第一部あとがき(本編裏話)
文字数 2,971文字
もともと八重咲は、ちょっとまだ明かせない基本のキャラ設定
しか
決まっていませんでした。この設定が明らかになるのは、今の6話め『忌魔島奇譚』のクライマックスあたりですかね。まあ、悪魔に関する特殊能力を持つ探偵ってことですね。これ
しか
なかったんです(^_^;)そう。ストーリーはぜんぜんなかったw
じゃあなんで、これを書こうと思ったかっていうと、ちょうど、そのとき、エブリで竹書房の最恐小説大賞を募集してたんですよね。異空人を書きおわって、まだそこそこ日にちが残っていたので、規定の10万字には達しないかもしれないけど、5〜8万字くらいは書けそう。それなら、いつでも切りのいいとこで完結設定にできる連作短編集がいいなぁと考えたのでした。
まあ、けっきょく、〆切にはまにあわなかったんですが、とにかく何か書こうというときに、ホラーの連作短編になりそうな設定を吟味したんですね。
候補として、妄コン用に書いた『僕の恋人は白い猫』か、八重咲か、もう一個なんか考えてたけど忘れましたw
猫が主役でちょっと冒頭だけ書いてみたんですが、のらなかったので、八重咲に。
ストーリーがなかったので、むか〜し昔に書いた過去作をリメイクして書くことにしました。
1話めの『スーツケースの男』は、昔、書いてたオカルトミステリーのシリーズのなかの短編ですね。ただ、あっちのキャラ設定はもう使えそうにないので(設定がつまんないから)、ストーリーとして一番おもしろかった、これだけ使いました。
ただ、内容的には元話のほうがキレがあって面白かったです。
向こうは舞台が京都で、電車は京阪電鉄です。駅名とかもバンバン入れてました。伏見稲荷とか、東福寺とかね。そっちのほうがリアリティはありました。
今回、八重咲にリメイクするとき迷ったんですが、この話は日本のどこそこと場所を特定するより、日本全国のどこであってもおかしくない話にしたいなと思いました。
というより、書くとしたらまた京都になってしまうんでw
うーん、別のとこにしよう……と。
というのも、八重咲の話は連作短編なので、舞台も日本全国あちこちに変わるんですね。シチュによっていろんなとこに旅することになるので、拠点を京都に決めてしまうと、旅先もいちいち、どの県のなんていう町で——とやらないといけなくなる。
たかだか1万字(原稿用紙25枚ていど)の短編1話ずつに、それやってるとキリがないなぁと思ったので、あいまいにぼかすことに決めました。
あと内容が悪魔退治なので、じっさいの町名とか出すと、その町のイメージ的にどうなのかなという配慮ですね。
忌魔島的な舞台を実在する土地の名前にしちゃうのはよくないのではないか——という考えです。
そういうのが許される場所っていうのもあると思うんですよね。たとえば、東京、京都、大阪あたりなら、小説やマンガやゲームの舞台として多用されてるので、問題ないだろうなと。
でも、今回は必然的に海辺の町が出てくるので。
そう。海辺の町。忌魔島ですね。
もともとの話は島ではありませんでした。リメイクするときに、より隔絶された環境のほうが舞台として面白いだろうなということで島に変更しました。
ちなみに、忌魔島はさっきのスーツケースの男とは別の話でした。
元話は四百字詰め原稿用紙三百五十〜四百枚ていどの読み切りのホラー長編でした。
タイトルは『綿津見より愛をこめて』でしたねw
ずいぶん昔に書いて、あまりにもヘタなので、原本はとっくにポイッ(-_- )ノ⌒︎。っとしましたが、ストーリーはちょっと面白かったなぁ、いつかリメイクしようかなと思っていた話です。
今回、ホラーのストーリーが欲しいとなったときに、「そう言えば、あの話のなかでとくに印象的なエピソードを切りだして短編にする形で使えるかも、と思い立ったわけです。
なので、2話めの『妖怪二口女』『夜に這う』『忌魔島奇譚』は、そのときの話が元話になってますね。
3話めの『古時計』は、竹書房の怖い噂イベントのときに思いついたんですが、実話風のホラーというよりはSFっぽいホラーなので、ちょっと違うなぁと思って書きそびれたネタをそのまま使用。
さて、残る5話めの『人魚』なんですが、コレ、あるかたには話しましたが、じつは昼寝してるときに夢を見ました。つい最近ですね。八重咲の2話めくらいを書いてるときでした。
※ここから人魚のネタバレを含みます。
夢のなかでは、海ではなく川でした。
川のこっち側から向こう岸まで、死者の霊が一列にならんで水の上を歩いていて、それに向かって投げ網をしているおじさんがいたんですね。死者の霊を網で捕まえようとしてました。
夢は、それだけだったんですけどね。
目が覚めた瞬間に「使える!」と思いました。
重松さんのキャラクターはこうやって誕生した!w
なんか書いてるうちに、最初の夢のイメージからはだんだん離れていってしまいましたが、なんとなく物悲しいような夢のあのふんいきが出せてたら成功かなぁ?
*
さて、創作裏話で前回書いたとき、あの話はじつは青蘭の基本的な初期設定しかなかったと言いました。
その初期設定とは、忌魔島のエピローグで、青蘭が龍郎に語る場面の内容ですね。
えーと、それの前半だけ。
後半の賢者の石が——とか言いだすのは、この話を書きだして2話めくらいのときに、「えーい、BLありなら、もういいや。あの設定も足しちゃえ!」とヤケのようにつけたした設定です。
あの設定には続きがあるんですよね。
玉、三つあることになってるじゃないですか?
つまり、もう一人、出てくるんですよね。龍郎のライバルが。
第二部あたりから、ライバルを出そうかなぁと画策しています。
今ならライバルの容姿の希望、受付中ですw 今のところ、龍郎が日本人なので、銀髪碧眼の西洋人で行こうかなと思っていますが。
まあ、三角な関係ですよね。
青蘭は揺れる。
ドロドロBLをお楽しみください……(;゚∀゚︎)
この設定、ずいぶん昔、友達から借りた表紙絵が綺麗なBLの本を読んだときに、イラッと来て、「僕なら、こうする!」と思って考えた展開になってますw 三部作だったんですが、一部はまあ読めたけど、それ以降の二冊がつまんなくて……。
今はそうじゃないのかもしれないけど、当時のBLは内容の薄いのが多かった気がします。エンタメ性は低かったなぁ。ファンタジーだったんですが、なんか男同士でついたり別れたりするだけで、これという山場がなかった。
ところで、八重咲の話。
忌魔島まで読むと、わかる人にはわかると思います。
この話がクトゥルー神話に想を得ていること。
忌魔島、あきらかにラブクラフトの『インスマウスの影』ですよね。
この前の裏話で書いた『わだつみから愛をこめて』が、そういう話だったので、必然的に、忌魔島はクトゥルーに……。
青蘭はクトゥルーを分解して飲みこんでしまったw
まあ、今後、あの神話の神さまが出てくる予定はありません。
ご好評なら、続けて第二部を書こうかなぁと思います。