天の財産タラント

文字数 614文字

 ここは天の国。
 天の子どもたちが、神さまのもとに集まっています。
 これから地上に生まれ落ちる子どもたちです。

「これから旅立つおまえたちのために、それぞれの地上での計画にあった旅の資金を用意しよう」

 旅立ちの時を迎えた子どもたちに、神さまは言いました。

 そばにひかえていた金庫番の天使が、装飾の施された銀の杖を両手で神さまの前に捧げます。
 それは杖のように長い鍵でした。

 神さまは、鍵を片手でつかむと、子どもたちの前で振り下ろしました。

 その先に現れたのは、ぴかぴかのコインのようなものでした。

 小さなコインは、次から次と湧き出すように現れて、小高い山のように積み上がります。
 それは、「タラント」と呼ばれる天の財産で、金でも銀でも銅でもなく、虹色に輝くものでした。

 金庫番の天使たちが、一人一人に決められた量のタラントを、袋につめこんでいきます。
 ある者は五タラント、ある者は十タラントと、それぞれ袋の量はちがいます。

 子どもたちは、順番に自分の分のタラントを受け取ると、次々と地上に旅立っていきました。
 
「うまく活かしてこれを増やして戻っておいで。天の財産がさらに豊かになるように。実りある旅を」

 そう言って、神様は子どもたちを送り出しました。

 地上に生まれ落ちると、タラントは見えなくなります。
 子どもたちは、神様の言葉もタラントのことも、すっかり忘れてしまうのです。

 目に見えない資金を持って、それぞれの旅が始まります。
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