第18話 ゲーム名 ovrecome

文字数 702文字

「あんたそういう系? マジうける」

「ちょっとからかったら駄目だよ。それに、おかしいじゃない。あなたはコンパだと思ったんでしょ?」


 また少年は口を閉ざしてしまったので、ひいらはしゃがみ込んだ。少年はそもそもずっと座ったままだ。

「イクって呼んだらいい?」

「本名は、川口流」


「オフ会だと思って来たの?」

「そういえば記憶がない。オフ会の予定は今日だったけど。管理人もいないみたいだし」


 どこまで根掘り葉掘り聞いたらいいのか戸惑いながらも淡々と会話が続いた。

「管理人も来る予定だったの?」

「まあ」


「何のオフ会だったの」

 口を濁した川口は床に置かれているプラスチックの箱にそっと目を落とした。

「そういえばこれ何だろうね」


 ひいらが尋ねると早々とふたばが奪い取るようにしてプラスチックの箱を開けた。中には注射器が一本入っていた。それから、ナイフが一つ。その下に紙切れがる。

「ドラッグ? あー怖い」


 怖さなど微塵も感じていない声で、最後には腹を抱えて笑い出すふたば。

「ふざけてないで。まだ決まったわけじゃないでしょ」

「何これ手紙じゃん。脅迫状みたい。マジうけるんですけど」



《ゲーム名overcome》



《今日は最期の日になる。脱出を試みてくれてもいいがそれは不可能に近い。君達には死に様を選ぶ権利がある。注射器の意味は川口流が知っている。剛力ふたばの携帯に指示を送ることにする。君のリーダーシップが見たい。


 ナイフは誰が使ってくれても構わない。善見ひいら。君は背後のものを使う権利がある。脱出するにはそれぞれが依存するものを躊躇なく断ち切らないといけない。簡単なことだ。最期に一つだけ書き留めるが、裏切り者には気をつけろ》
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