珍獣inチャペル
文字数 1,259文字
創設者がキリスト教の宣教師である英宣学園では、毎朝、中学部・高等部合同の礼拝がある。
ちなみに幼稚舎と初等科、大学は別の場所にあり、そちらのチャペルでも毎朝、礼拝が行われているらしい。
明治だか大正だかに外国人建築家がつくったチャペルは、ちょっとした文化財だ。
洋画の舞台にでもなりそうな、シックな造りで天井は高い。窓は全部ステンドグラスで、荘厳、という言葉がピッタリだ。
最初ここに入った時は、異世界に迷い込んだような気がして、ちょっとワクワクしたっけ……。
まあ、今でもちょっとだけテンションが上がるけど。
チャペルには、いつの時代のものかわからない古い長椅子がズラリと並んでいて、高校3年を中心に1年2年が左右のブロック、後ろのブロックは中1と中3。二階席は中2と決まっている。
映画なんかで観た教会と違うのは、前方に舞台があるということ。これは入学式や卒業式、始業式などの行事をこのチャペルでやるためだろう。
8時半からの礼拝には早いから、まだ誰も来ていない。
僕はトコトコ歩いて、前方右のブロックの真ん中へん、1年B組の席へ行った。
通常、礼拝の座り順は出席番号順だけど、僕ともう一人の珍獣は出席番号に関係なく、B組の一番後ろの列。担任の後藤先生、副担任の小島先生の隣だ。
つまり、女子と密着しないようになっている。
女子と隔てるように、おばあちゃんぐらいの年齢の後藤先生、おばさんぐらいの年齢の小島先生の隣に座らされた時、僕らはケダモノじゃないぞ、とすごく腹が立った。
でも、女子を僕らから守っているのではなく、僕らを女子から守っているんだと知った今では有難い。
だって、アルファベット順で出席番号が一番最後の財前 千穂 はとんでもなく肉食女子なのだ。
いや、肉食女子というより、痴女……?
千穂はスラリとスタイルがよく、ロングの黒髪、色白で佐藤錦のようにピンクな唇がちょっと色っぽい。
入学式後にすれ違いざま、そんな色っぽい子からアソコをぎゅっと握られたショックはもう言葉では表せられない。
動物園の如き喧騒に面食らったものの、お嬢様の集まり、というイメージは変わらなかったのに、ザ・お嬢様という見た目の子にそんなことをされたら……。
ショックで固まった僕に対して、「ほほぉ」と変なリアクションを取った後、彼女は「財前千穂です。よろしく」とニッコリと微笑んでくれたが、僕はできるだけ千穂に近づかないようにしている。
もう一人の珍獣、家須 浩司 も同じことをされたらしく、千穂の姿が見えると脱兎の如く逃げ出している。
女子に生まれて初めてアソコをぎゅっとされた話は、一樹にも太一郎にもしていない。からかわれるに決まってる。
彼女に限らず、英宣の子たちの猫かぶりは一樹並み、いや、それ以上かもしれない。
端からB組最後列、端から2番目の席に座った僕は、真新しい聖書と讃美歌を前のボックスに入れ、大きなため息をついた。
ちなみに幼稚舎と初等科、大学は別の場所にあり、そちらのチャペルでも毎朝、礼拝が行われているらしい。
明治だか大正だかに外国人建築家がつくったチャペルは、ちょっとした文化財だ。
洋画の舞台にでもなりそうな、シックな造りで天井は高い。窓は全部ステンドグラスで、荘厳、という言葉がピッタリだ。
最初ここに入った時は、異世界に迷い込んだような気がして、ちょっとワクワクしたっけ……。
まあ、今でもちょっとだけテンションが上がるけど。
チャペルには、いつの時代のものかわからない古い長椅子がズラリと並んでいて、高校3年を中心に1年2年が左右のブロック、後ろのブロックは中1と中3。二階席は中2と決まっている。
映画なんかで観た教会と違うのは、前方に舞台があるということ。これは入学式や卒業式、始業式などの行事をこのチャペルでやるためだろう。
8時半からの礼拝には早いから、まだ誰も来ていない。
僕はトコトコ歩いて、前方右のブロックの真ん中へん、1年B組の席へ行った。
通常、礼拝の座り順は出席番号順だけど、僕ともう一人の珍獣は出席番号に関係なく、B組の一番後ろの列。担任の後藤先生、副担任の小島先生の隣だ。
つまり、女子と密着しないようになっている。
女子と隔てるように、おばあちゃんぐらいの年齢の後藤先生、おばさんぐらいの年齢の小島先生の隣に座らされた時、僕らはケダモノじゃないぞ、とすごく腹が立った。
でも、女子を僕らから守っているのではなく、僕らを女子から守っているんだと知った今では有難い。
だって、アルファベット順で出席番号が一番最後の
いや、肉食女子というより、痴女……?
千穂はスラリとスタイルがよく、ロングの黒髪、色白で佐藤錦のようにピンクな唇がちょっと色っぽい。
入学式後にすれ違いざま、そんな色っぽい子からアソコをぎゅっと握られたショックはもう言葉では表せられない。
動物園の如き喧騒に面食らったものの、お嬢様の集まり、というイメージは変わらなかったのに、ザ・お嬢様という見た目の子にそんなことをされたら……。
ショックで固まった僕に対して、「ほほぉ」と変なリアクションを取った後、彼女は「財前千穂です。よろしく」とニッコリと微笑んでくれたが、僕はできるだけ千穂に近づかないようにしている。
もう一人の珍獣、
女子に生まれて初めてアソコをぎゅっとされた話は、一樹にも太一郎にもしていない。からかわれるに決まってる。
彼女に限らず、英宣の子たちの猫かぶりは一樹並み、いや、それ以上かもしれない。
端からB組最後列、端から2番目の席に座った僕は、真新しい聖書と讃美歌を前のボックスに入れ、大きなため息をついた。