第11幕

文字数 1,059文字




 少年の興味深い変遷の様は、時々刻々と変化していく空の様相に似ていた。

 最初はあわあわとした藍白だった空の色が、次第に濃さを深めていき、水色になり、わすれなぐさ色、青藤色、露草色と印象を変えていき、更には、藍色、コバルトブルー、瑠璃色と、憂いを帯びた色調になっていき、やがては群青色になり、遂には落ち着いた深みのある濃紺へと、少しずつグラデーションを描いていく。

 そんな濃紺が極まった印象のある青年の白銀色の髪の毛は、絹糸のように煌めきながら、逞(たくま)しく発達した腰の辺りまで伸び、柔らかく波打っていた。

 そして、黄水晶をそのまま嵌め込んだような瞳を、鋭く光らせた青年は、もうメイリルの指をしゃぶろうとはしなかった。

 その代わり、彼女のぷっくりとした薔薇色の唇を、熱心に吸い始めた。

 そうしてその愛撫は、次第に首筋へと移っていった。

 メイリルは、青年のやや性急な愛撫を受けながら、涙が頬を伝っていくのを感じていた。

 思い返してみれば、少年が昏睡状態から目覚めて、初めてメイリルを見詰めた瞬間から、ずっとこうして欲しかったのだと、魂が疼くように訴えていた。





 翌朝になり、メイリルが目覚めてみると、青年と一夜を共にした簡易寝台の上には、小粒の黒い種子が、十粒ほど散らばっていた。

 その代わり、青年の姿は、部屋の隅々まで見渡してみても、何処にも見付けられなかった。

 けれども恐らく、土の中で発育していくための精力は、もう充分に養われた頃合いだったのだろう。

 だからこそ、黒い種子が残されて、代わりに青年の姿が消えたのだ。

 メイリルは、それが分かっていながら、突然姿が変わってしまったことによる青年の不在に、胸の奥が軋るように痛むのを覚えた。

 昨夜、青年は、息も絶え絶えになるほどの激しい性行為の後で、メイリルを癒すようにすっぽりと包み込んで、そのまま眠りに就いた。

 その逞しい腕の中で感じた温もりは、茹(う)だるほどに暑苦しかった。

 けれど、それがいつの間にか、消えてしまっていたのだ。

 その瞬間に気付けなかった自分が悔しくて、メイリルは、切ない涙に暮れた。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

・・・ 第12幕へと続く ・・・




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