4-3.事件の真相

文字数 899文字

清美を神野家の長女として送り込み、自身は神野淳一と小夜子の娘美代子を育てた。清美にだけは贅沢に幸せになってほしいと、だが・・・。



「あれを見せておくれ」



福江が、沖津に言った。沖津は黙って美羽のスーツケースを開くと、中からピンクの化粧箱を取り出した。美羽が最初に沖津に拾ってもらった化粧箱だ。

怪訝な顔をする美羽の前で沖津は化粧箱を開ける。



「・・・あっ!」



化粧箱の底に、USBメモリが貼ってある。恐らく最初に沖津が取り付けたんだ!



「とても重要な情報が入っているUSBメモリでね、奴らに奪われないように在処を隠すため、そして、万が一僕の身に何かあった時でも、君がこれを開ける可能性を残すため、この化粧箱に隠し入れていたんだ」



沖津はそう言って、坂崎の持っているパソコンにUSBメモリを差した。

どうやらUSBメモリの内容は、神野淳一の遺書のようだ。

そこには、神野重工グループの全ての財産を、自身の正当な血統の娘である美代子と、孫の美羽に相続させるというメッセージだけが、淡々と流れていた。



「晩年淳一さんは、この事実にやっと気付き、全ての財産を本来の正当な血筋に残すことにしたんだよ」

福江が呟くように言った。



(それが・・・全ての事件の発端!!)



坂崎は美羽の方に身体を向けて、一礼すると、話し出した。

「申し遅れました、篠谷美羽さん。私は神野重工の軍事企画室 室長の坂崎と申します。
そして、この沖津は・・・当軍事企画室直属の軍事部隊、神野重工軍事特殊機動部隊の元戦闘員であり、現役時代は史上最強とも謳われた男です。
貴女の母美代子さんは、事故死ではありません。実際は、財産を相続させまいと企てる者の陰謀によって殺害されました。
我々は・・・貴女をも殺害して、神野淳一会長が最後に残した遺言を反故とし、全ての財産を自身が相続し、神野重工グループの実権を握り続けようと企む者の計画を阻止しなければなりません」



「ちょ、ちょっと待って下さい!そうすると、私を殺害しようと企む者って・・・」



1人しかいない。



「そう、貴女の叔母である神野清美社長の陰謀を阻止しなければならない!」
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み