第6話
文字数 1,262文字
ゲリラコンサートをシュローセンが発表してから、ようやく世間の人はシュローセンの評価というものを認知するに至る。
10代の時から天才と称されていた彼だが、どうもここ最近の評価は芳しくなかった。
それに加えて、今回の無謀と思えるゲリラコンサートは音楽評論家からは『若き天才の終焉』あるいは『才能の枯渇』と映ったようで、酷評の嵐になった。
どうもこの彼のスランプが、フランチェスカを不安にさせた原因のようだ。
クリスティーンはシュローセンにこの一連のメディアの評価をどう思うか尋ねた。
すると、
『どうも何も外野が言うことなんか気にしない。いつもこういう評価の話にはさらされてきたし。フランチェスカがどう思うか、それから来場してくれる観客がどう思うかに関心はあるけど、評論家なんて所詮その第一線で食べていけなかった人たちだし、そんな人たちの論説なんて聞いてもしょうがないよ。僕はもっと先の境地を目指したいんだから』
と返信がきた。
さすがプロの世界でも『天才』と評されるだけのメンタリティーをシュローセンは持っていた。
『そもそもスランプって世間で言われているのは本当なんでしょうか?』
クリスティーンは彼の心境を尋ねるべく、そう質問をメッセージで投げかけた。
『ああ、それは本当だよ』
シュローセンからの返事は早かった。
続けて彼はこうコメントした。
『確かに少し前までは気にしていたよ。だけどフランチェスカがいなくなってからそんなことはどうでもよくなったけどね』
クリスティーンは、ある意味、彼のスランプは別のより大きなショックによって脱却されるのかもしれないという運命論的な思考を巡らせた。
『でも、スランプって言われている中で、大きなコンサートを短期間で開催するのは非常に不安とかないですか?』
シュローセンはこの質問の返答をするのに少し時間がかかった。
しかし、彼はこう述べた。
『もちろん不安はあるさ。でもワクワクする気持ちのが勝っているよ。僕は残念ながら音楽をする力しか持ってない。だからこそ、自分の音楽には自信がある。今まで多くの夢を自分のこの腕だけで叶えてきたんだ。実を言えば、成功よりも失敗や挫折の経験の方が多いよ。でもそれは自分を信じない理由にはならない』
クリスティーンは頼りないシュローセンの姿しか知らないので、この回答には少し驚いた。
同時に少し彼を見直した。
だが、しかし、その数秒後に、
『我ながらこのコメント良いね。ツイッターに投稿しよう!』
とメッセージが送られてきた。
クリスティーンがこのコメントに気づいたのは1時間以上経ってのことだった。
『そういう調子に乗ったコメントは控えた方が・・・』
と連絡しようとしたが、その前にツイッターの通知がやたらきていて、嫌な予感がしたので、送信前にツイッターを覗くと、すでにシュローセンはそれを投稿をしており、炎上していた。
クリスティーンは目を細めた。
先述のコメントの代わりに、
『丈夫なハートをお持ちのようで・・・』
と送った。
自分もだいぶイギリス人らしくなってしまったものだとクリスティーンは内心で嘆いた。
10代の時から天才と称されていた彼だが、どうもここ最近の評価は芳しくなかった。
それに加えて、今回の無謀と思えるゲリラコンサートは音楽評論家からは『若き天才の終焉』あるいは『才能の枯渇』と映ったようで、酷評の嵐になった。
どうもこの彼のスランプが、フランチェスカを不安にさせた原因のようだ。
クリスティーンはシュローセンにこの一連のメディアの評価をどう思うか尋ねた。
すると、
『どうも何も外野が言うことなんか気にしない。いつもこういう評価の話にはさらされてきたし。フランチェスカがどう思うか、それから来場してくれる観客がどう思うかに関心はあるけど、評論家なんて所詮その第一線で食べていけなかった人たちだし、そんな人たちの論説なんて聞いてもしょうがないよ。僕はもっと先の境地を目指したいんだから』
と返信がきた。
さすがプロの世界でも『天才』と評されるだけのメンタリティーをシュローセンは持っていた。
『そもそもスランプって世間で言われているのは本当なんでしょうか?』
クリスティーンは彼の心境を尋ねるべく、そう質問をメッセージで投げかけた。
『ああ、それは本当だよ』
シュローセンからの返事は早かった。
続けて彼はこうコメントした。
『確かに少し前までは気にしていたよ。だけどフランチェスカがいなくなってからそんなことはどうでもよくなったけどね』
クリスティーンは、ある意味、彼のスランプは別のより大きなショックによって脱却されるのかもしれないという運命論的な思考を巡らせた。
『でも、スランプって言われている中で、大きなコンサートを短期間で開催するのは非常に不安とかないですか?』
シュローセンはこの質問の返答をするのに少し時間がかかった。
しかし、彼はこう述べた。
『もちろん不安はあるさ。でもワクワクする気持ちのが勝っているよ。僕は残念ながら音楽をする力しか持ってない。だからこそ、自分の音楽には自信がある。今まで多くの夢を自分のこの腕だけで叶えてきたんだ。実を言えば、成功よりも失敗や挫折の経験の方が多いよ。でもそれは自分を信じない理由にはならない』
クリスティーンは頼りないシュローセンの姿しか知らないので、この回答には少し驚いた。
同時に少し彼を見直した。
だが、しかし、その数秒後に、
『我ながらこのコメント良いね。ツイッターに投稿しよう!』
とメッセージが送られてきた。
クリスティーンがこのコメントに気づいたのは1時間以上経ってのことだった。
『そういう調子に乗ったコメントは控えた方が・・・』
と連絡しようとしたが、その前にツイッターの通知がやたらきていて、嫌な予感がしたので、送信前にツイッターを覗くと、すでにシュローセンはそれを投稿をしており、炎上していた。
クリスティーンは目を細めた。
先述のコメントの代わりに、
『丈夫なハートをお持ちのようで・・・』
と送った。
自分もだいぶイギリス人らしくなってしまったものだとクリスティーンは内心で嘆いた。