ハンカチ、辞書、泡風呂

文字数 1,313文字

んぁぁぁぁぃ……きっもちえぇわぁぁ………
2017/03/06 00:31
あぁ、まさか修学旅行先のホテルで泡風呂に入れるなんて思わなかった……これは、至福だ……
2017/03/06 00:31
泡風呂なんて生まれて始めて入ったぜ。ただアワアワしてるだけだと思ってたが、なんというかこう……包まれてる感じが癖になるな……
2017/03/06 00:32
そういえばフロントに泡風呂の入浴剤が売ってたぞ。ちょっと高かったが――
2017/03/06 00:33
買いに行くぞ!!!!
2017/03/06 00:35
待て。多分お前の小遣いが無くなるくらいの値段だぞ。妹さんの土産とか木刀とか買えなくなるが良いのか?
2017/03/06 00:36
ぐっ……それはキツいな。妹に清水の舞台から飛び降りる忍者くん人形を買ってこいと言われてるんだ。すっぽかしたら殺されるかもしれん。
2017/03/06 00:38
……まぁ、確かにこの風呂は至福だ。もし良ければ半分ずつ――
2017/03/06 00:40
よっしゃ買いに行くぞ!!!!!
2017/03/06 00:43
……全く。お前はもう少し落ち着きを持ったほうがいいと思うぞ。
2017/03/06 00:43
あいにく、俺の辞書に『落ち着き』なんて文字は無いからな! いつでもどこでもフルスロットルだ!
2017/03/06 00:45
その割には「んぁぁぁぁぃ……」とか人生まで落ち着いた老人みたいなくつろぎ方をしていたみたいだけどな。
2017/03/06 00:47
それはそれさ。辞書に載ってる言葉なんて時代と共に変わってくもんなんだよ。ほら、さっさと入浴剤買いに行くぞ!
2017/03/06 00:48
はいはい。わかったから飛沫を立てないように歩け。周りの人に迷惑だ。
2017/03/06 00:50
(あ、そういえばさっき土産屋で買った富士山パンツを持ってきたんだった。アイツに自慢してやろうっと)
2017/03/06 00:51
(確かこの辺りに着替えを置いてあったはず――)
2017/03/06 01:23
ッッ!!! な、無い!!!
2017/03/06 00:57
どうした! 財布でも盗まれたのか!
2017/03/06 00:57
パンツが……俺の富士山パンツが無い……!! きっと、部屋に忘れてきたんだ……
2017/03/06 00:57
……はぁ……そんなものいちいち騒ぐことじゃないだろう。下着くらい無くたってその上にズボンを履けばいいじゃないか。
2017/03/06 00:58
……ズボンも……無いんだ……というか、何も無いんだ……着るものが……!!
2017/03/06 00:59
いや、それはいくらなんでも変だろう。それならどうやってここまで来たというんだ? まさか全裸で来たとでも……ハッ!
2017/03/06 01:01
思い出したようだな、京の都の陰に隠れていた怪しげなネオンの光るあの店を。俺がついついエッチな店だと思って突撃してしまったあの店のことを……そう、あの店の専門は……
2017/03/06 01:03
ボディ……ペイントッッ……!!
2017/03/06 01:07
そうだ!! 俺は全裸に服の絵を描いたまま風呂まで来たんだ!! 誰にも気づかれないほどの精巧なペイントによって、ついには俺自身ですら服を着ていると錯覚してしまったんだ!!
2017/03/06 01:08
なんということだ……! 美しい歴史に彩られた技術によってこのような悲劇が生まれるなどとはッ……!
2017/03/06 01:10
……これを使ってくれ……!
2017/03/06 01:12
これは……ハンカチ? あいにく俺はまだ泣いちゃいないぜ。
2017/03/06 01:13
いや違う。それは涙を拭くのではなく、君の大事なところを隠すのに使うんだ。
2017/03/06 01:14
そうか! 確かにこれなら俺の大事なところを隠すことができる! これで泡風呂の入浴剤を買いに行けるぜッッ!
2017/03/06 01:15
どうやらなんとかなりそうだな。偶然ハンカチを持っていて良かったよ。
2017/03/06 01:16
あぁ! 行こうぜ、フロント!
2017/03/06 01:17
その後、ハンカチを身にまとって外に出た彼は、すぐにホテルの警備員に取り押さえられた。
それはなぜか?
答えは、彼がハンカチで隠そうとしたのが乳首だったからである。

――完
2017/03/06 01:17
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