(二)-19

文字数 324文字

 それは、真冬の凍った湖に入る神事だった。氷結した湖に入り、その年一年間の豊作や厄除けなどを祈願したと言われている。
 その祭りの慣習はやがて、村の中で犯罪を疑われた者が身の潔白を証明したり、何かの誓約する際にも行われるようになった。それがやがて若い男が娘に結婚の申込をする際にも行われるようになったのだった。
 祭りは戦後直後くらいまでは正月に行われていたらしいが、その後正月明けくらいに開催されるようになったという。
 私がこの事を告げると、「嘘だろ? それをこれからやれというのか?」と滝沢は声を上げた。
 普通の人ならそう言うはずだ。それに私だって相手が本当に好きな人なら、そんなことは勧めない。氷の張った湖に入るなんて、自殺行為だからだ。

(続く)
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