タボちゃん

文字数 2,242文字

 そしてこの話には続きがありました。

 タバが病気で死んでから約二か月後。
 暖かそうな色合いの、きれいなキジトラの仔が、再び私のところへやって来たのです。


 それはある日の夜。
 突然電話がかかり、
「よろしかったら猫、飼うてくれまへんか?」と、近所の人。

 その方は一匹飼いの動物を(犬)失った直後で、深い悲しみのどん底にいて、「もう二度と動物は飼いまへん」と言われていたのです。

 だけど私が、「里親になって欲しいと願っている仔(犬猫)はいくらでもいます。だからもし、また動物を飼おうと思われたら、そのときはそういう仔の里親になって下さいよ」と言っていたのです。

 だから私は、電話でその方に「いい縁じゃないですか。飼われたらどうですか?」というと、
「こんなに小さな猫、私はよう飼いまへん!」と言われるのです。

 それでお宅へ行ってみると、それはそれは小さな、もうネズミくらいの、「キジ猫のような生き物」が床の上に転がっていました。
 こんなに小さな「猫」を、それまでに私は見たことがありません。

 そしてその方は、小皿に牛乳をついで置いていましたが、
「ぜんぜん飲めしまへんのや」と言われるのです。

 そんなもの、こんな小さな猫が飲むわけないだろうと思ったし、見てみると、かなり衰弱しているようです。

 それで、いくらなんでもこんなに小さな猫を、その方が育てるのは無理だと思い、連れて帰ることにしました。
 この仔の状態が、一刻を争うと思ったからでもあります。
 
 そしてその瞬間、我が家の猫定員5匹のところが、7匹になりました。
 だけど猫が何匹かとかいう数字の事は、豪快に考えないことにしました。

 それから数字と言えば、体重体重と思って、早速台所で計ると、何と220グラム! 
 それでネットで資料を見ると、生後2週間ほど。
      (育つかなぁ?)


 早速、幸いまだ開いていたホームセンターへ行き(ここは晩くまで営業してくれているので助かります)、ペット用品担当の猫玉さん(本当の名は内緒)にたずね、とりあえず猫ミルクと猫哺乳瓶を教えてもらい、それらを買って帰りました。

 それからネットで、今度は離乳前の猫の育て方を調べると、ある獣医さんのホームページに詳しく書いてあったので、これも助かりました。

 それで、ぬるま湯と猫用粉ミルクを哺乳瓶に入れ、じゃかじゃかと振り、猫ミルクを作りました。

 そして、獣医さんのホームページを参考に、ああ、それから私の子供の頃、両親は物好きで、ワイヤフォックステリアという、今では大変珍しい犬のブリーダーなんかもやっていたので、子犬の哺乳なら、いやというほど経験がありました。小学生の頃ですが。

 それでそういったことも思い出し、それから仔猫の首の回りを左手の中指と親指で優しくつかみ、そして背中を手の平で支え、するとその仔が立ったように支えられます。
(そうだそうだ。わんちゃんもこうやって哺乳してた!)

 そう思いながら、それから右手に持った哺乳瓶をその仔の口に当てると、びゃ~びゃ~いいながら必死にくわえ、そして耳をぴくぴくさせながら飲み始めました♪

 そして飲み終えると、今度は獣医さんのホームページを参考に、濡れたティッシュでおちんちんのあたりを、母親がなめるようになでてあげ、すると、じょわぁ~~~~~~っとおしっこが出ました。
 それからむにゅ~~~~~っと、ミミズのようなうんちも5cmほど出てきました。

 だいたいこれが、一回の哺乳のプロセスです。
 ちなみにうんちは三日に一回くらい。

 それから毎日、3時間おきにミルクをあげ、おしっこをさせ、うんちをさせ、そうして生後一か月くらいから、ぼちぼち離乳食です。

 離乳食は、ミルクでとろとろにしたキャットフードを口にいれると、ぺちゃぺちゃと食べてくれました。
 とにかくミルクをあげたり離乳食をあげたり、そしてそうやって、無事にかりかりが食べられるくらいに育ちました!

 やった! 
 もう大丈夫!
 タバサが来たときと同じくらいです。

 ちなみにそれから、そのころすでに知り合いだった動物保護ボランティアの人に、「たったの220グラムの仔を育てましたよ!」と、自慢しました。
 こんなに小さな仔を育てた人も、そうそうはいないだろうと思って。

 だけどその方は、「ああ、私は140グラムの仔を育てたことがありますよ」と、ばっさりと切り捨てられました。まあそれはいいです。

 それで、育つと、その仔は実は女の子で、そしてタバサにも、タバにもそっくりの仔だと分かりました。
 つまり、あまりにも小さいと、いったいどういう仔なのか、想像もつかなかったのです。
 雄雌も分からないし。

 だからそういうわけで、私はその仔に「タボ」と名付けたのです。
 暖かそうな色合いの、きれいなキジトラの仔です。
 今もいたって元気です。

 タバサ タバ タボ。

 三代続いた素敵な名前。
 タボちゃん、今度こそ、長生きしてね!

 無事育ったにゃん♪







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