第5話 裕子とSNS

文字数 504文字

 パソコンに向かう母と小学生の娘。
ママ、なにしてるの?
SNSよ
えすえぬえす?
パソコンで色んな人とおしゃべりできるの。ほら、これがママ
 画面に母の姿に似た二頭身のキャラが映る。
わ〜、かわいい! 他にもいっぱいいるね
パソコンの中のママを動かして、周りの人とお話しするの
北海道とか沖縄とか、遠くにいる人とも好きなだけお話しできて、楽しいわよ
確かに楽しそうね
でも……
でも?
遠くの人たちと話せるようになったことで、逆に近くにいる人との関係が希薄になっていないかしら
SNSで話すにはインターネットが必要。なら、ネットをあまり使わない人はどうなるの
裕子……?
インターネットが普及したことで、距離の壁は無くなった。でもその代わりに、ネットを『使う人』と『使わない人』という新たな壁ができたわ
日本中の――世界中の人々とコミュニケーションをとれるのは素晴らしいこと。でもそのせいで、パソコンを使わない身近な人との関係がおろそかになるのは、賢い使い方といえるのかしら
SNSの長所と短所を正確に理解しなければ、私たちは結局狭い人間関係しか築くことができないと思うのよ
あ、あなた! 裕子がいきなり、新たな壁ができたとかって……あなた!
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登場人物紹介

母親

ほら裕子。自己紹介しなさい

裕子

裕子です! 十歳です! 小学四年生です!

好きな教科は国語と社会で、苦手な教科は体育です!

でも友だちも先生も優しいし、学校はとても楽しいでーす!


――なんてね。フフ。

自己紹介で私の全てを知ろうだなんて、虫がよすぎると思わない?

所詮自己紹介なんて自分の中の良い部分、自慢したい能力を披露するだけのものよ。

本当の人間性はこんなことじゃ到底理解し得ないことに、この欄を読む側もそろそろ気づくべきじゃないかしら。


母親「ど、どうしたの裕子!」

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