第8話 母と息子

文字数 1,223文字

 あたまの中が真っ白になったジョンは、少女の着ているものを震える手で脱がしにかかった。そこから先は無我夢中ではっきりとは覚えていないが、とにかく本能のおもむくまま少女の身体をぞんぶんに堪能した。少女は途中で目を覚ましたようだが、マスクの下からくぐもった声で「殺さないで、殺さないで、殺さないで」とつぶやくのみでほとんど抵抗はなかった。ジョンは今までの思いのたけをぶつけるようにして、これまでに味わったことのない恍惚に達すると思わず神の名を叫んだ。

 しばらくベッドに横たわったまま放心状態でじっとしていると、かたわらの少女がとつぜん激しく泣きだした。おどろいたジョンは、

「かわいい子だね、痛かったの? ごめんね、ごめんね。今度からはもっと優しくしてあげるからね、ごめんね」

 しゃくり上げながらガタガタと震えている少女のほっそりした身体を、そっと包みこむように抱きしめた。愛おしさがこみ上げる。と同時に、無我夢中だったとはいえ少女を荒々しく扱ってしまったことを心から悔いた。女の子はデリケートなんだから、もっと優しくしてあげなくては。この子は僕の、やっと来てくれたかわいいお嫁さんなんだから。しばらくそうしていると、少女は泣きやんだようだった。すると母親のアナが洗面器とタオルを持って静かに部屋に入ってきて、ジョンに出ていくようにと態度で示した。すっかり満たされたジョンは、おとなしく自分の部屋へと帰っていった。

 アナはベッドに腰かけると、少女の身体を石鹸水にひたしたタオルでていねいに拭いていった。ジョンがまだ小さかった頃、昼間に遊んで汚したおもちゃを、夜寝かしつけてからこうして毎晩、きれいに拭いてやったものだわ。アナはそんなことを懐かしく思いだしながら、力なく投げ出された少女の身体を、その指先一本いっぽんに至るまできれいに拭いていった。いつまたジョンが

使

も大丈夫なように、清潔できれいな少女の肉体が必要なのだから。
 ひととおり拭き終わるとアナは満足そうな笑みを浮かべ、用意しておいたストンと丈の長いコットンのワンピースを少女に着せると後ろ手に手錠をかけた。視界を奪われているせいもあるのか少女は無抵抗ではあったが、念のため手の自由も奪っておいたほうがいいと思ってのことだ。そして少女の腕をとり一緒に歩かせ地下室まで連れて行き、目だけ出したベールをかぶりピストルを構えてから少女の手錠とマスクを外した。

「これは本物のピストルよ。へんな事をしたら殺す。わかったわね」

 懐中電灯に照らされた少女は恐怖に引きつった顔でうなずいた。

「あなた名前は?」
「ジェ、ジェシカ、ジェシカ・ラングレーです」
「そう、ジェシカね。今日からここがあなたの家よ。明かりはないけど、部屋の隅にトイレとシンクもあるから自由に使うといいわ。じゃあ壁に向かって両手をつきなさい」

 ジェシカは言われたとおりにした。アナは部屋から出ると、レバー式の重いロックをガチャンとおろした。

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み