第8話 砂トカゲ②
文字数 2,149文字
「くそっ!身動きがとれん。」
右側一世はもがいたが、もがけばもがくほど砂の中に埋まっていった。
「こうなってしまえばもう抵抗はできないなあ、右側一世。黒の宝珠を操るお前を消し去れば、ミルベウス様の地上支配達成も見えてくるというもの。そして俺はお前を倒した功績でのし上がり。やがてはミルベウス様の右腕となるのだ!やれっ小僧!」
操られている光一郎は、右側一世を素手で殴った。
「違う!白の宝珠を使え。神の力でこいつを殺せ!」
だが、光一郎は白の宝珠を使わなかった。
「はははは、そいつは昨日今日宝珠を使い出したど素人なんだぜ。ある程度熟達しているのならまだしも、操られて意識が無い時に素人が宝珠を扱えるわけないだろ。」
と、右側一世は笑い飛ばした。
「ええい、では砂トカゲ!お前たちでこいつをドロドロに溶かしてしまえ!」
教魔の言葉で砂トカゲが十数匹集まってきた。そして酸性の泥をいっせいに右側一世に吐きかけた。
右側一世の体が溶けだした。余りの痛さに彼は、ぐうと息をもらした。
「どうだ右側一世。この俺の奴隷になると約束すれば助けてやらんこともないぞ。」と教魔はいやらしく笑いながら、悶 えている右側一世に呼びかけた。
「奴隷になるだと?ふざけるな、お前らのような下賎 な魔物に支配される俺ではない。奥の手はあるんだぜ。」
右側一世はニヤリと笑って言った。
「悪魔変化、怪鳥!」
右側一世の体がどんどん砂の中から出てきて、大きな鳥の化け物に変わっていった。
グアッと一声鳴くと、驚いた砂トカゲたちは慌てて教室から逃げ出していった。
「な、なんだ?なぜ逃げるんだ、戻って来い!」「無駄さ。俺は奴ら砂トカゲを餌とする砂漠の怪鳥に化けたからな。魔物といっても獣と変わらん。天敵から身を隠すのは当たり前さ。」
教魔は悔しさのためにぐぅぅと唸 った。右側一世は変身を解いた。
「さてこれで俺とお前の一対一になったな。もう俺を砂で抑えつけることはできない。光一郎の力では俺を傷つけることもできない。どうする?」右側一世は再びニヤリと笑った。
「くそっ、ならば!これでも喰らえ!」
教魔は鞭を右側一世の左ひざに叩きつけた。
「この鞭は一振りで鉄をも壊すのだ!砂トカゲどもの泥でボロボロになった皮膚をさらにズタズタにしてやる!」
「そんなもんが効くか。これで終わりだ。」
教魔は 黒の宝珠から突き出た大きな右手に全身を平手打ちされた。そして壁を突き破って中庭に落ちていった。(調教師の専門学校、サボらずに通えばよかったな…)と思いながら。
おい、起きろ。その声で僕は目を覚ました。「あれ?僕は…、えと、ここは?」
砂だらけの床の上で倒れていたのか。目の前には右側一世がいた。
「ここはお前の教室だ。お前がそこに寝転がってる奴に気を取られた時に本物の教魔に操られたんだよ。結局俺が倒したけどな。まだ何匹か逃げた砂トカゲがいる。1人で片付けるのも面倒だからお前も来い。」
彼は呆れた顔をしていた。
「そっか。僕は敵に操られていたのか。助けてくれてありがとう。」
「だから殺せと言ったろ。なまじ生きてるから戦いの最中に気が散るんだ。まあ、白の宝珠は正義の心で強くなるからそれは仕方がないとしても、今度敵の手にかかったら助けてやらねえからな。行くぞ。」
廊下に出ると、砂まみれで瓦礫 の下敷きになっている砂トカゲのボスが見えた。「あっ、さっきのやつだ。」「お前が目を覚ます前に倒してやったよ。」
校舎の東館と西館を繋ぐ大きな廊下は大小さまざまな傷跡があり、ここで激しい戦いがあった事を思わせた。
さて、砂トカゲを全部倒し終えた。
「ねえ、右側一世。もう怪物達は襲ってこないと思うしそろそろ箱にした人たちを元に戻そうよ。」「そうだな、その前にまず砂トカゲのボスの所に戻るぞ。」
「えっなんで?」
僕は説明もされぬまま、ボスの死体の所へ向かった。
「この砂トカゲはサンドロイシントカゲと言って、内臓から作られる薬は痛み止めや神経痛を治す効果を持つんだ。ヒゲが長い、つまり群れのボスの内臓が一番いいんだ。」
右側一世はボスの腹を裂いて内臓を取り出して魔法で粉末状にし、懐から取り出した透明な袋の中の液体に入れた。
「何のために薬を作るの?」「これを見ればわかる。」そう言って箱にした人たちを元に戻した。
すると出てきた人は校長先生も一年生の男の子もみんな体操座りよりも縮こまっていた。
「どうなってるのこれ?」「箱にするとき、人を小さくするんじゃなくて体を折りたたんでもらうんだよ。だから元に戻った時はありえない体勢になってるから、それを元に戻した時の痛み止めにこの薬がいるのさ。」
右側一世は出来上がった薬をシャワーにして倒れている人たちにかけた。
ベキベキという気色の悪い音は僕の耳からしばらく離れないだろう……。
学校からの帰り道、右側一世は言った。
「お前、右側一世じゃ呼びにくいだろ。俺のことは『ネイビー』と呼べ。俺が右側一世になる前の名前だ。」
僕が右側一世になる前は何をしてたのかを聞いたけれど、彼は答えてくれなかった。
右側一世はもがいたが、もがけばもがくほど砂の中に埋まっていった。
「こうなってしまえばもう抵抗はできないなあ、右側一世。黒の宝珠を操るお前を消し去れば、ミルベウス様の地上支配達成も見えてくるというもの。そして俺はお前を倒した功績でのし上がり。やがてはミルベウス様の右腕となるのだ!やれっ小僧!」
操られている光一郎は、右側一世を素手で殴った。
「違う!白の宝珠を使え。神の力でこいつを殺せ!」
だが、光一郎は白の宝珠を使わなかった。
「はははは、そいつは昨日今日宝珠を使い出したど素人なんだぜ。ある程度熟達しているのならまだしも、操られて意識が無い時に素人が宝珠を扱えるわけないだろ。」
と、右側一世は笑い飛ばした。
「ええい、では砂トカゲ!お前たちでこいつをドロドロに溶かしてしまえ!」
教魔の言葉で砂トカゲが十数匹集まってきた。そして酸性の泥をいっせいに右側一世に吐きかけた。
右側一世の体が溶けだした。余りの痛さに彼は、ぐうと息をもらした。
「どうだ右側一世。この俺の奴隷になると約束すれば助けてやらんこともないぞ。」と教魔はいやらしく笑いながら、
「奴隷になるだと?ふざけるな、お前らのような
右側一世はニヤリと笑って言った。
「悪魔変化、怪鳥!」
右側一世の体がどんどん砂の中から出てきて、大きな鳥の化け物に変わっていった。
グアッと一声鳴くと、驚いた砂トカゲたちは慌てて教室から逃げ出していった。
「な、なんだ?なぜ逃げるんだ、戻って来い!」「無駄さ。俺は奴ら砂トカゲを餌とする砂漠の怪鳥に化けたからな。魔物といっても獣と変わらん。天敵から身を隠すのは当たり前さ。」
教魔は悔しさのためにぐぅぅと
「さてこれで俺とお前の一対一になったな。もう俺を砂で抑えつけることはできない。光一郎の力では俺を傷つけることもできない。どうする?」右側一世は再びニヤリと笑った。
「くそっ、ならば!これでも喰らえ!」
教魔は鞭を右側一世の左ひざに叩きつけた。
「この鞭は一振りで鉄をも壊すのだ!砂トカゲどもの泥でボロボロになった皮膚をさらにズタズタにしてやる!」
「そんなもんが効くか。これで終わりだ。」
教魔は 黒の宝珠から突き出た大きな右手に全身を平手打ちされた。そして壁を突き破って中庭に落ちていった。(調教師の専門学校、サボらずに通えばよかったな…)と思いながら。
おい、起きろ。その声で僕は目を覚ました。「あれ?僕は…、えと、ここは?」
砂だらけの床の上で倒れていたのか。目の前には右側一世がいた。
「ここはお前の教室だ。お前がそこに寝転がってる奴に気を取られた時に本物の教魔に操られたんだよ。結局俺が倒したけどな。まだ何匹か逃げた砂トカゲがいる。1人で片付けるのも面倒だからお前も来い。」
彼は呆れた顔をしていた。
「そっか。僕は敵に操られていたのか。助けてくれてありがとう。」
「だから殺せと言ったろ。なまじ生きてるから戦いの最中に気が散るんだ。まあ、白の宝珠は正義の心で強くなるからそれは仕方がないとしても、今度敵の手にかかったら助けてやらねえからな。行くぞ。」
廊下に出ると、砂まみれで
校舎の東館と西館を繋ぐ大きな廊下は大小さまざまな傷跡があり、ここで激しい戦いがあった事を思わせた。
さて、砂トカゲを全部倒し終えた。
「ねえ、右側一世。もう怪物達は襲ってこないと思うしそろそろ箱にした人たちを元に戻そうよ。」「そうだな、その前にまず砂トカゲのボスの所に戻るぞ。」
「えっなんで?」
僕は説明もされぬまま、ボスの死体の所へ向かった。
「この砂トカゲはサンドロイシントカゲと言って、内臓から作られる薬は痛み止めや神経痛を治す効果を持つんだ。ヒゲが長い、つまり群れのボスの内臓が一番いいんだ。」
右側一世はボスの腹を裂いて内臓を取り出して魔法で粉末状にし、懐から取り出した透明な袋の中の液体に入れた。
「何のために薬を作るの?」「これを見ればわかる。」そう言って箱にした人たちを元に戻した。
すると出てきた人は校長先生も一年生の男の子もみんな体操座りよりも縮こまっていた。
「どうなってるのこれ?」「箱にするとき、人を小さくするんじゃなくて体を折りたたんでもらうんだよ。だから元に戻った時はありえない体勢になってるから、それを元に戻した時の痛み止めにこの薬がいるのさ。」
右側一世は出来上がった薬をシャワーにして倒れている人たちにかけた。
ベキベキという気色の悪い音は僕の耳からしばらく離れないだろう……。
学校からの帰り道、右側一世は言った。
「お前、右側一世じゃ呼びにくいだろ。俺のことは『ネイビー』と呼べ。俺が右側一世になる前の名前だ。」
僕が右側一世になる前は何をしてたのかを聞いたけれど、彼は答えてくれなかった。