第4話(2)

エピソード文字数 2,197文字

「な、なんなんだよっ。ソイツは何者なんだよ!」

 あの英雄が、ここまで圧倒される存在。この女は何なんだっ?

「……。そこに、居るのは……」
「い、いるのは……?」
「橙式(とうしき)、エイリさん。昨日チラッと出た、野菜が大好きな私達の親友よ!!
「だったら最初からそう言えや!! 強敵みたいな紹介するんじゃねーっての――ああやっちまったよ!」

 朝の清々しい空気の中で、シズナがビクンビクンしてる。コレはまたまたやられましたで、この女は怒られたかったんだ……。

「もー、焦った。アンタ達の知り合いかよ」
「にゅむっ、そーなのーっ。エイリちゃんは、みんなの妹的存在(いもーとてきそんざい)なんだよーっ」
「ん? 妹?」

 こんなスケバンさんが、妹的存在なの?

「エイリ先生は、これでも十四歳ぜよ」(職業は『伝説のビーストテイマー召喚士』先生で、普段は女子中学生をしゆうがよね)
「…………(モゾモゾ)」

 橙式さん――橙式ちゃんは懐から短冊を取り出し、左隅にあるスイッチをプッシュ。そうしてから彼女は、その短冊をこちらに向けた。

「師匠。そこにある文字先生を、読んでみてや」
「う、うん。え~と~」


《そうなんだ 実はアタシは 年下だ》


 なんとまぁ。5・7・5で、自己を紹介していた。

「エイリさんって性格は姉御系なんだけど、喋るのが苦手でね。俳句で会話をするのよ」
「それは『自動書短冊(じどうしょたんざく)』で、思った俳句さんを自動(じどー)で書いてくれる機械なんだよー。特注品(とくちゅーひん)なのー」
「いやいやいやいやいやいやいや! それ俳句じゃないからねっ? ただの5文字7文字5文字だからねっ?」

 その発言、ただちに撤回しろ。俳句関係者にぶち殺されるぞ。

「あら、エイリさんは俳句を舐めていないわよ。彼女の御両親は有名な俳人で、自身も俳号を持っているの」
「ぇっ」
「頻繁に句会をやってて真面目なのも詠めるけど、そういうのは小さな子とかが理解できないでしょ? だからこうやって、簡単なものにしているのよ」
《その通り これが証拠だ 見てみなよ》

 橙式ちゃんが取り出した生徒手帳には、その句会をしてる写真が入っていた。
 無論そこには大勢人がいて、気難しそうな方もいらっしゃる。そんな人達と同じ場所にいられるのだから、それは事実となるな。

「会話をしつつ俳句は難しいものではないと認識させて、俳句を広めたい。そんな想いで、エイリ先生はやりゆうがよ」
「橙式ちゃん大変失礼しましたっ。無礼をお許しください!」

 俺は即座に、直角に腰を折り曲げた。
 ホント、ごめんなさいね。今度から抗議は、最後まで聞いてからにします。

「ほんとうに、申し訳ありませんでした。反省してます」
《構わねー 誰だってそう 思うわな》

 橙式ちゃんはニッカリ笑い、不問に付してくれた。
 知らないとはいえ、想いをバカにしたのに……。なんとも心の広い子だ。

《それよりも 突然すまん 早く来た》
「連絡した時、『生産してる場所と人を見てみたい』って言っていたものね。こちらが、生産者の仇敵――従兄くんの従妹の、色紙育月さんよ」
「は、初めまして、育月……です。おはよう、ござい……ます」

 これまで黙っていた猫かぶり姫が、両手を前で揃えて挨拶する。
 コイツがこれまで静かだったのは、モチのロン控えめをアピールするため。計算され尽くした対応でございます。

《おうおはよ いい畑だな 心地いい》

 橙式ちゃんは辺りを眺め、満足げに目を細める。聞いた話によると野菜命らしいから、一目で質がわかるようだ。

《飛行機に 変えてよかった 正解だ》

 おぉ。さり気なく乗り物を出して、自分は異世界人ではないぞとアピッてる。
 この人、中身は一番まともだな。

「わざわざ、ありがとう、ござい……ます。来てくださったのですから、この場で差し上げたいの……ですが……」
《聞いてるよ 信念あって 気に入った》

 橙式ちゃんは五七五で、育月を絶賛する。
 この子って、ホントに英雄? と感じるくらい、まともだわ。いやぁまぁ、これが普通なんですけどね。

「エイリ先生は、自分を持ってる生産者が大好きながよ。むしろ大歓迎やろ?」
《ああそうだ ちゃんと店舗で 仕入れるぜ》
「そうなの、です……か。でしたら、せめてもお詫びに、うちの車にお乗り……ください」

 伯父さん家のは、9人乗りの大型車。今回のメンバーは育月ファミリー&俺ら4人だから、荷物を積んでもまだまだ余裕があるんだよね。

《助かるぜ 財布の中が ギリだった》

 ここでも、さらりと地球人を演出する。この子が姉で、レミア達が妹的存在(いもーとてきそんざい)じゃないのかな? と思う今日この頃。

「よっしぜよっ。そうと決まれば、先生も見学して――その前にあれやね。あれを伝えんといかん」
「にゅむ、そだねっ。ごめんなさいだけど育月ちゃん、少し待っててー」

 にゅむったレミアは俺の手を掴み、小走り小走り。力のある5人で、人気がない地点まで移動した。

「長居すると怪しまれるんで、手短に頼むよ。なんなの?」
「これから、アタイの紹介をするのさ」

 突然。橙式ちゃんの肩にいる、短冊型の人形が喋った。
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登場人物紹介

色紙優星 16歳の少年


高知県生まれの主人公。

リリウという神様の聞き間違えで魔王使いになってしまい、おまけに『究極奥義』と呼ばれる力を何個も持ってしまった高校生。優しく他人想いなのだが、彼はとあるセンスが全くないのであった……。

黒真レミア 16歳の少女


魔王、でありながら伝説の勇者の能力を持つ。冷徹でクールな容姿と声音を持つ美少女だが、性格はほわほわでお子ちゃま。『にゅむ』という独特な言葉を多用し、時にはにゅむのみで会話を行おうとする。例「にゅむーむ。にゅむ。にゅむりん」。

なお愛用の武器である聖剣は魔王の天敵であるため、使うと痺れる。

金堂フュル 16歳の少女


伝説の勇者、でありながら伝説の魔法使いの能力を持つ。元気一杯の猫っぽい女の子で、高知県の英雄・坂本竜馬の大ファン。そのせいで『ぜよ』と中途半端に覚えた土佐弁を使い、主人公のことは『師匠』、仲間のことは名前のあとに『先生』とつけて呼ぶ(例えばレミアの場合はレミア先生)。

なかなかにおバカな女の子。

虹橋シズナ 17歳の少女


伝説の魔法使い、でありながら魔王の能力を持つ。大和撫子然とした容姿を持つ美少女であり、主人公の義理の従妹。

重度の怒られ好き。

とにかく変で厄介で面倒くさい人。

茶操ユニ 18歳の少女


伝説のドールマスター、でありながら伝説のプリーストの能力を持つ。キグルミ族という一族の人間で、閉園したテーマパークのキャラクター・二足歩行ウサギの着ぐるみを着ている。口癖は、ミョン。

実はお笑いにうるさく、親戚は某有名人。

プリースト神 年齢不明


茶操ユニが持つプリーストの杖に宿る、プリーストの神様。

実は……。

橙式エイリ 14歳の少女


伝説のモンスターテイマー、でありながら伝説の召喚士の能力を持つ。所謂スケバン然とした容姿と声を持つが、グループ最年少の中学生でみんなの妹的存在。でもレミアやフュルよりずっとまともで、ヤツらの方が妹的存在な気がする。

野菜が大好きで、とても詳しい。

タンザ・クー 年齢不明


橙式エイリの召喚獣で、俳句世界(はいくわーるど)の王女。

タンザが姓で、クーが名。

二万年後に、地球の傍に誕生する世界からやって来た。


色紙育月 16歳の少女


高知県大豊町在住の、優星の従妹。中学卒業と同時に本格的にピーマンの生産を始め、今ではテレビの取材を受けるほどになっている。


薄幸の美少女然とした容姿と、従兄想いの優しい性格が自慢の従妹です! by色紙優星

謎の声 年齢不明


優星にだけ聞こえる、不思議な声。

なぜか正体を明かそうとしない。

リリウ 神様


願いを聞き間違えて、優星を魔王使いにしてしまった神様。

神様の世界で流行しているゲームに夢中で、神様のお仕事はほとんどしない。

とってもダメな、神様(?)な神様。

麗平活美 16歳の少女


ストロベリーブロンドのドリルヘアーが特徴の、優星のクラスメイト。

お嬢様然とした容姿で気品があるように見えるが、非常に活発。実は……。

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