第1話
文字数 956文字
俺はその日、"それ"を拾った。
いや、拾わされた…と言った方が正しいか…
これは、俺と突然現れた"それ"の物語。
その日、俺はバイトに向かっていた。
桜並木の先にある、近所のカフェだ。
桜は、ちょうど満開。
俺は、この桜並木が大好きだ。
綺麗に咲き誇る桜を見ていると、ワクワクしてくる。
良い事がありそうだ…と思ってしまうから不思議だ。
桜並木を抜け、バイト先のカフェが見えて来た時、どこからともなく声が聞こえてきた。
「おい、そこの人間!」
(ん?何か聞こえたような…)
俺は立ち止まり、辺りを見回すが誰もいない。
(なんだ、気のせいか…)
気にも止めず歩き始める。
「おい!そこの人間!お前の事だ!」
俺は再び、足を止める。
もう一度辺りを見回したが、やはり誰もいない。
首を傾げながら、歩き出そうとした時だった。
目の前に黒い物が突然現れた。
「おい!お前の事だ!さっきから呼んでいるではないか!」
"それ"は、鶏卵を二回りほど大きくしたような黒い卵?だった。
「俺の事?」
俺は"それ"に問い掛けた。
「お前しかいないだろう?他に誰がいる?」
キョロキョロと周りを確認する。
確かに誰もいない。
「うん。俺しかいない」
「当たり前だ。誰もいないからお前に話し掛けた」
(卵が話し掛けてくるなんて、あり得ない。これは幻覚だ)
俺は、何事もなかったのように“それ"を避けて歩き始めた。
「おい!待て!無視するな!」
"それ"がまた目の前に現れる。
「これは、幻覚だ…うん」
俺は自分に言い聞かせる。
「幻覚ではない。現実を受け止めろ」
「はあ〜?何が現実だ!目の前で黒い卵がフワフワ浮いてる上に喋ってるんだぞ!そんな現実あるか!」
俺は"それ"に抗議した。
「仕方あるまい。これが現実なのだから。まぁ…良い。おい、人間!我を温めよ」
「は?温める?」
「そう。我を温めよ。そして孵化させよ」
俺は思わず硬直する。
イカれた黒い卵が、温めて孵化させろだと?
そんなバカな話があるか。
ダメだ…キャパオーバーだ…
バイトは休んで家に帰ろう。
俺はその場でマスターに電話をし、休む事を伝えると、踵を返し自宅への道を戻った。
「おい!人間!返事がないぞ。我を温めよ」
背後で"それ"が喚いている。
俺は振り返ると、ハッキリと断言した。
「嫌だね!」
俺は、くるりと向きを変え、振り返る事なく自宅へと走って帰った。
いや、拾わされた…と言った方が正しいか…
これは、俺と突然現れた"それ"の物語。
その日、俺はバイトに向かっていた。
桜並木の先にある、近所のカフェだ。
桜は、ちょうど満開。
俺は、この桜並木が大好きだ。
綺麗に咲き誇る桜を見ていると、ワクワクしてくる。
良い事がありそうだ…と思ってしまうから不思議だ。
桜並木を抜け、バイト先のカフェが見えて来た時、どこからともなく声が聞こえてきた。
「おい、そこの人間!」
(ん?何か聞こえたような…)
俺は立ち止まり、辺りを見回すが誰もいない。
(なんだ、気のせいか…)
気にも止めず歩き始める。
「おい!そこの人間!お前の事だ!」
俺は再び、足を止める。
もう一度辺りを見回したが、やはり誰もいない。
首を傾げながら、歩き出そうとした時だった。
目の前に黒い物が突然現れた。
「おい!お前の事だ!さっきから呼んでいるではないか!」
"それ"は、鶏卵を二回りほど大きくしたような黒い卵?だった。
「俺の事?」
俺は"それ"に問い掛けた。
「お前しかいないだろう?他に誰がいる?」
キョロキョロと周りを確認する。
確かに誰もいない。
「うん。俺しかいない」
「当たり前だ。誰もいないからお前に話し掛けた」
(卵が話し掛けてくるなんて、あり得ない。これは幻覚だ)
俺は、何事もなかったのように“それ"を避けて歩き始めた。
「おい!待て!無視するな!」
"それ"がまた目の前に現れる。
「これは、幻覚だ…うん」
俺は自分に言い聞かせる。
「幻覚ではない。現実を受け止めろ」
「はあ〜?何が現実だ!目の前で黒い卵がフワフワ浮いてる上に喋ってるんだぞ!そんな現実あるか!」
俺は"それ"に抗議した。
「仕方あるまい。これが現実なのだから。まぁ…良い。おい、人間!我を温めよ」
「は?温める?」
「そう。我を温めよ。そして孵化させよ」
俺は思わず硬直する。
イカれた黒い卵が、温めて孵化させろだと?
そんなバカな話があるか。
ダメだ…キャパオーバーだ…
バイトは休んで家に帰ろう。
俺はその場でマスターに電話をし、休む事を伝えると、踵を返し自宅への道を戻った。
「おい!人間!返事がないぞ。我を温めよ」
背後で"それ"が喚いている。
俺は振り返ると、ハッキリと断言した。
「嫌だね!」
俺は、くるりと向きを変え、振り返る事なく自宅へと走って帰った。