#09【コラボ】番組収録に参加してみた! (6)

文字数 8,224文字

【前回までのあらすじ】
初めての番組出演は、
桐子(灰姫レラ)の想いとは裏腹に盛大な空回りで終わってしまった。
応援していた三ツ星サギリを待つ『結果』は――。

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「配信終了しましたーー!」

 ディレクターがスタジオの広さにそぐわない大きな声を上げた。
 番組がぐだぐだの終わり方で微妙な空気になっていた出演者たちは、助かったと息を吸う。まるで数百メートルの潜水でも終えたかのように安堵して「お疲れさまでした」を交わしていた――二人以外は。

「……」

 桐子は唇を引き結んでいた。心は灰姫レラのままで、スタジオの重い空気が全てのしかかってきたかのように肩が重い。

「……すみませんでした。最後まで巻き込んじゃって」

 隣のサギリさんの顔が見れないまま桐子は謝った。
 怒鳴られても罵倒されても仕方ないと思っていた桐子だけれど、返事が何も無い。

「サギリさん……?」

 意を決してサギリさんを見ると、焦点の定まらない目でスタジオの照明を見上げていた。
 茫然自失の二人を置いてきぼりにして、番組のアンケート結果が出る。

「よしっ!、95%超え来たー!」

 ヒラキさんが喜びに手を叩くと、心配していたのだろうスタッフさんたちの顔も晴れる。

「いやー、お疲れさん。最初はちょっとどうなるかと思ったけど、終わってみればアンケート結果もこれまでで一番いいし、面白い回になったよ。これもスタッフと、そして出演してくれたVチューバーの皆さんのおかげ!」

 席を立ったヒラキさんは歩きながら出演者を労っていく。

「クシナちゃん、今回もたくさん助けられちゃったよ。さすがの貫禄!」
「ヒラキさんの司会があってこそです。またお仕事でご一緒しましょう」
 微笑で答えるクシナさん。

「ナイトテールちゃんも良かったよ! 会話の切り返しの上手さが、番組出演が初めてとは思えなかった」
「2時間あっという間だったねー。楽しかった」
 いい汗かいたと額を拭う夜川さん。

 順々にヒラキさんが声をかけていき、最後に桐子の順番が巡ってくる。

「いやー、灰姫レラちゃん、いっぱい弄っちゃってごめんね。嫌じゃなかった?」
「だ、大丈夫です」
「そっか、なら良かった。キミが最後まで折れなかったお陰で、俺も全力で笑いにもっていけたよ。今日一番の功労者は間違いなくキミだ」

 差し出されたヒラキさんの手を、桐子は申し訳無さを飲み込んで握った。

「あ、ディレクター! 今日の――」

 するっと手を離したヒラキさんは、軽い足取りでスタッフのところへ向かう。そうして、目の前が開けると、桐子はこちらへ向けられる視線に気づいた。
 名前しか知らない他事務所の娘たちが三人集まって、チラチラと桐子の事を気にしている。挨拶したほうがいいのかと桐子が視線を合わせようとすると、三人は薄っすらと笑い口元を隠した。

(あ……)

 嫌われた。
 中学の頃、イジメが始まった時の記憶が一瞬フラッシュバックする。クラスの中心だった女子が桐子に見せた表情と仕草にそっくりな気がした。
 脳から溢れた嫌な記憶が胸に落ちてくる前に、横からやってきた人影が桐子に向けられていた視線を遮った。

「お疲れ~~~」
「お疲れ様、灰姫レラちゃん」

 夜川さんとクシナさんだ。夜川さんはコリをほぐすように大げさに肩を回していて、クシナさんは番組中とはぜんぜん違う穏やかな笑みを浮かべていた。

「は、はい! お疲れさまです!」

 ハッとしてお辞儀をしようとする桐子を、クシナさんがそれは必要ないとやんわりと手で制止する。

「レラちゃん、張り切ってたわね。番組中も積極的でちょっと意外。もっと大人しい子かと思ってた」
「すみません! ご迷惑をおかけして……」

 怒られるのかと身構える桐子に、クシナさんはそうじゃないと首を振る。

「迷惑なんて思ってない。むしろ逆。失敗を恐れて最初は様子見されると番組の立ち上がりが遅くなるの。だから、レラちゃんが最初から全力で真正面から来てくれて良かった」

 声を大きくしたクシナさんの背後で、さっきまで桐子を見ていた三人がバツが悪そうに離れていく。一方で夜川さんは、嬉しそうに全力で頷いていた。

「うんうん、番組だってこと忘れてお腹痛くなるくらい笑っちゃったー。帰ったらもう一度アーカイブで観るね!」
「私もチェックするわ。人狼のところすっごく気になってたの。コメントもどんな反応してたのかしら」

 そう言ってクシナさんと夜川さんは番組中の出来事を思い出して笑った。
 二人が褒めてくれているのは分かった。だけど、サギリさんのために何かしたかっただけの桐子は素直に受けとれない。

「ありがとうございます……。でも、本当に空回りしてただけなんです」

 鳩尾のあたりがチクチクと痛んで、申し訳ない気持ちでいっぱいになっていた。

「空回りだとしても結果が全てよ」

 気にすることじゃないと笑うクシナさんに、夜川さんも軽く頷いた。
 そう結果だ。
 サギリさんはどうなってしまうのか。同じハイプロ所属のクシナさんなら事情を知っているはずだ。
 聞こう。そう決心した時だ。

「スタジオの撤収を始めます。控室を開けましたので、出演者の皆さんは移動して下さい」
「ピザ、お寿司、ケーキなどがあるので、時間がある人は是非食べていって下さい」

 スタッフの声が飛び、出演者と関係者の大移動が始まってしまう。

「こういうのって業界っぽいねー」

 歩きながら夜川さんがクシナさんに話しかける。

「打ち上げ代わりね。今回の出演者は未成年が多かったから、お店は避けたみたい」
「なるほどー。高い焼き肉とか食べられると思ってたからちょっと残念」

 大げさに肩を落とす夜川さんにクシナはクスッと笑う。

「このスタジオで頼むデリバリーって結構高い店になるから期待していいわよ」
「へー、そういうのてやっぱりランクとかあるの?」
「もちろん。ピザは大体どこでも同じだけど、お寿司は鮮度が命だから――」

 桐子は業界の打ち上げ事情を話している二人の後ろを歩きながら、移動する人たちに目を走らせる。
 サギリさんも社長のケンジさんの姿も見えない。
 不安にソワソワしながら控室に入ると、先に戻っていた河本くんが荷物と貴重品を揃え待っていた。

「お疲れ様」
「ありがとうございます……」

 差し出されたおしぼりを受け取った桐子は、ビニールを破らないままグニグニと握っていた。

「どうだった、初めての番組出演は?」

 心配げな声色の河本くんに、桐子は真っ直ぐに彼の目が見られない。

「……上手くできませんでした」
「そっか。でも頑張っているのはきっと皆に伝わったよ」

 いつもならスッと染み入ってくる河本くんの励ましも、防水スプレーをかけてしまったみたいに弾かれてしまう。

「ただ頑張るだけでいいのかなって……私一人が空回りしてるだけで迷惑をかけて、本当は何一ついい結果になんて繋がってないような気がして……」
「香辻さん? 何かあった?」
「すみません、変なこと言っちゃって。初めてのことばかりでちょっと……」

 慌てて誤魔化した桐子だったが、河本くんはまだ何か言いたそうに桐子を見つめている。

「そ、そうだ! お腹がへっちゃてるせいです! 河本くんも食べましょう! いっつもコンビニのパンばっかりなんだから、今日ぐらいはお寿司とかいいもの食べないと!」

 視線に耐えきれなかった桐子は早口で捲し立てると、食べ物が並んでいる奥のテーブルの方に足を踏み出す。

「待ってください社長っ!」

 サギリさんの切迫した声が、開け放たれたままの控室の扉から飛び込んできた。
 番組終わりで寛いでいた控室の空気が一転、ゲリラ豪雨でも襲ってきたかのように冷たく、重くなる。

「お願いします、少しだけ話を聞いて下さい!」

 悲痛で一方的なサギリさんの声は続く。
 控室の談笑は断ち切られ、誰も動かない。

(サギリさんが!)

 桐子は視線でクシナさんに助けを求めた。同じハイプロ所属のVチューバーで、優しいクシナさんならきっとなんとかしてくれるはずだ。
 クシナさんはすぐに桐子の視線に気づいてくれた。
 そして、彼女はゆっくりと首を横に振った。

「どうして……」

 思わず飛び出た桐子の言葉にクシナさんは一度深く目を瞑ってから、口を開いた。

「サギリも結果を受け止める時が来たの」

 変えられない摂理を諭すようなはっきりとした声だった。クシナさんは同じ事務所だから深い事情まで知っているのだろうし、Vチューバー業界に長く身をおいてきた経験もある。そのクシナさんから出た言葉だ。
 自分も受け止めないと――。
 理性に反して、桐子は控室を飛び出していた。
 後ろから小さく「香辻さん」と呼ぶ声と足音が2つ続く。河本くんと夜川さんだ。制止するような様子ではなかったけれど、心配と戸惑いが声に入り混じっていた。
 何ができるわけではないし、サギリさんにとっては絶対に余計なお節介だ。
 それでも、心の暴走が止められない。
 エレベーターホールに二人の姿があった。

「社長、少しだけでも……」

 サギリさんのすがる声を一顧だにせず、ケンジさんはちょうど到着したエレベーターに乗り込もうとしていた。

「待ってーーーーー!!」

 硬い床を靴で打ち鳴らした桐子はエレベーターとケンジさんの間に飛び込んでいった。無様に転んだようにしか見えないけれど、ラグビー選手がボールに飛びつくような気概だけは持っていた。
 その強襲をサッと避けるケンジさん。

「ふぎゃぁあ!」

 倒れた桐子はそのままエレベーターの中にゴロンと転がり込んで、壁面に激突。エレベーターが警告のブザーを鳴らした。

「香辻さん、大丈夫?!」

 慌てて駆け寄った河本くんが閉まろうとしたエレベーターの扉を全身で押さえる。その背後では追いついた夜川さんが、外側から『開く』のボタンを押していた。

「わ、私は、大丈夫ですっ」

 桐子は河本くんの手を借りて立ち上がり、エレベーターの外に出る。
 サギリさんが困惑して立ち尽くしていた。
 ケンジさんが迷惑そうに眼鏡を押し上げる。

「ふーー……」

 長めのため息をついたケンジさんは不愉快そうに眉を顰め桐子を見る。身長の高いケンジさんから完全に見下ろす形になっていて、桐子はそのまま押しつぶされてしまいそうなプレッシャーを感じてしまう。

「用件はなんだ、灰姫レラ」
「サギリさんの話を聞いてあげて下さい!」

 桐子は真っ向からケンジさんを見上げる。頭に上った血は沸騰してしまいそうだ。
 そんな熱さとは対照的にケンジさんは、冷たい目でサギリさんを一瞥するだけだった。

「もう結論を告げたはずだが?」

 背後で扉が閉まり、エレベーターは無人のまま降りていく。その音が消えないうちに、サギリさんは顔を上げた。

「もう一度だけ次のチャンスを下さい! 今日は少し調子が悪かっただけで……次はかならず!」
「次? その『次』とやらはすでに与えた。今回の番組に呼ばれたのは姫神クシナと白山タマヨの二人だけ。そこに会社の力で三ツ星サギリをねじ込んだ」

 容赦なく事実を突きつけるケンジさんを前に、サギリさんは歯を食いしばる。

「なぜ会社がこれ以上、三ツ星サギリを優先しなければならない?」
「それはっ……私も頑張ってきたから……」
「お前の後ろにも列を成しているんだぞ。同じように研鑽を積み、チャンスを待っている者達がな。それを差し置いて、すでにチャンスを無駄にした者に回す理由があるか?」

 詰め寄られたサギリさんは目に涙を浮かべて訴える。

「……でも、今日まで半年以上なんです! 苦しい時も耐えて活動してきたんです!」
「半年ではない8ヶ月、220日間だ。それだけの間、三ツ星サギリに会社は投資してきた。それで一定の結果が出ないなら、処遇を考えるのは当然だろう」
「…………っ……」

 サギリさんは青ざめた顔で唇を震わせる。何かを言おうとしているのだけれど、掠れて誰も聞き取れなかった。

「ランク下げを受け入れられないなら、別の道を――」
「今日は私のせいなんです! サギリさんは違うんです!」

 耐えられなくなった桐子は二人の間に割り込み、声を上げていた。

「香辻さん……」

 河本くんが伸ばした手を途中で止める。一歩引いている夜川さんは「マジ?」と目を見開いていた。

「次はなんだ?」

 うんざりだとケンジさんは首を振るけれど、桐子はコンマ一秒も躊躇わない。

「私の空回りにサギリさんを巻き込んじゃったんです! だから、お願いします。サギリさんのお願いを叶えて下さい!」

 身勝手に頭を下げた桐子にケンジさんは苛立たしげに爪先で床を鳴らす。

「所属ライバーの躾がなってないぞ、ヒロト」
「香辻さんは自由だよ、今もこれからも」

 やんわりと受け流す河本くんだけれど、その目は笑っていなかった。

「飼い主が教えないと言うなら、俺が教えてやろう」

 ケンジさんは瞼が捲れるのではないかと言うほど見開いた左目で、桐子を正面に捉えた。

「才能のないやつは惨めだ」
 一語一句、はっきりとしたケンジさんの声がエレベーターホールに響く。

「足掻いて、自分を慰めて、努力だと言い聞かせて人生を浪費する」
 桐子たちだけでなく、控室にいるライバーたちにも届くようなよく通る発声だ。

「軽々とハードルを越えていく才能を前にして、自分は頑張っているのに運がないだけだと現実を認めない」
 一切の仮借ない言葉だ。
 直接桐子の事を言っているわけではないはずだれど、鋭利なガラス片のように、桐子の自意識の贅肉を切り裂き、醜いハラワタを露わにしようとしていた。

「それでも、届かない天を見上げ、虚空を掴み続けたあげく、自分の足が腐って爛れていることに気づかない」
 高層ビルの屋上の縁に立っているかのように、手足の指先から冷え足元が心もとない。

「いいか、この世界の99%は、夢や希望なんて胡乱な言葉に踊らされた哀れな人間の屍の上に成り立っている」
 虫けらでも潰すように、ケンジさんは革靴の先で磨き上げられた床を鳴らす。キュッと悲鳴のような音がした。

「美辞麗句を並べる詐欺師たちのかわりに、俺が断言してやろう」
 ケンジさんは中指でメガネを押し上げる。

「凡人には光り輝く天上の星は掴めない。圧倒的な才能だけが辿り着ける神の庭に、凡人が立ち入ることなど許されていないのだよ」
 力強い言葉からは、揺るぎない信念をはっきりと感じる。社長として人の上に立つ人間の持つ覇気にあてられた。

「もし努力や根性で天才に比肩しうると言うなら、それこそが傲慢だ。特別な才能への侮辱だ」
 吐き捨てるように言ったケンジさんは、軽蔑する相手を思い出したかのように眉間に皺を寄せる。

「凡人が自分に才能があると勘違いして、張り切ったりしたら最悪だ。自分だけじゃなく周りの人間に、豚のエサにもならない幻想を感染させる。最悪のパンデミックだ。みんな仲良く地獄に道連れだ」
 奥歯を苦々しく噛み締め頬を歪ませ、ケンジさんはおもむろに手を握りしめる。

「だから俺は不幸が広がらないように、才能の無い奴には事実を突きつける」
 見つめられたサギリちゃんは怯え、舌がしびれてしまったかのように声を出せないでいた。
 その様子に小さく首を振ったケンジさんの冷たい瞳が、再び桐子を捉える。

「灰姫レラ、才能の絶対的な重要さが君は身にしみているんじゃないか?」

 見透かされた。

「動画100本あげても成果が出なかった君になら分かるはずだ」

 ケンジさんの口角が僅かに上る。
 桐子にはそれが、魂を刈り取ろうと鎌を振るう死神の笑みに見えた。

「わ、私はっ……」

 違う。
 そんな風に思ってない!
 否定の言葉だけが心の表面をつるりと滑る。

 言えない。
 だって、もう知ってしまったから。
 独りじゃないから――誰かと比べてしまう。
 無言のまま逃げた桐子の視線は河本くんに向かう。助けてと。

「ケンジ、それは0か100しか認めない極論だ。万人に通じる話じゃない」

 河本くんの反論にケンジさんは頬を歪める。

「強い人間が『普通』の側に立つと? 笑わせるな。お前は切り捨てる側の人間だ」
「違う」
「言葉で否定しようとも過去が証明しているぞ、ヒロト。これまで立ち上げたプロジェクトも才能が無いから切り捨てたんだろ。あのアオハルココロでさえ、お前は満足できなかった」
「才能なんて誰かが判断できるモノじゃない」
「その言葉こそが傲慢だ。才能は結果となって現れる。才能は人を惹きつける! 才能は金を生む! 才能は名誉をもたらす! ジョブズ、ピカソ、モーツァルト、いくらでも例を上げられるだろ。しかし逆はどうだ? 才能が無く、もがき苦しみ続けただけで、結果を残せなかった人間を誰が覚えている?」
「近くに居た人間は忘れない。僕だって、過去を忘れたわけじゃない……」

 河本くんの声のトーンが下がる。いつも穏やかな顔に見たことのない翳が差した気がした。

「いいか、ヒロト。お前には才能がある。だから、持ってない奴の事が真には理解できない」
「悪魔の証明と変わらない話じゃないか」
「事実だ。結果を見れば誰だってお前の才能を認める。凡人に、アオハルココロを生み出せるか? 十把一絡げの個人Vチューバーだった灰姫レラに世間のスポットライトを当てることが出来るか? これを才能と呼ばないでどうする?」
「……才能じゃない」

 言いづらそうに否定した河本くんが目線をわずかに下に向ける。そのちょっとした態度の変化に、ケンジさんは苛ついたように奥歯を噛みしめる。

「なら、お前が〈プレセペ会〉の出身だから否定するのか?」

 ケンジさんの口から飛び出した耳慣れない単語に、河本くんの瞳が動揺に揺れる。

「どんな形で与えられたのだとしても、才能は才能だ!」
「違う……僕は……違うんだ」

 河本くんはつぶやくように答える。遠くを見ているような目には言い知れぬ力がこもり、右の手が行き場を失ったようにズボンを掴んでいる。こんな表情して、こんな様子の河本くんを桐子は今まで一度も見たことがなかった。
 小さな鐘の音がし、エレベーターがホールに到着する。

「まあいい」

 話は終わりだとケンジさんは眼鏡のブリッジを上げる。河本くんから視線を外しサギリさんに向かって話しかける。

「才能は見えずとも、結果として現れるものだ。俺と会社が与えられるのは、その結果を出せるチャンスだけだ。分かったな、三ツ星サギリ」
「……分かりました。どうするのか考えます」

 サギリさんは下を向いたまま小さな声で答えた。
 踵を返したケンジさんは一人でエレベーターに乗り込む。その扉が閉まり切るまで、誰一人として声を発しない。

「えっと………………、とりあえず控室戻ってお寿司とケーキ食べよっか」

 重苦しい空気をどうにかしようと夜川さんだけが気を使ってくれていた。



 それから3日後、
 ハイランダープロダクション所属の三ツ星サギリが、
 自らのチャンネルで引退を発表した。

####################################

ハイプロ社長のケンジは、波乱を残し去っていった。
桐子は揺らいだ心とどう向き合うのか、
ヒロトは何を思いどう行動するのか、

次回から#10です。

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