第48話

文字数 638文字

 私たちは喧嘩をしてもすぐに仲直りをして、いままで過ごしてきた。それはきっとこれからも変わらないはず。

「真琴、帰ろ?」

 笑いが治まったあと、いつもと変わらない様子でそういった陸に、頷いた。電車を待っている間も、駅からでて自宅まで送ってくれている間も、陸は今までと変わらない調子で話してくれていた。さっきまで怖いくらい真面目な顔をして、私を見つめていたのが、嘘のように。

 微かな違和感と、それを上回る安心感。私はいつもよりおしゃべりになっていたかもしれない。ありがとう、またね。そういつもどおり声をかけると、陸は少しだけ目を細めて私を見た。

「あのさ」

「うん」

 言葉を選ぶように、ほんの少し息をとめるような間合い。そのあと陸はゆっくり口を開いた。

「さっきはごめん。真琴を混乱させて。さっきいったこと、気にしないで。今までどおりだから、……うん」

 昔と同じ優しい笑顔。だけどどうしてだろう。泣きそうな顔をした昔の陸を思い出させた。何も言えなくて。そのままフリーズしている私の頭をポン、と軽く叩いて、陸は行ってしまった。歩き出した陸の背中を見ながら、なにか胸の中がギュッといたんで、泣きたくなるような気分になってしまう。

「真琴、おかえりー」

 いきなりドアが開いて、お母さんがいつもの明るい笑顔で、私を迎えた。やっぱり素直に、その笑顔を見ることができない。視線を落としてボソリと呟く。

「……ただいま」

「陸くんに送ってもらったんでしょ。いいなあ。幼なじみの王子様」

「別に、よくないよ……」
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