第2話 神々の意思
文字数 1,487文字
火の神『ヒノイシ』
水の神『ミズノイシ』
風の神『カゼノイシ』
土の神『ツチノイシ』
彼らは、アマノイシを助け、マグノの全てを管理していた。四神もアマノイシによって創られた創造物であったのだが、ここに人の神「ヒトノイシ」は存在しない。その事自体に四神は疑念を持っていた。
四神は、人体の姿をしていない。そもそも固有の形をしていない。マグノ全土にその存在があり、神々同士が会話をする時は、念(テレパシー)の様なもので意思疎通を図っていた。
ヒノイシが苛立つように念を送った。
「アマノイシがヒトノイシを作らなかった事が、そもそもの間違いではないのか?」
ミズノイシが宥めるように答える。
「あの方のお考えあっての事でしょう。そう憤慨なさらずに、ヒノイシ。」
「しかし、ヒノイシの意見も一理ある。人間共は、自分こそが世界を作っていると思っとる。嘆かわしい事だ。争いが何百年も続くとは…。」
ツチノイシが嘆くも、カゼノイシは、そよいだだけで念は送らなかった。
ヒノイシがため息をつくように呆れた。
「相変わらずカゼノイシは我関せずじゃのう。」
その時、四神よりさらに大きな存在が、彼らに語りかけた。
「では、ヒトノイシを作る代わりに、お前達四神に「人の目」を授けよう。」
そう言うと、一瞬マナグの時を止め、四神を震わせた。四神は一瞬うめいたが、次の瞬間新しい感覚に捕らわれた。
「アマノイシこれは…?」
ミズノイシが驚き、その何とも言えない感覚を表現しようとしたが言葉にならなかった。
「人の目を持ったのですね。」
珍しくカゼノイシが念を送ると、アマノイシが答える。
「お前達に四人の人間の目を与えた。必要に応じてその人間とも会話が出来るやもしれぬ。」
「『出来るやも…』とは?」
ツチノイシがその意図を分かりかねているとアマノイシの代わりにカゼノイシが答えた。
「『気づき』ですね。アマノイシ。」
「その通りだ。その人間がお前たちの存在に気付かなければ、会話は出来ない。」
アマノイシの念にヒノイシが苛立った。時折見える、人の目を通しての光景が気に入らないようだ。
「なぜこんな事を?不愉快極まりない。」
「確かに。こんな事をなさる理由が分かりかねます。」
ミズノイシが同調するとアマノイシは四神に静かに語りかけた。
「人は何故生まれたのか。そして私が何故ヒトノイシを作らなかったのか。私が語るより人から知った方が良かろう。そして、その四人を私の下へと導く事をお前達の新たな使命とする。だが、果たさなくても良い使命ではあるがの。」
驚いたミズノイシは聞き返す。
「その使命とやらが果たせぬ時は、如何するおつもりです?」
「マグノから人を無くそう。」
アマノイシの念に、四神は返す言葉を失った。
「一年後。私は、ナッカとトステの境にあるコルナス山脈で待っていると伝えよ。勿論、四人のうち一人欠けても人は滅びる。お前達がそうしたいのなら私は止めない。好きにせよ。それから、承知の事と思うが、四人に対しお前達の力を貸す事は、決してならぬ。」
「人に対し我らが力を貸すことは、万物の理に反しますゆえ、そのような事は断じてありませぬ。ですが、その四人を集めて何をなさるおつもりですかな?」
ツチノイシの問いにアマノイシは笑ったように大気を震わせた。
「その時に答えよう。」
そう伝えると、アマノイシはその存在を消す。
四神はそれぞれに、思案していた。