幼女に疲れたら熟女だよね

文字数 2,120文字

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映画ノベライズブログ(https://inaba20151011.hatenablog.jp/entry/2019/11/13/080154)


 手術服を着た萌美の弟がやってきた。

 点滴を持ってきている。

 手術前の日本人の拘束具を外していき、



「脳みそ取り出したら、猫耳をつけて、お前を映像に録画して投稿してやるよ」

「そんなんじゃ、チャンネル登録数は増えねぇよ!」

「ふぐっ!?」



 地獄突きを喉に一撃。

 萌美弟は鼻水を飛び散らせ、泡をふいて気絶した。

 助かった。これを耳に入れて正解だ。

 耳から、イスからほじくったクッションの綿を取り出す。

 手を拘束されてるのに、どうやって入れたんだという疑問はなしだ。

 手術室では、萌美父とハゲた男がいた。

 ハゲた男の頭はすでに開けられ、脳みそがのぞいており、意識を失っているようだ。

 萌美父は取り出したからっぽの頭蓋骨で、プリンを作っていた。

 後ろからそっと近づき、



「わっ!!」

「のうっ!?」



 萌美父は天井まで跳び上がり、頭を突き破る。

 俺の頭上でぷらぷらと、二本の足が揺れていた。

 手術室から出て、階段を上がっていくと、一階通路に出た。

 あそこは入ってはいけないと言われた地下室だった。

 気配がしたので、壁に隠れると、紅茶のカップを持った萌美母が近づいてくる。

 俺は素早く彼女に近づき、両手で持ち上げる。

 萌美母は不敵な笑みを浮かべ、



「あら? 私を抱っこするつもりなの?」

「違うね。高い高いだ!」

「こわああああああああああいっ!!」



 悲鳴を上げて気絶。

 高所恐怖症だと聞いてたので、効果は抜群だった。

 車のキーを取りにいき、車に乗り込む。

 エンジンをかけて、萌美の実家から逃げ出した。

 助手席には、彼女の携帯電話がある。

 俺は手をのばしていた。

 その手を強く握る。



 ――くそっ!



 未練を断ち切らなければ。

 俺は、ロリコンじゃないんだ!!

 萌美のかわいらしい行動や言動が頭の中を駆け巡る。

 ペットの犬をワンワンと言ったり、リボンでツインテールにして見せて、俺に笑顔をふりまいたり、日本のお餅を持って「これでおばあちゃんの年金使い放題だね」と小悪魔的な笑みを見せたり……。

 あっ、やべ。マジで涙出てきた。



『逃がしませんよ。お兄ちゃん』



 携帯から音声が飛び出てきた。

 ビクッと、身体を跳ね上げると、サイドミラーに何かが写った。

 般若の仮面をかぶった、日本人女性の使用人だ。

 萌美と一緒に、写真に写っていた日本人。

 刀を持って、サイドガラスに突き刺してきた。



「うおっ! 危ねぇ!」



 目の前を刃物が通りすぎる。

 一撃を外して、日本人女性は失速。

 だけどまだ俺を追ってくる!



「ぐわっ!?」



 車がガツンと揺れた。

 リアハッチに何かがとりついている。

 両手を金属の刃物に変えた、日本人男性の使用人だった。

 両足を地面にこすらせ、火花を散らしながら、車から離れようとしない。



「なんじゃありゃあっ! ア○ンチャーズかっ!」

『おばあちゃんと、おじいちゃんです』

「もう人間じゃねぇだろ!」



 脳を入れ替えただけで、あんなのになるか普通!?

 ベコンと、車の屋根がヘコむ。

 何かが上から落ちてきた。

 まさか……。

 車の屋根を指が貫き、ベキベキベキベキと開いていき、隙間から無感情な一つ目が俺を見つめ、



「お兄ちゃん。だいしゅき」

「いやあああああああああああああああっ!!!!」



 俺の中でかわいらしい萌美が今死んだ。

 チカッと、何かが光った。



「おふっ!?」



 運転席まで走ってきた、日本人女性の使用人もとい、萌美の祖母が後ろにふっとんだ。

 リアハッチにとりついた日本人男性の使用人こと、萌美の祖父には、頭頂部に手裏剣のようなものが刺さっている。

 車の前面に黒い影が、腕を組んで立っていた。



「あれは、ニンジャ? はうっ!」



 萌美の額に手裏剣が刺さる。

 俺はブレーキを踏みしめた。

 そのいきおいで、萌美は森の奥へと飛んでいった。

 息をぜいぜいと吐いていると、コンコンと車のガラスがたたかれる。

 言左衛門だ。

 指で、運転を代われと言ってる。

 うなずくと、わざわざ割られたガラスからスルーと入ってきた。

 忍者コスプレ姿で。

 俺は助手席に座る。



「妖精は森に帰ったようでござるな」

「……どうしてここが?」

「友である亀忍者に聞いたら、あの一家はミュータント登録しているようでござってな。住所はちゃんと登録してあったでござる」

「そうか」



 ガラスの向こう側に闇の森が広がっている。

 萌美に未練がないと言えばうそになる。

 俺は本気で彼女を愛(め)でていた。

 悲しくなってきたので、



「……ひんっ!」

「ガチ泣きでござるな。これを見て中和するがよかろう」



 言左衛門が、そっと、俺の太ももに何かを置いた。

 映画『ミザリー』のDVDだった。

 凶暴なおばさんが、作家を監禁して小説を書かせるという話だ。

 家に帰って、ふたりで日本酒飲みながら、大いに悲鳴を上げた。





ゲット・アウト解説【了】


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