第3話(4)

エピソード文字数 2,564文字

 俺は心の中で、息をすーはーすーはー。計5回すーはーして落ち着きを取り戻し、お口を開く。

「こんな感じで、緊急高知説明タイムは終了です。他に知りたいことはございますか?」
「1つゆーせー君を知ったから、次はあたしを知ってほしーな。質問ありますかー?」

 こいつは弱った。高知の件でエネルギーを使い過ぎたせいか、全てにおいてやる気が出ないんだよなぁ。

「ゆーせーくーんっ。なんでも聞いてよーっ」
「う、うん。じゃあ…………好きな色は?」
「くろー」

 魔王で、黒真レミアだもんな。ブラック大好きで結構結構。

「ほい、こっちも一つ知った。というわけで、ここらで一旦――」
「あたしのは、短かったよー。もっと長くなりそーな質問、してっ」

 長いの、かぁ。んー………………。

「レミアが普通の子から魔王になる過程に、関心があるな。能力が宿ってから、どんな風に魔の王になったの?」

 とにかく、長くなりそうなテーマを選んでみました。これなら満足して頂けることでしょう。

「あのねあのねっ。あれは、去年の7月だったよー」
「ほぉ」

 適当に相槌を打ちたい時は、この2文字に限る。話し相手がこれを用いたら、それは全てにおいてやる気が出てないサインだから注意しよう!

「ある日お胸がカッと熱くなって、『貴女に能力を授けるね~』ってお声が頭の中に響ーてきたの。そしたら魔王術を使えるようになってて、力を感知した偉い人さんが飛んできたんだよー」
「へぇ~。レミアにきつく当たってたご主人様は、目玉が飛び出してたでしょ?」
「すっごい大正解(だいせーかい)っ。ポーンって、5メートル飛んだよーっ」


 ゑ?


「前のご主人様は、驚くと目玉が飛び出す『眼球飛族(がんきゅうひぞく)』さんなのっ。姿は人間だけど眼球が飛んで、飛んだら生えてくるんだよー」

 比喩じゃなくて、マジで飛んだんだ。知らずに見た人は多分、ショック死しちゃいますな。

「ま、まぁそれはいいとしてだ。周りの態度も、180度変わったでしょ?」
「にゅむ。殆どの人が『呼び捨てにして』ってお願いしても様付けするよーになって、王様(おーさま)とかに接するよーな感じになったよ」

 その台詞を彼女は、寂しそうに紡いだ。
 特別扱いでこんな風になるのは、そう。心が綺麗な証だ。

「英雄(えーゆー)はシンボルのよーな存在で、あっちの日本だと憧れの的なのー。けどけど、なれてすっごく嬉しくはないんだよぉ」
「そういう態度は、結構キツイもんね。でも『殆ど』ってことは、変わらなかった人間もいるんでしょ?」

 俺は左横にいる、ぐっすり眠っている勇者をチラッと見た。

「にゅむっ! フュルちゃんたちは、自分にも力が宿る前から同じだったよ。手ぶらでお城に遊びにきてくれて、いつも通(どー)り仲良くしてくれたのー」
「キミは昔、銭には恵まれなかったが、人には恵まれたんだな。わかってると思うけど、その友達を大切にしなよ?」

 力や権力を手に入れた時、媚びない人間は信用できる。こういう人は絶対にお金じゃ買えない、ある意味世界で一番手に入りにくい宝物だ。
 って、俺はなに真面目に語ってるんだろう。アホみたいにキレちゃった直後とは思えないな。

「にゅむむっ、大事に大事にするよー! もちろんゆーせー君もねっ」
「……アナタ、ますます優星を好きになってますなぁ。俺のどこが、そんなに気に入ったんですか?」
「えっとねええっとね。写真を見て感じた以上(いじょー)に優しいトコロと、どんな時も『普通の人』として見てくれてるトコロだよーっ」

 レミアは、キュッと俺の腕に抱き付いた。
 ふむ……。普通の人、か。

「さっきもお伝えしたけど、崇めるってゆーのかな? 殆どの人が、神様にするよーに接してくれるの」

 英雄は、シンボル的存在なんだ。どうしてもそうなる。

「けどそれってなんだか、同じ人間さんなのに同じじゃないみたいでね。時々は、魔王(まおー)さんの力が宿った人間なんだけどなぁ、って思うの。そーゆーふーにされると、とっても悲しーの……」
「…………そっか。そりゃそうだよな」

 自身が望むことを、相手がやってくれない。力を全ては手放せないから、一生やってくれない。これはきっと、想像してる以上に辛いはずだ。

「しかし、レミアちゃんよ。悲しいと言ってるが、世の中には上には上があるんだぞ?」

 ショボンとなる魔王様を、俺は鼻で笑ってやった。

「にゅむ? ゆーせー君?」
「母方の婆ちゃんなんて、俺を曾孫製造機と思ってやがる。こっちは、身内にすら人と思われていないんだぞ!」

 後継者問題はホントに重要なのだけど、それでもあのババアは許せない。今年の正月に帰省した時なんて結婚の話がまとまってて、大変だったんですよ(お相手は、近くに住んでる山本さんのお孫さん※ほぼ面識なし。その人も俺も全く知らないまま話が進んでて、勝手に式場まで押さえられており2人で焦りました)。

「アナタは、近しい者には人間と思われてるからいいよなぁ。俺からしてみたら、それは羨ましいぞ。ホント羨ましい」
「にゅむぅぅ…………にゅむむむぅっ。やっぱりゆーせー君は優しーね」
「はぁ? これのどこに優しさがある」
「それって、あたしを元気づけてくれてるんだよね? ちょっと抜けてるって言われる自分でも、これはわかるよー」

 悪い、レミアちゃん。キミの抜け具合は、『ちょっと』どころじゃない。

「バーカ、今のに他意はないっての。ちゅーかいつまでもすっとぼけた発言してないで、とっとと休め。俺も早く寝たいんですよ」
「……にゅむっ。おやすみなさい」

 彼女は締めに我が腕に頬ずりをして、静かに両目を瞑った。

「にゅむ…………にゅむむ…………にゅむぅ…………。すー、すー、すー、すー」

 徹夜も手伝い、レミアは瞬く間にスリープ状態となる。
 あのままだと、こっ恥ずかしかったですからね。睡魔さんに感謝感謝雨感泣だ。

「…………さってと。この子達が目覚めるまで、警戒するとしますか」

 今現在の優星は、警備係。気持ちよさそうに眠っている2人の頭を撫で、気を引き締めたのだった。
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登場人物紹介

色紙優星 16歳の少年


高知県生まれの主人公。

リリウという神様の聞き間違えで魔王使いになってしまい、おまけに『究極奥義』と呼ばれる力を何個も持ってしまった高校生。優しく他人想いなのだが、彼はとあるセンスが全くないのであった……。

黒真レミア 16歳の少女


魔王、でありながら伝説の勇者の能力を持つ。冷徹でクールな容姿と声音を持つ美少女だが、性格はほわほわでお子ちゃま。『にゅむ』という独特な言葉を多用し、時にはにゅむのみで会話を行おうとする。例「にゅむーむ。にゅむ。にゅむりん」。

なお愛用の武器である聖剣は魔王の天敵であるため、使うと痺れる。

金堂フュル 16歳の少女


伝説の勇者、でありながら伝説の魔法使いの能力を持つ。元気一杯の猫っぽい女の子で、高知県の英雄・坂本竜馬の大ファン。そのせいで『ぜよ』と中途半端に覚えた土佐弁を使い、主人公のことは『師匠』、仲間のことは名前のあとに『先生』とつけて呼ぶ(例えばレミアの場合はレミア先生)。

なかなかにおバカな女の子。

虹橋シズナ 17歳の少女


伝説の魔法使い、でありながら魔王の能力を持つ。大和撫子然とした容姿を持つ美少女であり、主人公の義理の従妹。

重度の怒られ好き。

とにかく変で厄介で面倒くさい人。

茶操ユニ 18歳の少女


伝説のドールマスター、でありながら伝説のプリーストの能力を持つ。キグルミ族という一族の人間で、閉園したテーマパークのキャラクター・二足歩行ウサギの着ぐるみを着ている。口癖は、ミョン。

実はお笑いにうるさく、親戚は某有名人。

プリースト神 年齢不明


茶操ユニが持つプリーストの杖に宿る、プリーストの神様。

実は……。

橙式エイリ 14歳の少女


伝説のモンスターテイマー、でありながら伝説の召喚士の能力を持つ。所謂スケバン然とした容姿と声を持つが、グループ最年少の中学生でみんなの妹的存在。でもレミアやフュルよりずっとまともで、ヤツらの方が妹的存在な気がする。

野菜が大好きで、とても詳しい。

タンザ・クー 年齢不明


橙式エイリの召喚獣で、俳句世界(はいくわーるど)の王女。

タンザが姓で、クーが名。

二万年後に、地球の傍に誕生する世界からやって来た。


色紙育月 16歳の少女


高知県大豊町在住の、優星の従妹。中学卒業と同時に本格的にピーマンの生産を始め、今ではテレビの取材を受けるほどになっている。


薄幸の美少女然とした容姿と、従兄想いの優しい性格が自慢の従妹です! by色紙優星

謎の声 年齢不明


優星にだけ聞こえる、不思議な声。

なぜか正体を明かそうとしない。

リリウ 神様


願いを聞き間違えて、優星を魔王使いにしてしまった神様。

神様の世界で流行しているゲームに夢中で、神様のお仕事はほとんどしない。

とってもダメな、神様(?)な神様。

麗平活美 16歳の少女


ストロベリーブロンドのドリルヘアーが特徴の、優星のクラスメイト。

お嬢様然とした容姿で気品があるように見えるが、非常に活発。実は……。

空霧雲海 16歳の少年


頼れる兄貴系の容姿と性格を持つ優星の同級生であり、悪友であり、重度のオタク。

作中に登場する名曲(迷曲)を作った人。

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