集会場での聞き取り調査

文字数 2,223文字

 ベネットが家に入ってから数十分後、ツェリオスの家に戸を叩く音が響いた。それを聞いたツェリオスが戸を開けると、そこに一人の男性が居た。その男性は、先程ベネットと会話をしていた者で、眼前の戸が開けられるなり敬礼をする。
 
「突然の訪問、失礼致します」
 そう言って背筋を伸ばすと、男性はツェリオスの目を真っ直ぐに見る。ツェリオスは、見知らぬ人物の登場に驚いた様子を見せ、ぎこちない笑顔を作った。
 
「驚かせてしまい、申し訳御座いません。実は」
「どうした? 仲間がフェアラに到着したのか?」
 男性の声に気付いたのか、ベネットは二人の会話に割って入る。すると、状況を飲み込めなかったツェリオスは、困惑した面持ちでベネットの方を振り返った。

 ツェリオスは苦笑しながらベネットの目を見つめ、状況を説明するよう促した。ベネットは、程なくして彼の視線に気付き、小声で訪問者が誰であるかや訪れた理由を説明する。ツェリオスは、彼女の説明に頷くと一歩後退した。
 
「そういうことなら、僕は下がるね。協力出来ることがあれば協力する」
 言いながら笑うと、ツェリオスは小さく手を振り寝室へ戻っていく。ベネットはツェリオスを見送ると、真剣な表情で男性の顔を見上げた。

「実はですね。落ち着いて話を伺う為、村の責任者に頼んで集会所を貸して頂いたのです。集会所程の広さなら、これから到着する者達も入れますし、民家へお邪魔するよりは気持ち的に楽でしょう」
 彼は、自らの考えを簡単に述べると、ベネットの返答を待った。当のベネットは、右手を頬にあて、右肘を左手で支えながら、思案顔を浮かべる。
 
「それは、良い考えだと思う。ただ、倒れた仲間が居る。もし、集会所へ向かうなら、横になれる場所が欲しい」
 ベネットは、頬に触れていた手を下げると、心配そうに微苦笑する。彼女の言葉を聞いた男性は安心した様に微笑み、口を開いた。
 
「心配する必要は御座いません。町に宿が無い代わりとして、集会所で宿泊出来る様になっているとのことでしたから」
 男性は小さく息を吸い込み、目線を上方へ移す。

「ただ……宿泊施設としては殆ど使われていないらしく、寝具の状態は良好とは言えないそうです」
 彼は目線をベネットの方へ戻すと、苦笑いを浮かべて返答を待った。
 
「分かった。何時までも世話になるのは家主へ迷惑がかかるし、事情を説明次第集会所へ向かう」
 返答を聞いた男性は敬礼をしてツェリオスの家を出、ベネットは直ぐに仲間の元へ戻った。それから、ベネットは仲間やツェリオスに説明をし、ダームやザウバーと共に集会所へ向かっていく。集会所への案内は、ツェリオスの家を訪れた兵が担い、三人は殆ど時間を掛けることなく目的地へ到着した。
 
 集会所に着くと、男性は一番広い部屋へ三人を案内し、先ずは座って落ち着こうと提案する。その部屋には、端の方に低めの椅子が集められており、男性はその中から四脚を抜き取った。そして、彼はそれらを適当な間隔を開けて床に置くと、他の三人へ椅子に座るよう伝える。

 すると、三人はそれに従って椅子に座り、そのまま男性の出方を待った。男性は、三人の前に残った椅子を移動させると、腰を下ろして一息つく。
 
「いきなり呼び出してしまい申し訳ございません。私の名は、アーサー・ヘルファー。ヘイデルに所属する兵士です。ベネット様からの連絡が届き、フェアラまで参りました。しかし……恥ずかしながら、分からないことばかりで困っております」
 彼は、自らの状態を軽く説明すると、気まずそうに苦笑する。

「一応、ベネット様から話は伺いました。ですが、情報は多い方が助かります」 
 そこまで話すと、アーサーはダームとザウバーの顔を見つめ、そのまま二人の返事を待った。
 
「早い話が、ここで起きたことについて話せば良いんだな?」
 ザウバーは、不機嫌そうな声で話すと、アーサーの目を真っ直ぐに見た。すると、彼の言葉を聞いたアーサーは頷き、嬉しそうな笑顔を浮かべる。

「話が早くて助かります。状況を把握せずに動くのは愚行ですから」
 彼は、右手をザウバーの前に差し出すと、笑顔のまま小さく首を傾けた。ザウバーは、差し出されたアーサーの手を掴むと、微笑しながら指先へ力を込める。
 
「俺の話がどれだけ役に立つか分かんねえけど、人助けになるなら歓迎だ」
 そう言って片目を瞑ると、ザウバーは手を離し膝上に置く。ザウバーとの話が一段落したアーサーは、目線をダームへ移すと直ぐに柔らかな笑顔を浮かべた。彼の目線に気付いたダームは、右手を何度か上着に擦り付け、アーサーの前へ手を差し出す。
 
「僕の話が役に立つか分からないけど、宜しくお願いします」
 笑顔を作ると、ダームはアーサーの顔を見つめた。少年の瞳に何時もの様な輝きは無く、発せられた声に力が無い。それ故、アーサーは悲しそうに目を細め、少年の小さな手を優しく掴んだ。
 
「はい。こちらこそ宜しくお願いします」
 出来る限り落ち着いた声で話すと、アーサーはダームの手をゆっくり離した。その後、主にザウバーが説明を加え、フェアラへ向かう道でのことや、フェアラで遭遇した者について話していった。アーサーは、新たな情報を聞く度に頷き、悲惨な話を聞く度に眉間に皺を寄せる。ザウバーが思い付く限りの話を終えた時、彼らは疲れた様に大きな息を吐き出した。そして、アーサーは口元を押さえて咳をすると、ザウバーの顔を真っ直ぐに見つめる。
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登場人物紹介

ダーム・ヴァクストゥーム

 

ファンタジー世界のせいで、理不尽に村を焼かれてなんだかんだで旅立つことになった少年。
山育ちだけにやたらと元気。
子供だからやたらと元気。
食べられる植物にやたらと詳しい野生児。

ザウバー・ゲラードハイト

 
自称インテリ系魔術師の成年。
体力は無い分、魔力は高い。

呪詛耐性も低い。
口は悪いが、悪い奴では無い。
割とブラコン。

ベネット

 

冷静沈着で、あまり感情を表に出さない女性。

光属性の攻撃魔法や回復術を使いこなしている。

OTOという組織に属しており、教会の力が強い街では、一目置かれる存在。

カシル


 HEIGHT:162cm
 WEIGHT:55kg
 HEIR COLOR:Brown
 EYE COLOR:Red


オーマの街で男性を浚い、更にはザウバーまでも僕にした淫魔。
魔力によって他者を操る事を得意とし、外観も魔力によって整えている。
自身で前線に立って戦う事は無く、戦闘能力に乏しい

アーク・シタルカー


ヘイデル警備兵の総司令。

その地位からか、教会関係者にも顔が広い。

魔法や剣術による戦闘能力に長け、回復術も使用する。

基本的に物腰は柔らかく、年下にも敬語を使う。

常にヘイデルの安全を気に掛けており、その為なら自分を犠牲にする事さえ厭わない。

ルキア・ハイター
 
 HEIGHT::169cm
 WEIGHT::56kg
 HEIR COLOR::Brown
 EYE COLOR::Dark Brown
 
ヘイデル教会直属の病院で働く女医。
話し方は無骨だが、若くして院長を務める程の実力者。
アークとは幼なじみの為か、彼へ接する態度からは遠慮が感じられない。

ヴァリス

 

 HEIGHT:185cm
 WEIGHT:67kg
 HEIR COLOR:Black
 EYE COLOR:Purple

 
フェアラでダームを軽々と倒した謎の多い男。
含みの有る話し方をするが、それがどこまで本当かは不明。
自在に姿や硬度を変える使い魔を使役し、人間を追い詰めることを楽しんでいる。

ライチェ

 

 HEIGHT:137cm
 WEIGHT:32kg
 HEIR COLOR:Pink
 EYE COLOR:Scarlet

 
見た目は幼い少女だが、魔族である為に様々な力を持つ。
浮遊したまま素早く移動し、相手に攻撃の隙を与えない。
また、無機物や死者を操る力を有している。
但し、深くものを考えたりするのは苦手の様で、感情が高ぶっている時などは判断力が著しく低下する。

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