第16話 決戦の日は近い

エピソード文字数 517文字

五郎は、ウトウトしていた。
 勝利を手にしたというのに、どこか物足りない。なにかが違う。そんな思いがつきまとって離れない。五郎がうたた寝していたのは、最近の狼藉で疲れていたためであった。もっとも、起きていることに意義が見いだせない、ということもあったのだが。

「五郎。しっかりしなさい」
 耳元で、だれかが叱りつけた。目を開けると、懐かしい人がそこに立っていた。
「母ちゃん」
「あんたはいつもそうだ。人に迷惑ばかりかけて、どういうつもりなんだい。恥ずかしいと思わないのかい」
 母の言葉は手厳しい。五郎は、身を起こした。

「母ちゃん、生きていくためには、きれい事じゃやっていけねえんだよ。公家さんじゃねーんだから、はいさようでごもっともで、じゃ、やってけねえんだから」
「謝りなさい」
 母は、キツイ目になっている。
 五郎は、声をあらげた。
「母ちゃん!」
 ハッ!
 自分の声に、我に返った。
 夢だ。
 夢を見ていたのだ。
 五郎は、自嘲した。オレもヤキがまわってきたのか? 乳離れしてねえガキじゃあるめえし、母ちゃんの夢なんてくだらねえ。
 五郎は頭を振った。疲れは取れていた。いよいよ、今夜だ。決戦の日は近い。
 
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