輪廻のはてに

文字数 549文字


 まるで、それは宇宙を育む子守唄。

 ワレスは知った。
 空の王とはなんだったのか。
 それはホーリームーンの言う寄生虫などではない。種子だ。外なる宇宙から来た、新たな命をつむぐもの。

「咲きたいか? 空の王よ」

 問いかければ、

と答える。

「では、咲かせてやろう。おまえと、あの人は同じ。生まれることをゆるされなかったもの」

 ワレスは女神の残骸をかき集め、空の王のもとへ運んだ。
 影にしかすぎない嘆きの種子は、ワレスの愛しい人を養分に、幻の茎を伸ばし、葉をしげらせる。からになった女神の器へ、深く、深く、根をはびこらせ。

「咲け! 空の王。おまえは彼女となり、彼女はおまえとなる。今こそ、哀れな女神を美しく咲かせるがいい!」

 花になりたかった人と、開花を願った種子の夢がとけあう。

 三千世界を覆いつくす巨大な花が咲き誇り、かぐわしい香りに宇宙は満ちた。

 彼女は花になった。
 この世でもっとも麗しい花。
 彼女の望んだ真の夢。

 幻の花が消えたとき、そこには、レリスが立っていた。
 言葉もなく、二人は抱きあった。涙は、けれど、あたたかい。

 空の王の歌が、まだどこかで聴こえている。
 長い輪廻のはてに結ばれる二人を、祝福するように。
 遠く、はるかで……。





『墜落のシリウス〜輪廻のはてに、死をこえる愛の物語〜』完
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