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文字数 1,195文字
「わー、マジで!ワールド郎だ!ちょっと、あとで話しましょう!」
旭川は満足そうな顔をしていた。ダイスのやすひろはワールド郎チャンネルのファンで、旭川は池上を強引に誘って、ファンとしての手柄を立てたのだ。利用されたことに池上は少し腹は立ったが、さっきまでステージで歌ってたプロのミュージシャンに評価されていることが嬉しくもあった。
祭りが終わったように人が去り、暗い路地にさっきまでステージに立っていたメンバーが姿を現す。
「お疲れ様です。いや、今日もステージ最高でした。」
「ありがとう。旭川くんはいつも、来てくれているね。それに、ワールド郎さん、ステージどうでした。」
「すごく良かったです。ありがとうございます。」
「やすひろ、猫好きで、俺たちに移動中にワールド郎チャンネル見せてきて、あれ、感動したなあ、すり寄ってきた時。俺たちも年取ってきて、涙もろいんで、バンの中で泣いた泣いた。ワールド郎さんって、いうか、ワールド郎の飼い主さんが正しいね。」
「こちら、池上さんって、私の知り合いなんです。娘がワールド郎ファンで、その縁で、こうやって、ライブにも一緒に来たんです。」
旭川は池上を利用したわけだが、評価されるものは、有名人とも簡単に近づけることがよく分かった。池上は自分の評価が思っている以上に価値があることを実感していた。
ダイスのやすひろとジョーが旭川主催の飲み会に参加した。腰痛のまさしと、年長のロクは先にホテルに帰った。旭川は満面の笑みでおしぼりをやすひろとジョーに配り、何かあるたびにスマホで写真を撮っていた。同時に池上に動画を撮るように肘でついて促した。
「やすひろさん、池上さんがワールド郎チャンネルで今日の飲み会、動画流してくれるらしいですよ。」
旭川が勝手に決める。池上はその図々しさにイラついたが、毛色が違う動画を流すことによってチャンネル登録が増えるかもしれないと下心を出していた。今の池上にとって、評価は心と金の拠り所になっている。池上はスマホを取り出し小さな三脚で固定して流しで録画する。
一同は乾杯して、ダイスのメンバーは今日のライブの話をする。何千回も繰り返した演奏だが、その度に発見があるという。それを聞き、旭川は素直に感動していた。憧れのロックスターと飲んでいるという事実が気分を高揚させ、すっかり池上のことを相手にしてなかった。池上も初ライブでダイスに対して予備知識もなく、何も話すことがないが、ロックンロールショーの裏話は面白かった。それに、見られる立場のダイスのメンバーは、演奏しながら、しっかり会場を見ていた。見られる立場の人間も、しっかり見ている人間を意識していることがよくわかった。
「池上さん、俺たちの曲、ほとんど知らんでしょう?俺たち、もう、半世紀近く演ってんだよ。でも、まだ、知らん連中がいる。そんな知らん奴がライブに来る。」
旭川は満足そうな顔をしていた。ダイスのやすひろはワールド郎チャンネルのファンで、旭川は池上を強引に誘って、ファンとしての手柄を立てたのだ。利用されたことに池上は少し腹は立ったが、さっきまでステージで歌ってたプロのミュージシャンに評価されていることが嬉しくもあった。
祭りが終わったように人が去り、暗い路地にさっきまでステージに立っていたメンバーが姿を現す。
「お疲れ様です。いや、今日もステージ最高でした。」
「ありがとう。旭川くんはいつも、来てくれているね。それに、ワールド郎さん、ステージどうでした。」
「すごく良かったです。ありがとうございます。」
「やすひろ、猫好きで、俺たちに移動中にワールド郎チャンネル見せてきて、あれ、感動したなあ、すり寄ってきた時。俺たちも年取ってきて、涙もろいんで、バンの中で泣いた泣いた。ワールド郎さんって、いうか、ワールド郎の飼い主さんが正しいね。」
「こちら、池上さんって、私の知り合いなんです。娘がワールド郎ファンで、その縁で、こうやって、ライブにも一緒に来たんです。」
旭川は池上を利用したわけだが、評価されるものは、有名人とも簡単に近づけることがよく分かった。池上は自分の評価が思っている以上に価値があることを実感していた。
ダイスのやすひろとジョーが旭川主催の飲み会に参加した。腰痛のまさしと、年長のロクは先にホテルに帰った。旭川は満面の笑みでおしぼりをやすひろとジョーに配り、何かあるたびにスマホで写真を撮っていた。同時に池上に動画を撮るように肘でついて促した。
「やすひろさん、池上さんがワールド郎チャンネルで今日の飲み会、動画流してくれるらしいですよ。」
旭川が勝手に決める。池上はその図々しさにイラついたが、毛色が違う動画を流すことによってチャンネル登録が増えるかもしれないと下心を出していた。今の池上にとって、評価は心と金の拠り所になっている。池上はスマホを取り出し小さな三脚で固定して流しで録画する。
一同は乾杯して、ダイスのメンバーは今日のライブの話をする。何千回も繰り返した演奏だが、その度に発見があるという。それを聞き、旭川は素直に感動していた。憧れのロックスターと飲んでいるという事実が気分を高揚させ、すっかり池上のことを相手にしてなかった。池上も初ライブでダイスに対して予備知識もなく、何も話すことがないが、ロックンロールショーの裏話は面白かった。それに、見られる立場のダイスのメンバーは、演奏しながら、しっかり会場を見ていた。見られる立場の人間も、しっかり見ている人間を意識していることがよくわかった。
「池上さん、俺たちの曲、ほとんど知らんでしょう?俺たち、もう、半世紀近く演ってんだよ。でも、まだ、知らん連中がいる。そんな知らん奴がライブに来る。」