第22話 執行孝次
文字数 1,433文字
「喧嘩はあかんで」
くせ毛の少年は逃げ腰でぼそぼそと伝えた。たった今助かったばかりの少年はまだ怒りの対象が必要らしく苛立たしげに部屋を闊歩した。
「俺は出て行くからな」
血まみれの少年は隣の部屋に向った。部屋の扉から顔だけ覗かせていた川口を見つけると突き飛ばして行ってしまった。あっちの部屋にも出口はない。
「何かやばいよ、ここ」
ふたばがぶっきらぼうに言った。肌寒さを感じたように腕を抱える。
くせ毛の少年はシーソーを見上げて絶句している。
「ゲームや」
「あなた知ってるの?」
しまったーと、大げさに息を飲んで少年は黙った。
「自己紹介まだやったな。うちはヤマや。ほら、知ってるやろ。yamachan_san21ってIDや」
「また自殺掲示板のオフ会?」
ふたばの小馬鹿にした言い草にヤマと名乗る少年は、かっとなる。鼻を上に向けて、くせ毛を振り乱して怒る。
「あほか。誰が自殺掲示板なんか。ネット対戦のオフ会かと思ったんや」
「それってゲームの?」
ひいらはやっと腰を上げた。震えは収まっていた。
「ちょっと何であんたさっきからでしゃばってくるの? あたしがしゃべってるでしょ」
ふたばは、いちいちうるさいと、内心思ったけれども、緊急事態なんだから仕方がないか。
ヤマは不快だともろに顔に出している。
「ゲーマーの何が悪いんや。ほんま人を下に見とる奴は嫌いやわ」
「待って。みんな落ち着こうよ」
フー。私にもっと力があればいいのに。だって、協力しないとここからは出られないよ。
恐怖と裏腹にひいらは奮い立った。何がそうさせたのか分からない。いつものリーダーシップとも少し違う。何が起こっているのか知りたかった。まだこれから何かが起こる気がする。
「カメラがついてる」
冷静を保とうとして、部屋を隅々まで見た。天井の隅にカメラがあった。もしかしたら各部屋にあるのかも。
「スマホもリアルタイムで遠隔操作されてる。犯人は私達を見てる」
そして、再びシーソーの下敷きになっている死体を見やる。
「あれも犠牲者なんやろな」
目の前のことに必死で今まで考えられなかったが、被害者は顔を潰されている。むごい死に方だ。
「こりゃ、あれやで。グロ系でいくか。推理系でいくか」
「え?」
突然何を言いだしているのか分からない。
「ゲームやとしたらやで。グロをメインに持ってくるか。それともアイテムとか使ってやな、推理しながら脱出する謎解きタイプもあるやろ。まあ両方入ってるゲームもええんやけどうちは、謎解きの方が好きやわ。ま、それは置いといて、問題はゲームやとしたらルールがあるはずやってことやけど」
「それならさっき手紙があったよ。あっちの部屋に」
わざとらしい思案顔でヤマは聞いてきた。
「あんたらはどこで目覚めたんや? あっちか」
そのとき、壁をがんがん叩く音が聞こえた。さっきの少年はまだ怒りが収まらないらしい。力づくで壁を壊そうとしているようだ。
「いい加減にしときや。自分も怪我しとんやろ」
ヤマが声をかけて最初の部屋に戻った。連れられるようにぞろぞろと、みんな続く。
「うるせー」
「みんな名前聞かせてーや。俺名前覚えるの下手やねん。ゲームやったらいけんねんけど」
「執行君だよ。執行孝次 」
突然、川口が言った。
「てめーどこで知った」
「手紙」
二つ目の部屋でニッパーが入っていた箱の中から取り出されたという手紙。さっきニッパーを手にしてすぐ作業に入ったので気づかなかった。川口は案外冷静にものごとを見ていたのだ。
くせ毛の少年は逃げ腰でぼそぼそと伝えた。たった今助かったばかりの少年はまだ怒りの対象が必要らしく苛立たしげに部屋を闊歩した。
「俺は出て行くからな」
血まみれの少年は隣の部屋に向った。部屋の扉から顔だけ覗かせていた川口を見つけると突き飛ばして行ってしまった。あっちの部屋にも出口はない。
「何かやばいよ、ここ」
ふたばがぶっきらぼうに言った。肌寒さを感じたように腕を抱える。
くせ毛の少年はシーソーを見上げて絶句している。
「ゲームや」
「あなた知ってるの?」
しまったーと、大げさに息を飲んで少年は黙った。
「自己紹介まだやったな。うちはヤマや。ほら、知ってるやろ。yamachan_san21ってIDや」
「また自殺掲示板のオフ会?」
ふたばの小馬鹿にした言い草にヤマと名乗る少年は、かっとなる。鼻を上に向けて、くせ毛を振り乱して怒る。
「あほか。誰が自殺掲示板なんか。ネット対戦のオフ会かと思ったんや」
「それってゲームの?」
ひいらはやっと腰を上げた。震えは収まっていた。
「ちょっと何であんたさっきからでしゃばってくるの? あたしがしゃべってるでしょ」
ふたばは、いちいちうるさいと、内心思ったけれども、緊急事態なんだから仕方がないか。
ヤマは不快だともろに顔に出している。
「ゲーマーの何が悪いんや。ほんま人を下に見とる奴は嫌いやわ」
「待って。みんな落ち着こうよ」
フー。私にもっと力があればいいのに。だって、協力しないとここからは出られないよ。
恐怖と裏腹にひいらは奮い立った。何がそうさせたのか分からない。いつものリーダーシップとも少し違う。何が起こっているのか知りたかった。まだこれから何かが起こる気がする。
「カメラがついてる」
冷静を保とうとして、部屋を隅々まで見た。天井の隅にカメラがあった。もしかしたら各部屋にあるのかも。
「スマホもリアルタイムで遠隔操作されてる。犯人は私達を見てる」
そして、再びシーソーの下敷きになっている死体を見やる。
「あれも犠牲者なんやろな」
目の前のことに必死で今まで考えられなかったが、被害者は顔を潰されている。むごい死に方だ。
「こりゃ、あれやで。グロ系でいくか。推理系でいくか」
「え?」
突然何を言いだしているのか分からない。
「ゲームやとしたらやで。グロをメインに持ってくるか。それともアイテムとか使ってやな、推理しながら脱出する謎解きタイプもあるやろ。まあ両方入ってるゲームもええんやけどうちは、謎解きの方が好きやわ。ま、それは置いといて、問題はゲームやとしたらルールがあるはずやってことやけど」
「それならさっき手紙があったよ。あっちの部屋に」
わざとらしい思案顔でヤマは聞いてきた。
「あんたらはどこで目覚めたんや? あっちか」
そのとき、壁をがんがん叩く音が聞こえた。さっきの少年はまだ怒りが収まらないらしい。力づくで壁を壊そうとしているようだ。
「いい加減にしときや。自分も怪我しとんやろ」
ヤマが声をかけて最初の部屋に戻った。連れられるようにぞろぞろと、みんな続く。
「うるせー」
「みんな名前聞かせてーや。俺名前覚えるの下手やねん。ゲームやったらいけんねんけど」
「執行君だよ。
突然、川口が言った。
「てめーどこで知った」
「手紙」
二つ目の部屋でニッパーが入っていた箱の中から取り出されたという手紙。さっきニッパーを手にしてすぐ作業に入ったので気づかなかった。川口は案外冷静にものごとを見ていたのだ。