第四笑 離島には嵐がつきもの

エピソード文字数 696文字

「警部! 大型台風が接近しているとのことです」
「う~む。このまま進路を変えなければ、どうやら明け方あたりがピークになりそうだな」

 刑事部捜査第一課の幇間(ほうかん)刑事と、コンビを組んでいる上司の波謎野(はなぞの)警部とが、雨風が強くなってきた天候を危惧する。

「この天候では、迎えの船もしばらく来られませんよ」
「欠航となれば、我々は当分の間この島から出られないということか?」

「ええ、我々はこの島に閉じ込められたのですよ」
「それは、いただけない」

「もし、ここで殺人でも起これば、クローズドサークル状態になりますよ」
「おぉお、クローズドサークルかぁ……」

「そうなれば、警部の腕の見せ所ではないですか」
「うむ、この毛むくじゃらの太い腕を見せられる――というわけだな」
 波謎野警部が、袖をたくって短く太い腕を見せた。

「…………」

「ところで、この島の全貌は、いったいどうなっているんだ。それだけでも先に把握しておくに越したことはない。何処かに地図でもあればいいのだが……」
「ええ、何か事件(こと)が起きてからでは遅いですからね」

「ああ、それと、我々と同じようにこの館に招待された客の行動や動向を、一応把握しておかねばなるまい」
「そのとおりですね。明日一番に確認してみます!」


 商店街の年末の福引セールで、一等賞『夏のオリーブの里2泊3日ツアーご招待券/計3組(ペア券)』を引き当て、生まれて始めてこの小豆島(しょうどしま)を訪れた二人は、興奮の余り宿泊しているペンション『オリーブの館』の一室で、眠れぬ嵐の夜を過ごしていた。


      了
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