第14話 王宮内の散策

文字数 1,329文字

 翌日、せっかくフレデリックの許可が出たのだからと、昼食を済ませ王宮内を散策して見ることにした。
 クライヴが良い顔しないかな? なんて思ったけど、歴代の王妃様の中にも自由にされていた方がいたようで、普通に許可を出してくれた。

 侍女や使用人はともかく、私は特に立ち入ってはいけない所は無いようだった。侍女たちも、私と一緒なら構わないみたい。
 ただ、前王妃の生活エリア内の立ち入りは禁止された。
 
 私は侍女を連れて気ままに散歩をしている。
 王宮内は、公務があっている間はあちらこちらに近衛騎士が立っているので、特に護衛を連れ歩かなくても良いようだった。

 私はヒマに任せ、建物内や中庭など毎日散策を楽しんでいる。
 そうしていると、仕事中のフレデリックに会う事もある。たいていの場合、宰相や大臣たちと移動しているのだけど。
 侍女たちはスッと横によけ礼を執る。私も少し端によって、礼を執った。
 
 いつものごとく、私を見付けたフレデリックは満面の笑みで寄ってくる。
「おお、姫。散策は楽しいか?」
「はい。陛下のご厚意には感謝しております」
「何とも他人行儀な事だな、姫は」
 そう言って、ひょいと私を抱き上げた。
 子どもを抱き上げるのと同じ縦抱っこで……。悲鳴を抑えるのに必死だわ。

「へ……陛下?」
「今日は、私の仕事ぶりでも見てみるか?」
 なんてにこやかに言った途端、一緒にいた大臣たちが慌てた。
「恐れながら、陛下。今日はこれから城下へ視察に参りますので、難しいかと存じ上げます」
 そんな進言をしてくる大臣たちを、フレデリックが一瞥したら皆ひれ伏してしまった。
「そうであった。仕方が無い。せっかく姫と一緒に過ごせるかと思ったのに、残念なことだ」
 私をゆっくり降ろし、本当に残念そうに言ってくれる。
「お仕事ですもの。仕方ありませんわ」
 努めてにこやかにそう言うと
「私もお供させてください。……くらい、言ってくれると嬉しいのだが」
 ぼそっとそう言った後、サッと身をひるがえして行ってしまった。
 どこまでが仲良しアピールなのか、本心なのかわからないな。

 だけど、私の前では優しい国王を演じてくれているけど、先ほどの大臣たちの態度をみたら普段はとても怖いのかもしれない。
 私には想像つかないけど。


 そんな事を考えながら歩いていると、突然後ろからバタバタと走り寄ってくる音がした。
 思わず振り向くと、近くにいた近衛騎士が走って来た男を取り押さえるのが見えた。侍女たちは、私を庇うように前に立っている。

 取り押さえられた男は若く、あまり身分は高くないような身なりをしている。
 王宮に仕えているというよりは、仕えている臣下の使用人と言った感じだった。
「なんです? 騒動しい。次期王妃様の御前ですよ」
 アンが、不敬だとばかりに言っている。
「申し訳ございません。私は、今、詮議を受けております、ビュッセル家に仕えている者です。無礼だとは、存じております。どうか、話だけでも聞いて頂けないでしょうか」

 目の前で、近衛騎士たちに取り押さえられた男のあまりにも必死な訴えに、私は思わず話を聞いてしまっていた。
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