同じだった。
やがて駐車場を抜けると、兵士達は引き返して行った。
「さぁここが一番危ないんじゃ……」
そう言ったタケヤマの目の前にあったのは冴木が王室の窓から見たあの道路。
「ここが国道1号です」
「でも信号があるじゃないか」
「この信号は機能していません。信号無視は日常茶飯事なんです。なので合間を縫って渡るしかありません。警備省の設立のお陰で現在歩道橋の設立計画がありますが暫くはこの状態でしょう」
よく見ると、片側三車線の両脇には道路沿いを進むための歩道があるがそこを通っているのはほとんどバイク。おそらく歩道と車道を隔てる段差が低いためだろう。
さらに三車線の間に取り残された人達があちらこちらに存在しており、全く信号が機能していない事が分かる。
「ここは地獄かよ……」
「よし!! 今じゃ」
タケヤマの掛け声で冴木、アルバはケンタウロス達が走る車線を渡る。
しかし一旦そこで停止。空を切るようにオープンカーやスポーツカーが平均80kmのスピードで走っている。
「渡るのにめっちゃ時間かかりそうだな……」
「よし。行くぞ!!」
タケヤマの掛け声でさらに一車線前へ。
「これ本当にヤバイな……」