ヒツジが第4章の練習問題をやってみるページ
文字数 1,970文字
課題1:単語をくりかえしてみよう
300字の文章を書き、その中で同じ名詞や動詞や形容詞をくりかえしてみましょう。少なくとも3回。
(名詞・動詞・形容詞でない「の」「から」などの語(助詞)はカウントしません。)
(名詞・動詞・形容詞であっても「だった」「言った」「した」などの目立たない語はカウントしません。)
700~2000字の短い文章を書いてみましょう。その中で、まず何か台詞や出来事があって、その後、その台詞や出来事がくりかえされる(うっすらとでも、はっきりとでも)、という形にしてください。
できればそのくりかえしは、文脈が違ったり、人物が違ったり、規模が違ったりするようにしてください。
これだけで完結したお話にしたかったらそうしていいし、お話の一部として書いてもかまいません。
いままでに書いた小説やエッセイの中で、この練習問題の解答として使える部分があったら、それを提出してもいいっていうルールにしちゃっていいでしょうか? そのままでも、ちょっと手を入れても。
ル=グウィンさんは「だめ」って仰るかもしれないけど、ここはアマビエルールってことで。
読者さまも、お手持ちの原稿を見直して使ってみてもいいと思う。ぜったい練習になると思います。
ミミュラの小説『レディ・マクベス・ノート』から。
暴虐な国王ダンカンに、妻を夜伽にさし出せと言われて、武将マクベタッドが「話しに行ってくる」と寝室を出てダンカンの泊まる客室へ向かうシーンです。
マクベタッドの妻、グロッホの視点から書いています。
フウ。フクロウは泣きつづけていました。フウ。待つのは苦手。一歩も出るなと言われたけれど、耐えられなくて扉を開けて、立って待っていました。闇。長い廊下、壁沿いに小さな灯り。フウ。あなたはナイフを持っていかなかった。本当に話をするつもりだった。曲がり角に巨大な影がのび、それがあなたの影だとわかるまで、わたしはどのくらい立って待っていたのでしょう。歩くあとに、ぽたり、ぽたりと、血。ダンカンの剣。ダンカンの血。
「グロッホ」あの人は淡々と言いました。「殺してきた」
「待つ」が3回。(「待つ」「待っていました」「待っていたのでしょう」)
フクロウの「フウ」という鳴き声が3回。
「ダンカン」という名前が3回。この場にはいない人です。
3回は行かなくて2回だけど、「一歩も出るな」「立って待っていた」「影」「血」「ぽたり」もくりかえしています。
そして、最後に1回だけ「殺してきた」。
ここに! この一言に集中してほしいので!
そこまでいろいろ同じ言葉を重ねました。
課題の2はどうしよう。短い中で、出来事をくりかえすのは難しいなー。
うーん。
◇第四十八段 歓送会
「昔、自分の歓送会に遅刻したやつがいてさ」
と業平くんが言う。あはは。
「大汗かいて会場にとびこんで、お礼のスピーチを始めたら。
隣の会場だったんだって」
あははは!
業平くん本人じゃないの?
「ちがうちがう」
と私の顔色を見て言う。
「ほんとぉ?」
「ちがう。こんなに面白い話、他人の手柄にしない」
あはははは!
「自分のじいちゃんの告別式に遅刻したやつもいてさ」
以下略。
「ちがうちがう」と「こんなに面白い話」のくりかえしだ。
怪しい。
◇第四十九段 お兄ちゃん
「妹が、なんか最近、きれいになってきて」
業平くんがしみじみ言う。
「そのうちどこかの男に奪られちゃうんだなーと思うと、ムラムラする」
「あっ」いそいで言う。
「ムカムカする。じゃない、ハラハラする」
怪しい。
二度めの「怪しい」のが、怪しさのレベルがアップしちゃってる、わけです。
って自分で解説するのはずかしいなー。
もともと、このくらいのマイクロ短編を重ねていって長編にする、というつくりで……
あれとこれ、それとあれで「くりかえし」になってるの、読者さま気づいてくれるかな? と楽しみにしているのです。
短い文章の中だと「くりかえし」なんだけど、
長編の全体に仕掛けると、
「伏線」になるわけですね!