【最終話】そして……、
文字数 2,143文字
【2034年? 導きの園。柊真衣】
『コージさん』と、何故か持っていた『楽々さん』のパスで私達はその奥へ通された。
私達は『導きの園』で1つの命を創りあげた。創らなければいけない命だった。
お姉ちゃんはその子に『なゆた』と名付けた。
園のリーダーである『ルーク・バンデットさん』はお姉ちゃんを生かす為にその顔へ仮面を被せた。お姉ちゃんが生き続ける為には仮面を付けることが不可欠だった。
お姉ちゃんは荒い息遣いで私へ1つの願いを託した。
そしてルークさんから教えられた伝手(つて)を当たったの。
――桜の木の生えた家。西暦2000年の日本、茨城、ヒタチナカの『桜一心(さくら いっしん)』を頼るといい――。
言われ、やって来た家で私は『一心(いっしん)さん』に抱きかかえられた。大きな腕、笑顔のシワがステキなおじさんだった。
その年、私は8歳で一心さんの息子『桜大河(さくら たいが)』と共に大学へ通うことになる。近年認められた飛び級制度によってそれは叶えられた。大河(たいが)は学生結婚の末、妻の奏楽(そら)ちゃんとの間に子をもうけていた。
一心さんと大河、奏楽(そら)ちゃんに支えられて、私と『なゆた』は育った。『なゆた』の傍には奏楽ちゃんの息子『壱貫(いっかん)』も居る。
しかし、一心さん達にばかり頼っていられない。自立の為、私は新聞配達の仕事を始めることにした。
仕事仲間のお兄さん、お姉ちゃんの皆が私に良くしてくれた。職務中は同僚の皆と別れ、一人前に仕事をこなした。
『なゆた』は重くなんて無かった。彼女が居たから頑張れた。胸を張って生きていられる。
だから私は歩き続けた。
【新2015年、イバラキ。柊真衣】
『なゆた』は3日後に高校生となる。新聞配達から帰った私は、上の階に居る彼女に聞いてみた。
開きかけた一冊の本に栞を挟んで問うたんだ。
『お姉ちゃん』と『先生』の子が出した答えだったの。
それをパンに挟み咥える『なゆた』を門の外まで見送った。
『なゆた』が大河の息子さん『桜壱貫(さくら いっかん)』に叱られながら駆けていく。この空には徐々に陽が昇り始めていた。
空には赤い鳥が舞っている。数年前から大河(たいが)の家の桜に巣を作っていた子だ。雛の為に餌を求めて飛んでいた。
何処までも、高く、遠くへ飛んでいった。蒼い空を風切り去っていく。
私は『立派に』忘れ物を残していった『なゆた』を追いかけ走る。
……とてとて、と。
いつの日かみんなの元へ辿りつけるように、何処までも青空の下を駆け続けた。
【化け物クリエイターズ・完】