アルスター山の麓(ふもと)

文字数 2,310文字

 
 俺達は草原を越えてやっとの思いでアルスター山の(ふもと)にまで来た。麓には村があった。

「こんな所に村があったのですね」・・・レオノーレ

「見ていこう」・・・アレス

 俺達は村の中に入り中心にまで来た。村の住人であろうおばあさんに話かけた。

「こんにちは、アルスター山の(ふもと)に村があったのですね」・・・レオノーレ

「この村に余所者(よそもの)が来るとは珍しいね」・・・村のおばあさん

「俺達は南にあるエール学園の学生です。課外授業でアルスター山の頂きにあるというアカシアハーブを採るように言われています。その途中で立ち寄らさせて貰っています」・・・アレス

「この村は私たちのご先祖様達がアルスター山に住んでいて山の安全を守っていると云われている神獣様を(まつ)るために開拓した村だと云われている。もっとも今では山はモンスターだらけで神獣様なんているかどうかも怪しいですが」・・・村のおばあさん

「アルスター山を登るなら、村の中心にある神獣様の姿を(かたど)った銅像に安全を祈願して(おが)んでいくといい。そなた達もご利益(りやく)(あずか)ることができるだろう」・・・村のおばあさん

「非常にためになるお話ありがとうございます。さっそく私たちも拝んでいきますね」・・・レオノーレ

(なんか胡散臭(うさんくさ)い話だな)・・・アレス

「本当かは分からないが、俺達もせっかく来たんだし拝んでいこう」・・・オズワルト

「そうそう。お前さん達が山頂にいくのならそこにいると云われている神獣様を怒らせてはいけないよ。忠告しといたからね」・・・村のおばあさん

 それから俺達は村のおばあさんにお礼を言って別れた。そして村の中心にある神獣様の姿を(かたど)った銅像の前にまで来た。

「へぇ~。これが言い伝えの神獣か」・・・アレス

「様をつけて、もっと(うやま)いなさい」・・・レオノーレ

「珍しく、レオノーレが怒っている」・・・アレス

「私達エルフはこの世界の(ことわり)とは別の存在である、精霊や言霊(ことだま)、神々を信仰しているのです」・・・レオノーレ

「アレス、口には気をつけた方がいいぞ。他人の怒りを買うことは賢明ではない」・・・オズワルト

「分かった。すまない」・・・アレス

 俺達は神獣様の姿を(かたど)った銅像の前で拝む。

「アルスター山の頂きにたどり着き、アカシアハーブを無事に採って来れますように」・・・3人

『お願い、助けて』

「レオノーレ、オズワルト何か言ったか?」・・・アレス

「何も言っていません」・・・レオノーレ

「言ってないぞ」・・・オズワルト

『アルスター山の山頂にまで来て・・・』

(幻聴か?俺だけに何かが語り掛けている気がする)・・・アレス

『私を解放して・・・お願い・・・』

「お前は誰だ?」・・・アレス

『私は・・・。ごめんなさい。もう時間が足りない・・・』

「分かった。アルスター山の山頂にいけばいいのだな?」・・・アレス

(奇妙なことになってきたな・・・)

「レオノーレ、さっきはすまなかった」・・・アレス

「いえいえ、大丈夫ですよ。先ほども謝ってもらいましたので」・・・レオノーレ

「違うんだ。俺もこの世界の(ことわり)とは違うものがあると思う」・・・アレス

「どうしたんだ、急に」・・・オズワルト

 俺はレオノーレとオズワルトの2人に先ほど聞こえた声を説明する。

「それは本当ですか?」・・・レオノーレ

「ああ。確かに聞いた」・・・アレス

「それは確かなんだな?」・・・オズワルト

「間違いない」・・・アレス

「これは大変なことになったぞ」・・・オズワルト

「ええ」・・・レオノーレ

「なんだ2人とも」・・・アレス

「責任は重大だ」・・・オズワルト

「私達エルフでさえ実際に御告(おつ)げを聞いた者はいないと聞きます」・・・レオノーレ

「きっと神の(たぐい)が助けを求めているのだろう。このまま放置すれば、天変地異が起こるかもしれない」・・・オズワルト

「ならば、絶対に助けにいかないといけないな」・・・アレス

「でもどうしてアレスにだけ聞こえたのだろう?」・・・オズワルト

「さっぱりです」・・・レオノーレ

 俺達はアルスター山の山頂までの行き方を近くの人に聞いてみた。

「すみません、アルスター山の山頂まではどう行けばいいでしょうか?」・・・レオノーレ

「おっ?山頂まで行くのか。今ではモンスターだらけだぞ。それでもいいのか?」・・・近くの人

「構いません。私達には大事な使命があるのです。」・・・レオノーレ

「そうかい。君たちの覚悟は分かった。まず、ここアルスター山の(ふもと)からある程度の所までは舗装(ほそう)されていて道があり安全に通れる。だがそこからは、モンスターで(あふ)れる(あま)()ける道と呼ばれる何人(なんぴと)も通さない(みち)がある。そこを通り、風の回廊(かいろう)と呼ばれる洞窟(どうくつ)を抜けると、アルスター山の頂きにたどり着くことができるよ」・・・近くの人

 この時、俺達は近くの人がある矛盾(・・・・)を言っていることに気付きはしていなかった。

「ご親切にありがとうございました」・・・レオノーレ

「ありがとうございました」・・・オズワルト、アレス


 俺達は身を引き()めてアルスター山の頂きを目指すのであった。

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登場人物紹介

アレス


男子学生で本編の主人公


前衛で剣を扱う戦士


は選抜の特別任務を遂行できるほどの才能限界値を有していた。


とある事件を契機に世間平均では7あると云われている才能限界値5にまで落ち込んでいる。

オズワルト


男子学生で見た目は長身で顔立ちが整っている


性格も気配りの出来る男で人望が厚い。優秀な後衛の魔法使い

レオノーレ


エルフ女子学生で人間との意思疎通得意でない。見た目はアレス曰く、可愛いらしい

森で育ったこともあり、夜眼利くを扱うのが得意。前衛も後衛もカバーできる中衛の狩人で弓使い。

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