第2話 ぱっつん少女だな - 1
文字数 2,716文字
本日、学校は半日で授業終了。
会合だったか行事の準備だったか教師の飲み会だったかなんだったか担任がなんか言っていた気もするが覚えちゃいない。まあ、実際どーでもよいのだ。こんな春ウララな午後の日に突然授業が休みになるなんて、いやっほーいとか叫びたい。
しかもうれしい事に今日はあの大人気コミック『ディバイダ・ガール』第七巻の発売日なのだ! いやっほーい!
なんとオリジナルDVD付き! みんな大好き水着回っ! しかも温泉回でもあるんだぜっ!! 謎のっ、謎の光は果たして出現するのか否かっっ!! 乞う、ご期待!
で、まあ、入学して日も浅く、まだそんなに親しくはない級友の何人かが放課後にゲーセン行こうぜーとかカラオケ行こうぜーとか誘ってくれて有難くはあったが、他の日ならば喜んで一緒に行かせて頂きたいところだが、今日ばかりは丁寧にお断りをし、一目散に書店へダッシュ! そしてコミックスばっちりゲットだぜっ!
明日も休みだし、これから家に帰ったらカップ焼きそばでも食 しながらジックリと堪能 させていただく事としましょう。ああ、それにしても謎の光の有無が気になる。
あ、ちなみにちょっとどうでも良い事だが一言。俺はいわゆる『オタク』と呼ばれている人種ではない。まあ、趣味的にはだいぶ似通ってはいるし、ごく一般的な普通に常識のある方々の目には同じに映るかもしれないが。
えっと別に『オタク』って呼ばれるのが嫌なんじゃない。本物の『オタク』の皆さんのような、日本海溝よりも深い知識や大噴火して煮えたぎる灼熱のマグマのような情熱! そのような方々の足元にも及ばないライト層だからだ。『オタク』と俺が呼ばれるのは、余りにも畏 れ多くて無理だ。
自ら名乗るとするならば『ファン』くらいが妥当なんじゃないかなと思う。
「ギャラクティカ・ウルトラ・スーパー・ダイナマイト・ディメンション・キイイイック!」
そんな訳の分からん叫び声が聞こえた気がした刹那 、後頭部に強烈な一撃を受け俺は頭から地面に激突し、そのままの勢いで数回転してごみ集積所に突っ込んだ。
ふふっ見事なキックだぜ。とか頭の中で思ったかどうかの記憶は定かではない。頭痛い。ごみ臭い。
なんか、キックとか言ってたから俺、蹴られたのか? 大事な頭部に大きな衝撃を喰らわされて、記憶喪失にでもなったらどうする? アホの子にでもなったらどうする? 封印されし記憶が蘇ったりしたらどうする? 暴力反対!
とか思いながら痛む頭を持ち上げてのろのろと周りを見回す。
目の前におかしなカッコの少女が立っている。いわゆるコスプレと言うヤツだ。うむ、嫌いではない。むしろ好物、いや大好物、いいや超好物だ!
そのおかしなカッコの少女は肩甲骨の下あたりまで有る、キューティクルがキュキュッとしている艶やかでサラサラな金髪を春風になびかせながら、オマケに頭頂部に天使の輪っかまで煌 めかせながら俺を見つめていた。
あ、アイドルが居る。それもグループではなく単品で売り出されるべきアイドルが。記憶には無い顔だが俺はそう思った。そして宇宙戦艦にでも乗っているんですか? と問 いたくなるようなおかしなカッコ。
銀色のメタリック基調に赤や黒の部分的なカラーリング。腰や腕に何やらメカっぽいパーツ。ノースリーブで胸元が開いたキラキラとしたレオタードっぽい衣装。
その衣装は、出るべき所は出っ張って、引っ込むべき所は引っ込んだ、まるでどこぞのグラドルですくわぁっ! って叫びたくなるような豊満 な姿態 を包み込んでいた。特に胸部あたりが、ぱっつんぱっつんで零 れ落ちそうである。
こんな真っ昼間の往来でいくら人通りが無いとはいえ、自分のような純真無垢 な少年に対して劣情を催 させるような姿を魅 せ付けるとは、実にけしからん! ホントにけしからんっ! もーけしからんっ、もーたまらんっ! あーたまらんっ。眼福 でございますっ。おありがとうござりまするううっ!! …………あ、違う。俺、頭、蹴られた。これは、怒る、べき。
俺は目前の少女による突然で理不尽な暴力に対して猛抗議をしようと身構えた。
俺への謝罪として少女の胸部あたりにセクハラまがいの行為をする権利を主張し、断固とした態度で要求を突きつけるつもりだ。もちろんそれは許されるべき当然の要求のはずである。無論、第二撃を警戒しつつだ。
が、俺が口を開こうとするよりも一瞬早く、少女が俺に向かってかわいい声で言葉を発した。
「どう?」
ん? 『どう?』とは何か?
『頭を蹴 ったけど、痛いですか?』か? ああ痛いよ。
それとも『このコスプレどう思いますか?』か? ああ抜群 に似合ってるよ。
んー、ちょっと意味不明。もしや頭部強打のせいで俺は言語が理解出来なくなってしまったのか? 怖い……。
などと脳内がぐーるぐる回りながらも考えていると、金ぱっつんで胸ぱっつんなこの少女はちょい厚めなスマホっぽい装置を俺に向けながら呟 いた。
「おかしいなー。今のキックで解除出来たはずなのに」
解除? 解除って何?
「『ギャラクティカ』と『ウルトラ』と『スーパー』と『ダイナマイト』それに『ディメンション』だから種類も順番も合っていてパワーも十分に出ていたはず」
ああ、なるほど。蹴 られる直前に聞こえたあの訳の分からん叫びか。組み合わせで効果や威力が変えられるとかって感じかな。って何言ってるのか分かんねーよーーっ!
「あの……」
と、ぱっつん少女が申し訳なさそうな顔で声を掛けて来た。うん、かわいい。
もうそんなに痛くもないし、こんな美少女に声を掛けられるなんて今後ないかもしれないし、触れ合うのなんてもっての外 かもしれない。ただし足と頭の触れ合いだけれどもね。
もう許してあげるよ。何か鬱憤 でも溜 まっていて感情が爆発しちゃったんだろう。人間、そんな時もあるさ。だって人間だもの。
「あの、もう一度キックしてもいいですか?」
「なんでやあああああーーーーーっっ!!」
俺は思わず速攻で大声を上げてしまった。
咄嗟 に突っ込んでしまったが気を取り直し、ゴホンとひとつ咳払いをしてから少女に声をかけた。ちょっと怒ってますよ感を込めながら。
「……この暴挙に対する説明をじっくりと聞かせてもらおうじゃないか」
会合だったか行事の準備だったか教師の飲み会だったかなんだったか担任がなんか言っていた気もするが覚えちゃいない。まあ、実際どーでもよいのだ。こんな春ウララな午後の日に突然授業が休みになるなんて、いやっほーいとか叫びたい。
しかもうれしい事に今日はあの大人気コミック『ディバイダ・ガール』第七巻の発売日なのだ! いやっほーい!
なんとオリジナルDVD付き! みんな大好き水着回っ! しかも温泉回でもあるんだぜっ!! 謎のっ、謎の光は果たして出現するのか否かっっ!! 乞う、ご期待!
で、まあ、入学して日も浅く、まだそんなに親しくはない級友の何人かが放課後にゲーセン行こうぜーとかカラオケ行こうぜーとか誘ってくれて有難くはあったが、他の日ならば喜んで一緒に行かせて頂きたいところだが、今日ばかりは丁寧にお断りをし、一目散に書店へダッシュ! そしてコミックスばっちりゲットだぜっ!
明日も休みだし、これから家に帰ったらカップ焼きそばでも
あ、ちなみにちょっとどうでも良い事だが一言。俺はいわゆる『オタク』と呼ばれている人種ではない。まあ、趣味的にはだいぶ似通ってはいるし、ごく一般的な普通に常識のある方々の目には同じに映るかもしれないが。
えっと別に『オタク』って呼ばれるのが嫌なんじゃない。本物の『オタク』の皆さんのような、日本海溝よりも深い知識や大噴火して煮えたぎる灼熱のマグマのような情熱! そのような方々の足元にも及ばないライト層だからだ。『オタク』と俺が呼ばれるのは、余りにも
自ら名乗るとするならば『ファン』くらいが妥当なんじゃないかなと思う。
「ギャラクティカ・ウルトラ・スーパー・ダイナマイト・ディメンション・キイイイック!」
そんな訳の分からん叫び声が聞こえた気がした
ふふっ見事なキックだぜ。とか頭の中で思ったかどうかの記憶は定かではない。頭痛い。ごみ臭い。
なんか、キックとか言ってたから俺、蹴られたのか? 大事な頭部に大きな衝撃を喰らわされて、記憶喪失にでもなったらどうする? アホの子にでもなったらどうする? 封印されし記憶が蘇ったりしたらどうする? 暴力反対!
とか思いながら痛む頭を持ち上げてのろのろと周りを見回す。
目の前におかしなカッコの少女が立っている。いわゆるコスプレと言うヤツだ。うむ、嫌いではない。むしろ好物、いや大好物、いいや超好物だ!
そのおかしなカッコの少女は肩甲骨の下あたりまで有る、キューティクルがキュキュッとしている艶やかでサラサラな金髪を春風になびかせながら、オマケに頭頂部に天使の輪っかまで
あ、アイドルが居る。それもグループではなく単品で売り出されるべきアイドルが。記憶には無い顔だが俺はそう思った。そして宇宙戦艦にでも乗っているんですか? と
銀色のメタリック基調に赤や黒の部分的なカラーリング。腰や腕に何やらメカっぽいパーツ。ノースリーブで胸元が開いたキラキラとしたレオタードっぽい衣装。
その衣装は、出るべき所は出っ張って、引っ込むべき所は引っ込んだ、まるでどこぞのグラドルですくわぁっ! って叫びたくなるような
こんな真っ昼間の往来でいくら人通りが無いとはいえ、自分のような
俺は目前の少女による突然で理不尽な暴力に対して猛抗議をしようと身構えた。
俺への謝罪として少女の胸部あたりにセクハラまがいの行為をする権利を主張し、断固とした態度で要求を突きつけるつもりだ。もちろんそれは許されるべき当然の要求のはずである。無論、第二撃を警戒しつつだ。
が、俺が口を開こうとするよりも一瞬早く、少女が俺に向かってかわいい声で言葉を発した。
「どう?」
ん? 『どう?』とは何か?
『頭を
それとも『このコスプレどう思いますか?』か? ああ
んー、ちょっと意味不明。もしや頭部強打のせいで俺は言語が理解出来なくなってしまったのか? 怖い……。
などと脳内がぐーるぐる回りながらも考えていると、金ぱっつんで胸ぱっつんなこの少女はちょい厚めなスマホっぽい装置を俺に向けながら
「おかしいなー。今のキックで解除出来たはずなのに」
解除? 解除って何?
「『ギャラクティカ』と『ウルトラ』と『スーパー』と『ダイナマイト』それに『ディメンション』だから種類も順番も合っていてパワーも十分に出ていたはず」
ああ、なるほど。
「あの……」
と、ぱっつん少女が申し訳なさそうな顔で声を掛けて来た。うん、かわいい。
もうそんなに痛くもないし、こんな美少女に声を掛けられるなんて今後ないかもしれないし、触れ合うのなんてもっての
もう許してあげるよ。何か
「あの、もう一度キックしてもいいですか?」
「なんでやあああああーーーーーっっ!!」
俺は思わず速攻で大声を上げてしまった。
「……この暴挙に対する説明をじっくりと聞かせてもらおうじゃないか」