『彼ら』に関する噂話

文字数 1,056文字

「『彼ら』って、なんで旧アキバに集まってくるんですかね? 夏だったら、ああイベントに来たんだな~、で片付けられますけど」
「本当にそれが理由だったら、グッズ代より請求される被害総額のほうが高いと思う」
「冗談ですよぉ。これがゲームとかアニメだったら、実は旧アキバに『彼ら』の王、あるいは女王的存在が安置されていて、それが目覚めると世界がなんか大変なことになるっていうのが定番ですよね。で、他の『彼ら』は起こしにくるとか、呼び寄せらられたとかで、まっすぐここに来てるんですよ」
「しかも、安置したのは主人公の親世代だった、てのもおまけで追加しておいて。世界を救う為に頑張ってたら、実はそいつらに利用されてたみたいな。持ち帰ったサンプルが栄養源にされてたとか」
「うわ、主人公と視聴者の心が折れる瞬間ですよ、それ。でもまぁ、結局、最終的には主人公がなんとかするんですね、分かります。あとは、過去に主人公に助けられた『彼ら』が、陰からこっそり手伝ってくれるんですよ、きっと」
「で、こんなストーリーを果たして『一般人』が思い付くか?」
「どうでしょうかね。厨二病患者なら、似たような作品挙げてくれると思いますけど。あれとか、あれとか」
「じゃあ、今回の事件の黒幕は『オタク』内部?」
「うう。どうでしょう。そこまではなんとも。仲間を疑いたくはないですが……。あ…」
「どうした」
「いや、そういえば……。前に地上に出た時、っていっても『彼ら』が出てくる前なんで、本当に結構前のことなんですけどね。やたらと大きい卵型の何かがあったこと思い出して……。オブジェかなんかだと思って、その時はスルーしてたんですよ。今思えば、あれって『彼ら』の卵じゃないかな~と」
「音とかひび割れはあった?」
「あ~。ひび割れはしてましたね。本物だとしたら、もう孵化してる可能性もないわけではないですよね」
「ここに来るように呼んでたのは親じゃなくて、子供のほうか」
「お父さん、お母さん、あるいは親戚の皆を必死で呼んでたんですね。それなのに……。うう、ごめんね~」
「まだそうと決まったらわけじゃないから、そこまで泣かなくても。とりあえず、そういう可能性もあることを、探査班と考察班に伝えとく」
「お願いします。ああ、守るべきは世界か、はたして『彼ら』の家族愛か」
「仮に『彼ら』の子供がいたとして、それを保護して旧アキバ以外の土地に移ってもらえば?」
「『一般人』との溝が深まりそうなので、それは止めたほうがいいかと」
「え~。駄目かぁ」
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み