二十・ 作詞家: 過去 美味史(かこ・うまし)の墓碑銘。
文字数 424文字
驚異的な長寿と若々しい外見を保ったまま。
眠るように身まかった。
見送る身内の者といえば、すでに遥かに年下の人間しかいない。
さらさらと明るく見送る、静かで熱烈な、葬儀の席だった。
ファン活動は根強く。
盛大な、ネット上の…
追悼イベントが。
今後も末永く、展開されていくだろう…。
宇宙空間でフリーズドライにして、粉砕処理をした後。
小さなカプセルに詰められて、カコさんは地表に帰還した。
墓碑銘がわりに貼られた、カプセルの金属板には。
パペル社の。
月面事務所の移転連絡先が。
しっかりと、
刻まれていた。
*
宇宙人類の大半が、地球を遠く離れ、故星を忘れてしまった今でも。
それらは今もそこにある。
『後世の歴史家』たちが、いつか掘り返してくれることを、夢みて。
静かに、待ち続けている…。
たぶん、ね。
END.