第6話サヨナラのニット帽

文字数 560文字

一月二日になって、父はやっと帰ってきました。けれども忙しいようで、明日には帰ってしまうそうなのです。悲しいとは思いつつも、私はある覚悟を決めていました。

翌日の夕方。
「お父さん、ニット帽あげる!編んだの!」
少し照れくさいなと思いながら、少し前に編んだニット帽を差し出しました。父は笑って受け取り、
「クリスマスプレゼントかな?」
と言いました。けれど、私は首を横にふって、
「ううん、サヨナラのニット帽だよ。」
と言いました。
「サヨナラのニット帽?」
「そう。次に会う時までバイバイだね、お父さん。」
家族はみんな少し寂しい気持ちになりました。けれど、少し成長した私の顔は、どこか嬉しそうに見えました。
かぁー、かぁー。
カラスが鳴いています。そろそろお別れの時間だと告げているのでしょう。
「じゃあ、そろそろ行くね。ニット帽ありがとう。」
「うん、疲れたらいつでも帰ってきてね!」
我儘を言わない。これが正しい選択だったとは思わない。家族の幸せを考えるのなら、みんなで一緒にいるのが一番だ。けれど…。
けれど、今回私は父の幸せを取りました。これを自己犠牲と呼ぶ人もいるかもしれません。ですが、私はこう思います。
全員が納得して手に入れた幸せなら、誰かが我慢した幸せよりずっといいと。
皆さんは、どう思いますか?
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