第8話

文字数 1,334文字

サチは話してくれる。

「ねぇ、タカシ。ドミノがどこで作られてるか知ってる?」

「あのパタパタ倒れていくやつ?知らない」

「ドミノはね、雲の上で作られてるのよ。あたしも詳しくは知らないけど、この地球のどこかの雲の上で作られているの」

「何で雲の上なの?」

「人が死んじゃったら雲の上に行くからよ。人が死んだらドミノを一つ作るの。そんでね、赤ちゃんが生まれたときも同じようにドミノを一つ作るの。ところで、タカシはなんでドミノを倒すか知ってる?」

「おもちゃだから。でしょ?」

「違うよ。なんでかって言うとね、ドミノを倒したら、みんなが幸せになるからよ」

「どういうこと?」

「一個のドミノを倒したら、一人が幸せになるの。100個倒したら100人の人が幸せになるの。ドミノを倒せば倒れた分だけ、幸せが来るの」

「んじゃさ、1おく個たおしたら、1おく人が幸せになるの?」

「そうよ」

「へぇ~ドミノってすごいんだね」

「ドミノはすごいの」

「誰が作ってるの?」

「あたしたちのおじいちゃんとかおばあちゃんとかひいおじいちゃん、ひいおばあちゃん、ひいひいおじいちゃんとかひいひいおばあちゃんとかよ。みんなのひいひいひいおじいちゃんとかひいひいひいおばあちゃんとかが作ってるの。要するに、天国にいる人みんなが作ってるのよ」

「・・・死んだ人が作ってるんだ。なんで?」

「みんなが幸せになるために。天国にいる人みんなが、生きているあたしたちがみ~んな幸せになるようにって、祈りながら作ってるの。ひたすらね。誰かが死んだら、他の誰かが幸せになれって、みんなが祈りながら作るの。誰かが生まれた時も同じように、他の誰かが幸せになるようにって、祈りながら作るの。たった一個のドミノをね」

「死んじゃった人ならさ、いっぱい、い~っぱいいるんでしょ?なのに、たった一個しか作れないの?」

「うん。たった一個しか作れないの」

「大変なんだね」

「うん、とっても大変なのよ。そのね、雲の上ではね、ドミノを作る人たちと、ドミノを並べる人たちと、ドミノを倒す人たちの3つのグループがあるの。並べる人たちも、倒す人たちもみんなタカシたちが幸せになるようにって祈りながら並べたり、倒したりするの。1日1回、並べて、倒すの。時間はね、ちょうど夜中の0時。倒し終わったら、また誰かが死んだり生まれたりするから、またドミノを作って、並べて、倒すの。0時に。それの繰り返し」

「ほんと大変そうだね。いやだな、ぼく死んじゃってもドミノなんか作りたくないよ。疲れるじゃん」

「疲れないわよ。死んでるから。それに、何人で作ってるか知らないでしょ?」

「知らな~い。何人?」

「数えられないくらいいっぱい。」

「それじゃ、すんごい広いところなんだね、作ってるとこって」

「うん、そうよ。すんごい広いんだから。じゃ~おしまい。もう寝なさい。明日もちゃんとぐずぐず言わないで起きるのよ。」

「うん」

ドミノの話を聞いたらすっと寝てしまう。なんでか知らないけど、この話を聞いた後は知らないうちに寝ちゃってて、知らないうちに朝になってる。なんか不思議な感じがするんだ。

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