第68話  夜の訪問

エピソード文字数 2,957文字

 竜王さん会議が終わり十時になると、龍子さんと紫苑さんが先に帰る。俺はそのまま白竹さん家の玄関前で待っていた。



 華凛を連れて帰らないといけないからな。


 待つこと少々。玄関から出てきた華凛は俺を見るなり腰辺りに抱きついてくる。


あれ? 着替えてる?
 着ている服が違うじゃないか。すると後から出てきた白竹ママが、親指を立てながら目を輝かせていた。

一緒にお風呂に入ったのよっ! どう楓蓮ちゃん?

もう私達はまるで家族だわっ! 家族同然だわっ! そうでしょ?

 ああっ。またクルクル回り始めた。

 どうするんだこれ。などと思っていると、後ろに見える白竹さんと魔樹は笑顔で手を振ってくれる。



 なんとなく「ママは放っておいていいよ」とテレパシーが飛んできてる気がした。

華凛ちゃん。また来てね~~! 今度はお姉さんと遊ぼうね
いつでも来てね。今度は僕とも遊ぼう
うん!

 ちゃんと華凛も返事する。俺も深くお辞儀をしてから帰ろうとすると……


僕が家まで送りましょうか?
大丈夫だって。

 ジトっとした目を見せつけると、とても困ったような顔してやがる。


 お前の気持ちは分かってるから。



 だけど楓蓮には。護衛は必要ないんだって。

 家に帰るまで華凛は白竹ママについて喋りまくっていた。

 相当楽しかったのか、ずっとご機嫌だった。


 俺はというと、華凛の話を聞きながら周囲を警戒する。有事に対していつでも対応できるような心構えと、繋いだ手に僅かながら力を込める。

でね。何だかママって……お父さんに似てるような気がしたの

へぇ。そうなのか?

わかんないけど。何となく……そう思った

 う~ん。俺にはそんな感じはしないけどな。どちらかというと少々危険な匂いが漂ってくる時がある。くらいか。

 無事に家に帰ってくると、華凛はすぐに「眠たいからおやすみする」と言って自分の部屋に戻ってしまった。



 やたら疲れたのか、緊張してたのか分からないが、家についた瞬間に崩れたからな。そんな妹を見て微笑ましくなってしまう。



 まぁ風呂も入れてもらったし、今日の着替えは後日洗濯して返せばいい。などと思いながら自分の部屋に戻ると、スマホに聖奈のラインが着弾していた。

今からお邪魔してもいい?
 あいつ急だな。とか思っていると、着弾したのはほんの数分前だ。別に聖奈ならいつでも構わんとは言ったが、もう十時半だぞ。
ああ、構わないけど。今から風呂入るし、華凛も寝ちまってるが
分かった。後三十分くらいで行くから

 即返事が返って来ると、いつものクマのスタンプも送られてくる。今日は五つか。最高新記録だな。


 ちなみにスタンプの数が多いほど嬉しいらしいと本人が言っていた。



 さて。今から三十分か。


 さっき喫茶店から帰ってくる時にリミットのサインが来たから、楓蓮でいられる時間はそこから約二時間弱くらいか。



 そこから三十分。まぁ一時間半ありゃ大丈夫だろ。それにリミット限界が来ても聖奈の場合なら問題ないし。



 と言う訳で。聖奈の夜の訪問が突如決まったので、さっさとシャワーを浴びて待っていよう。


 ※


 聖奈を待っている間にシャワーを済ませ、残り時間は小説にでも使おうと思っていると、既に時間は十一時を過ぎていた。そろそろインターホンが鳴ってもおかしくないのだが。



 少しくらいの遅刻は仕方がない。気長に待っていようと思っていたら、再びスマホがブルったので慌てて確認する。聖奈かと思ったけど、違ったみたいだ。

あら? 白竹さんか

 ラインの内容には「できました!」と書かれた後に画像を送ってきてくれる。それを見た瞬間俺は「うわっ!」と声を出してしまっていた。

な、何だよこれ。す、凄い!

 後のコメントで「主人公さん書きました」と送ってくれた白竹さん。いや、これ。すぐに分かりましたよ。



 まさか。本当に俺の小説に出てくる主人公を書いてくれるとは。しかも超有名絵師のみゅうみゅうさんに……



 画像を拡大してみてみると、すげー細部まで拘っていた。

 長い髪は腰まで伸びており、サイバーチックな姿に、ライフルのような銃を構える主人公に思わず魅入ってしまっていた。



 まさに俺の理想を突っ込んだ主人公像に、鳥肌がたちっぱでアホ口を開けたままになってしまう。


凄すぎです。白竹さん!

 ありったけの賞賛を書き殴ってすぐに送信。

 すると白竹さんは更にこんな画像を送ってきた。

マジかよ……このシーンは転生してから初のエロシーンじゃないか。

 数ページの漫画は俺の小説を忠実に再現しており、台詞ともに全て一致していた。


 しかも内容は更にハードになってて、エロさが倍増してやがる。


 そして最後に送ってきた伝言には……

私が好きなシーンを漫画さんにしてもてもいいですか? 書いてみたいです

 ぐはっ! ま、まさかのコミカライズだと?


 話があまりにも飛躍しすぎて、椅子から転げ落ちそうになっていた。もちろん断る理由などなく、白竹さんの好きにしてくださいと返事していた。


 

 これわ……早く小説を更新せねば。


 彼女に続編を待っていると催促されてるし、期待に応えなければ。そう思うと俄然やる気になってしまった。

質問で~す。蓮くんってこの小説の主人公さんみたいな人が好みなのですか?
 ちなみに主人公は女であり、未来人という設定である。
そうですね。恥ずかしながら外見も中身も超理想です
そう返信すると、キノコなのか犬なのか分からないキャラが「いや~ん」と言わんばかりにクネクネしているスタンプが届いてから、
じゃあ私も頑張っていっぱい書きまくります

 ああっもう俺はなんという果報者なのだ。

 思わず天井を見上げて目を閉じる。今すぐ死んでも悔いはない。などと思っている矢先、インターホンが鳴った。

 おっと。聖奈が来たのだろう。すぐに現実世界に戻って来た俺は白竹さんに返事を送ると、パソコンの電源を切り、玄関先に向かうのだった。



 ※

ごめんね。結構遅れちゃった
いやいや。気にすんなよ

 さっき時計を見たが、十一時半。最初のリミットから約一時間半が経過していた。


 聖奈はいつものキャリアウーマンなファッションで、黒のパンプスを脱ぐと、ささっと奥に入って行く。

ねぇシャワー浴びていい?
ああ、構わないけど

 そろそろ楓蓮でいられる時間が少ない。

 そう言おうとしたが、そのままバスルームに行ってしまったので言いそびれた。

着替え。持って来てるのか?
うん
お前。もしかして……泊まるつもり?
 すると聖奈はバスルームから顔だけ出すと「そうだけど、ダメなの?」とか言ってくる。
いあ、別にいいけどさ
 思わず顔を背ける。聖奈は既に上を脱いでしまったのか、肩や胸元辺りが肌蹴てるし。
そういえば平八さんは?
朝方迎えに来るように言ってあるわ

 そ、そうですか……


 暫くして風呂場のドアが開く音がすると、シャワーの音がしたので、とりあえず俺は自分の部屋に戻るのであった。


 まぁ昔から遠慮とかしない奴だったので、それについては別に突っ込む気にはならないが……

 ただ、お前だってさ、もう年頃の女の子なんだから、もうちょい恥じらいと言うものが無いのだろうか。


 一応俺は男なのだが。分かっているのかあいつ。

 あ、今は女だけど。というか……


 もうじきリミットの限界がやってくる。

 あと数十分で男に入れ替わらなければならないのに。


ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

キャラのプロフィールは、章の始まりにも記載しています。


ここに記載されているのは主要人物です。

その他の登場人物は章の始まりなどに記載しています。


読者視点は神視点。

物語の中の人達が知らないことを全部見る事ができます


また、二章からはキャラの心の声まで聞こえます(フキダシが灰色)

 ★ 黒澤 蓮 くろさわ れん


 本編の主人公。高校一年


 男女入れ替わり体質。
 
 弟の凛と共に、新天地で新たに生まれ変わろうと、楽しい学校生活を送ろうとする。友人作りに重きを置き、人との付き合いにはとても慎重である。


 とても弟思いの良いお兄さん(お姉さん)

 ★ 白峰楓蓮 しらみねかれん


  蓮の女性の姿。白峰というのは偽名。

  黒澤家とは繋がりを見せないように演じる。


  心の中は男の子なので、女の子のファッションやらに興味が無い。

  とても美人なのにあまり自覚がなく、女性の姿はオマケだと思っている。

 ★ 黒澤 凛 くろさわりん


 小学校六年生


 男女入れ替わり体質。

 

 兄である蓮を慕い、とっても素直で女の子のような性格。
 ことある毎に兄に甘えてしまい、いつまで経っても、子供のままなので、蓮は凛の将来をとても心配している。



 ★ 白峰 華凛 しらみねかりん


 凛の女性の姿。

 外部との接触が無いので、彼女の存在を知るのは家族だけ。

 楓蓮と違い、おしゃまさん。


 ★ 美神聖奈 みかみせいな


 高校で蓮と同じクラスとなる。実は小学四年生までの幼馴染。


 容姿端麗。成績優秀。運動神経抜群。リーダーシップ抜群。お金持ち。

 など、全てを兼ね備えている人。


 二人目の主人公。

 ★ 白竹 美優 しらたけ みゆう


 蓮と同じクラスとなる。ピンクの髪が目立つ美人。

 自分の家の喫茶店で働いており、メイド服で接客をこなす。


 学校と喫茶店では、雰囲気がまるで違うのには理由があり……

 

 三人目の主人公。 

 

 ★ 白竹魔樹 しらたけまき


 蓮の隣のクラス。美優は双子の姉弟。


 学校ではとてもクール。喫茶店では男の娘?

 双方を知る蓮にとっては、非常に疑問な人物。


 四人目の主人公

 ★ 染谷龍一 そめやりゅういち


 蓮と同じクラスとなり、前の席という事で付き合い始める。

 わりと積極的。学校ではいつも笑顔で誰にでも優しいが……

 

 五人目の主人公

 ★ 平八 へいはち 


 聖奈専属の運転手。

 黒澤家の秘密を知っており、蓮の親である麗斗(れいと)とは旧知の仲



ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色