第4話(8)

エピソード文字数 2,993文字

《お茶の間の皆様、チャンネルは608にしてるかNA~? 準々決勝のお時間となりましたZYE!》

 レミアが炭酸を飲んでいる時に咽てフュルの顔に噴き出し、それによってフュルは飲んでいた緑茶をシズナに噴射。これを浴びたシズナがコーラを飲んで俺の顔面にぶっかけ、無理やり連鎖させる。
 そんなノリ重視の腹立つ出来事を経て、俺達は草原フィールドにやって来た。

『なあ優星。今回も、相手が棄権したらいいよな』

 そうだね、謎の声。と話していたら、ザンネン。目の前に、全身タイツ&サングラスの男が5人登場した。

《皆様っ、準々決勝は成立するもようですYO。……しかし、どういう事だBO?》

 上空にいる舌村ベロリンガル八世が、首を捻る――ああ再度訂正で、首を捻ったのはベロリンガル七世でした。今後はもう、世は省こう。

「にゅむー? どしたんですかー?」
《資料には、このチームは然芯(ぜんしん)デニールさん一人となっているんですYO。受け付けのスタッフと、前の試合の担当者が表記を誤ったのきゃNA……?》

 作戦を練らさないよう選手は次の対戦チームを秘密にされているのだが、今回は審判であるベロリンガルも詳しく知らないらしい。そのため彼は携帯電話を取り出し、どこかに確認をし始めた。

《もしもし、舌村でSU。これはどうなって――》
「司会者よ! 拙者が説明してやろう!」

 真ん中の全身タイツさんが、それはもう偉そうにふんぞり返った。
 おいアンタ。その気があるんなら、電話をかける前に言ってやれよ。

「ふむん。我がチームは、拙者独りで合っておる」
《情報は、正しかったんですKA。ではなぜ、4人増えてるのかNA?》
「ここまで聞いて分からぬのか! これは、拙者が分身をしておるのだ!!

 腹の底から声を出して憤慨するデニールさん。しかしアナタね、聞いて分からないから尋ねてるんだよ。

「拙者は、友達がいな――ゴホム、孤高の忍び。実体がある分身がいれば、寂しくは――仲間などいらぬのだ!」

 そっかー。組んでくれる人、いなかったのかー。
 あの方って、常に上から目線だもんなぁ。それは頷けます。

《こ、これは失礼しましTA! そ、それでは幕開(まくかい)DA!》

 扱いに困ったベロリンガルは、ビシッと挙手。早々にゴングを鳴らした。

「ぐほっぐほっぐほ。魔王使いチームとやら、拙者に攻撃は当たらんぞ?」

 レミア達が武器を出していると、デニールさん(本物)が高笑いをした。
 ヤダ。ぐほっぐほって、気色悪い。

「? ワシらの攻撃が、当たらん? どうしてそう言い切れるが?」
「ぐぽっぐぽっぐぽ。それは、拙者がタイツフェチだからだ!」

 は? えっ? タイツフェチだから?

「仮にだ。お主らが仮に、タイツを着用していたとしてだ」

 おったまげていたら、ヤツがなんか言い出した。それにしてもこの仮定、なかなかに酷いな。

「そうだった場合。タイツを触られたら、嫌だろう?」
「や、ですー。それって、脚をサワサワされちゃうもん」
「そうだ! だがしかし拙者は、特に女人が着用中のタイツが好きだ!」

 全身タイツ男は、空に向かって吠える。
 はーい。良い子は、ヘッドホンをつけて音楽を聴いててねー。

「拙者は柔らかい太腿を包み、ピタッと張ったタイツを触りたい! ところが嫌という事は、触ると訴えられてしまう!」
《『「「「「…………」」」」』》
「昨今は、女尊男卑! 女性が非常に強く、そういう裁判では男性が敗れてしまう……!」

 こらバカ、女尊も男卑も関係ねーよ。そいつは、男尊女卑であっても有罪に値する行為だ。

「そこでっ、そこで拙者は考えた! どうすれば、タイツに覆われている女人の太腿をサスサス出来るのかを!」
《彼女を作ればサスサスさせてもらえるZE! 作っちゃいなYOっ》

 なに言ってんだアイツ!? それだけのために作っちゃいかんだろ!

「否っ! 拙者は、多くの女性を触りたいのだ!」

 コイツもなに言ってんだ!? いい加減にしないと、視聴者からの抗議が殺到するぞっ。

「だから拙者は熟考し、ついに編み出したのだ! 多くの女人の太腿を、訴えられずに触る手立てをな!」
《興味がある――後学のために聞いておくYO。レッツ教えてくRE!》

 ベロリンガル、言い直しても下心バレバレ。さては後学が、後に役立つ知識だと知らないな?

「ぐぺっぐぺっぐぺ。よーく見ていろよ?」
「はいだHOっ。どうするんDAっ?」
「それは、だなっ。こうするのだ!!
「きゃあっ!?

 デニールさんがニタっと笑った、刹那だ。シズナが悲鳴を上げた。

「? どったの?」
「い、今……。誰かに、太腿を撫で回されたわ……」

 彼女は赤面してワンピースの裾を引っ張り、スラリとした脚を隠す。
 これって。もしかしなくても……。

「デニールさん。犯人はてめぇだな?」
「ご名答。拙者がやったのだ!」

 彼は腰に手を当て、盛大に胸を張る。
 いや、それ……。自慢できないから……。

「ま、まー、ソコはいーや。んでデニールさん、アンタは何をしたの?」
「触っている姿を見られなければ、罪に問われないからな。拙者は英雄さえも視認できない、光速を超える『超光速』で動ける技を習得したのだ!」
《ちぇっ……超光速KA。そんなの、ないでKIー》

 ベロリンガルよ。そのツッコミはアウトだぞ。

「今し方は手始めに、自前のタイツをあてがった太腿を手で三回、二の腕に挟み込んで四回、右頬で六回サスサスしたのだ! すべすべでふわふわだったぞでへへへへっ」
「にゅむー!? ゆーせー君っ、あの人怖いよーっ!」
「師匠、鳥肌が立つぜよ!! 戦慄するぜよ!!

 レミアとフュルが俺の背後に隠れ、ガタガタ震える。
 この世で最も恐ろしいのは、『魔王』ではなく『変態』だ――。そう、しみじみ思いましたね。

「そこの女人、拙者がタイツをあげよう。これを穿いて拙者好みになってくれ」

 デニールさんはどこからともなく黒タイツを取り出し、気が付くとシズナの手に載っていた。
 え、英雄にすら察されないなんて。この変態、できる……っ。

「さあ、それを穿いてくれ! なんなら、はぁはぁ。拙者が、はぁはぁ。穿かせてあげようか……!?
《『「「「ひいいいい!」」」』》

 たまらずベロリンガル、俺、謎の声、レミア、フュルが戦慄く。
 タイツを穿かせるだと!? そんな提案初めて耳にしたぞ!!

「靴を脱ぎ、少し脚を開いて座ってくれていたら穿かせられる……! どっち? どっちにする!?
「にゅむぅぅぅぅぅっ、シズナちゃん逃げてーっ! ギブアップしたら強制的(きょーせーてき)に転送(てんそー)されるよっ!」
「シズナ先生、あいつは黒船並みに恐ろしいき!! はよう逃げてや――先生?」

 フュルの疑問符が聞こえたので首を巡らせると、ぁ。シズナは淑やかに微笑んでいた。

「ぬおっ、そなたも乗り気なのだな! 触られ、もしくは穿かされ好きだったのか!?

 デニールさん、それはどちらもハズレだ。こういう時に女の子が笑うのは……


「死、あるのみ」


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登場人物紹介

黒真レミア 16歳の少女


魔王、でありながら伝説の勇者の能力を持つ。冷徹でクールな容姿と声音を持つ美少女だが、性格はほわほわでお子ちゃま。『にゅむ』という独特な言葉を多用し、時にはにゅむのみで会話を行おうとする。例「にゅむーむ。にゅむ。にゅむりん」。

なお愛用の武器である聖剣は魔王の天敵であるため、使うと痺れる。

金堂フュル 16歳の少女


伝説の勇者、でありながら伝説の魔法使いの能力を持つ。元気一杯の猫っぽい女の子で、高知県の英雄・坂本竜馬の大ファン。そのせいで『ぜよ』と中途半端に覚えた土佐弁を使い、主人公のことは『師匠』、仲間のことは名前のあとに『先生』とつけて呼ぶ(例えばレミアの場合はレミア先生)。

なかなかにおバカな女の子。

虹橋シズナ 17歳の少女


伝説の魔法使い、でありながら魔王の能力を持つ。大和撫子然とした容姿を持つ美少女であり、主人公の義理の従妹。

重度の怒られ好き。

とにかく変で厄介で面倒くさい人。

茶操ユニ 18歳の少女


伝説のドールマスター、でありながら伝説のプリーストの力を持つ。キグルミ族という一族の人間で、閉園したテーマパークのキャラクター・二足歩行ウサギの着ぐるみを着ている。口癖は、ミョン。

実はお笑いにうるさく、親戚は某有名人。

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