第4話(7)

エピソード文字数 2,436文字

「「「「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」」」

 自分も、敵も。この場にいる全員が我が目を疑った。
 なんと俺の足元に、


 短冊に手足がついた生き物がいたのだ。


「な、仲間、だと……! オマエっ、どうしてココにいるんだ!?
「得意げに機械の説明をしてた時に、ボウヤの背中に掻き付いたのさ。小さいから目に入らなかったんだねぇ」

 新しい仲間の、タンザ・クー。彼女はアイツらを真似てせせら笑い、俺に向けて片目を瞑る。
 そう、だったんだ。あの時に、同じ座標に入ってくれてたんだ。

「……ちっ、こいつは予想外だな……。しかし、さして問題ではない」
「そんな小型の生物に、負けるはずがねー。現にコイツの力は、魔王達の1兆分の1ほどしか感じられないからな」

 左の端にいる男が、ガラケー似の装置に目を落としてほくそ笑む。

「この機械はあらゆる形で強さを隠していても、正確に測定できる。地球人、ソイツは本当に1兆分の1しかないんだよ」

 1兆分の1ってことは、普通の戦士とほぼ同じ。この力量では、ここにいる全員を倒せない……。

「なーに、勝負は強さが全てじゃない。強いから勝つ、弱いから負ける、とは限らないのさ」
「はっ! そりゃ弱者の強がりだっ」

 右端の男が、プッと噴き出す。

「賢い者と強い者が勝ち、愚かな者と弱い者は負ける。この世はそうなってんだよ!」
「そうそうっ。短冊生物、それは本気で言ってんのかぁ?」
「………………今のは、戯れさ。あんなこと思っちゃいないよ」

 まるで、鏡を見ているかのよう。今度はクーが、同じようにプッと噴き出した。

「なあ、アンタ達。妙だとは思わなかったのかい?」
「ぁぁん? なにがだよ」
「ずっと傍にいたアタイも、アンタらが異世界人だと――力があると、気付けなかった。感知センサーが狂うのは、英雄クラスだけだったはずなんだがねぇ」
「「「「「「「「「「「「!」」」」」」」」」」」」

 敵は、硬直。余裕が鳴りを潜めた。

「まさか、オマエは………………いやっ、そんなはずはない! この装置は、魔法で隠していても測定できるんだ!」
「このデータに誤りはないっ! オマエは出任せを――」
「はぁ。アンタらって、本当に賢いのかい? 『隠した力を測定できる』、だけでは不十分なんだよっ!」

 クーは右足で、地面をダンと蹴る。すると彼女の身体が灰色に輝き――

「これが、アタイの真の姿。この姿は異世界じゃ目立っちまうから、普段はああやって『力がない存在』になっていたのさ!」

 その灰色の輝きが消えると、そこにいたのは人。スタイルの良い肉体をワインレッドのドレスで包み込み、頭には第一王女の証である王冠を装着。両足は服と同色のハイヒールで固め、全身を高貴かつ威厳があるオーラが纏う美女? だった。

『おい、優星。なんで、「美女?」になってるんだ?』

 えっ、ハテナになってる理由? それはね……。

『それは?』


 首から上が、短冊になってるからだよ!


『ぇ……』

 端的に言うとね、さっきまでのクー(手足を除く)に人間の首から下がくっついてるの。だから…………人間の顔がないんで、俺には判断できないんだよね……。

「な、なんなんだよアイツは……っ。あの短冊はなんなんだよ……っっ」
「ば、化け物だ……! 化け物が、いる……」

 敵達の顔が青ざめ、全員たまらず後ずさる。
 首から上が、短冊だもんなぁ。そうなるのは必然です。

「ば、ばけもの……っ。ばけものだ……っっっっ」
「どいつもこいつも、バケモノバケモノ。まったく失礼な輩だねっ」

 怯えの対象ことクーは口を尖らせ、左手に短冊、右手に筆を出して『葉月』と書く。
 ? これは一体なんだ?

「アタイを化け物呼ばわりした、お仕置きだよ。『俳句革命(はいくレボリューション)』!」

 彼女が短冊を真上に放り投げるとソレが消え、っっっ!? 短冊と引き替えに、大量の葉っぱと100メートルはある月が現れた。

「めっちゃデカいし、1万枚以上はありそうだな……。クー、どうなってるの?」
「『俳句世界』の王族は皆、季語に含まれている漢字を具現化して操れるのさ。……アタイの月よ、アイツらを押し潰しな!」

 第一王女がそう命じると、巨大なお月様がヤツらへと突撃。月は時速50メートルほどの速さで突き進み、

「「「「「「「「「「ふご!」」」」」」」」」」

 10体を、圧殺。その後は部屋の床をド派手に削り取り、役目を終えたらスゥッと消えた。

「「よっ、よくも仲間を! ゆるさねぇぞっ!!」」
「自分らが攻撃された時だけ怒るんじゃないよ! はっ!!

 横っ飛びで回避した2匹には大量の木の葉が飛び、頭上から降り注いでこちらも圧死。なんとまぁ、ほんの十数秒で決着がついてしまった。

「……人ってのは、見掛けとデータだけじゃ分からないんだよ。もし生まれ変わったら、これを胸に刻んで戦いな」

 クーは『結』と書いた短冊をヤツらがいたエリアに放り投げ、颯爽とこちらに向き直る。
 うわぁ。締め方、超カッコいい。

「はいこれでお仕舞で、今回は危なかったねボウヤ。最初の襲撃がなかったら、きっと間に合ってなかったよ」
「うん、その通りだね。しっかしなぜ、一人目はあそこで襲ってきたんだろ?」

 こちらとしては大助かりだが、解せない。こんな技術があるなら、いきなり使えばよかったよねぇ?

「ああ、それはあれが原因だね。左斜め前を見てご覧よ」
「左? なにがある――うお!? 空間に穴が開いてる!!

 フュルが風の刃で切ってしまった時みたいな、大きな穴がある。それでね、補足をすると………………。

『ん? 捕捉をすると、なんなんだ?』

 あのね、謎の声。大きな穴さんはね?


 辺りの空間を、吸い込んでいってるんだ……。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

色紙優星 16歳の少年


高知県生まれの主人公。

リリウという神様の聞き間違えで魔王使いになってしまい、おまけに『究極奥義』と呼ばれる力を何個も持ってしまった高校生。優しく他人想いなのだが、彼はとあるセンスが全くないのであった……。

黒真レミア 16歳の少女


魔王、でありながら伝説の勇者の能力を持つ。冷徹でクールな容姿と声音を持つ美少女だが、性格はほわほわでお子ちゃま。『にゅむ』という独特な言葉を多用し、時にはにゅむのみで会話を行おうとする。例「にゅむーむ。にゅむ。にゅむりん」。

なお愛用の武器である聖剣は魔王の天敵であるため、使うと痺れる。

金堂フュル 16歳の少女


伝説の勇者、でありながら伝説の魔法使いの能力を持つ。元気一杯の猫っぽい女の子で、高知県の英雄・坂本竜馬の大ファン。そのせいで『ぜよ』と中途半端に覚えた土佐弁を使い、主人公のことは『師匠』、仲間のことは名前のあとに『先生』とつけて呼ぶ(例えばレミアの場合はレミア先生)。

なかなかにおバカな女の子。

虹橋シズナ 17歳の少女


伝説の魔法使い、でありながら魔王の能力を持つ。大和撫子然とした容姿を持つ美少女であり、主人公の義理の従妹。

重度の怒られ好き。

とにかく変で厄介で面倒くさい人。

茶操ユニ 18歳の少女


伝説のドールマスター、でありながら伝説のプリーストの能力を持つ。キグルミ族という一族の人間で、閉園したテーマパークのキャラクター・二足歩行ウサギの着ぐるみを着ている。口癖は、ミョン。

実はお笑いにうるさく、親戚は某有名人。

プリースト神 年齢不明


茶操ユニが持つプリーストの杖に宿る、プリーストの神様。

実は……。

橙式エイリ 14歳の少女


伝説のモンスターテイマー、でありながら伝説の召喚士の能力を持つ。所謂スケバン然とした容姿と声を持つが、グループ最年少の中学生でみんなの妹的存在。でもレミアやフュルよりずっとまともで、ヤツらの方が妹的存在な気がする。

野菜が大好きで、とても詳しい。

タンザ・クー 年齢不明


橙式エイリの召喚獣で、俳句世界(はいくわーるど)の王女。

タンザが姓で、クーが名。

二万年後に、地球の傍に誕生する世界からやって来た。


色紙育月 16歳の少女


高知県大豊町在住の、優星の従妹。中学卒業と同時に本格的にピーマンの生産を始め、今ではテレビの取材を受けるほどになっている。


薄幸の美少女然とした容姿と、従兄想いの優しい性格が自慢の従妹です! by色紙優星

謎の声 年齢不明


優星にだけ聞こえる、不思議な声。

なぜか正体を明かそうとしない。

リリウ 神様


願いを聞き間違えて、優星を魔王使いにしてしまった神様。

神様の世界で流行しているゲームに夢中で、神様のお仕事はほとんどしない。

とってもダメな、神様(?)な神様。

麗平活美 16歳の少女


ストロベリーブロンドのドリルヘアーが特徴の、優星のクラスメイト。

お嬢様然とした容姿で気品があるように見えるが、非常に活発。実は……。

空霧雲海 16歳の少年


頼れる兄貴系の容姿と性格を持つ優星の同級生であり、悪友であり、重度のオタク。

作中に登場する名曲(迷曲)を作った人。

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み