第44話  遠方組の集まり 2

エピソード文字数 5,257文字

じゃあ次私歌おっかな。同じようなアニメ路線で

 聖奈が宣言すると、俺と染谷くんは曲を探すの止める。

 とりあえずは聖奈の勇士を見届けようじゃないか。

あーこれも知ってます。わたひも歌えるよ
美優も大好きな曲だね

 既にレベルの違いを見せつけた白竹さん姉弟は高みの見物である。


 これで聖奈も上手かったらどうしよーなどと思っていたら……

 その数秒後に固まっているのは俺と染谷くんだった。

 お前……マジ? 超上手いんだけど!



 しかも振り付け付きだと?

 まるでどっかのアイドルのPVみたいじゃねーか!


 力強く歌う場面など、白竹さん達には無い良さを……こいつは持ってやがるだと?

や~ん! すごぉい聖奈ちゃん!

 白竹さんがイヤンイヤンとクネクネする状況の中、間奏となった瞬間、あいつは俺にドヤ顔をお見舞いしてくるのだった。


 すっげー勝ち誇っている。これ以上無いくらいに。


 


 後半は白竹さんまで混じってしまい、更にシンクロする様子を見ていると、マジで凄いと思う気持ちとは裏腹に、この後どうしよーと思ってしまった。



 ふと隣にいる染谷くんと目が合うと、彼も同じような顔になっていた。


 まさか。染谷くんまで上手いって事は無いよな?

 


こりゃヤベーって。

俺も人並みに歌えるけど、ハイレベルすぎる

 いや、あの顔はきっと、俺と同じ事を考えているに違いない。



 盛大に盛り上がった曲を終えて意気揚々と凱旋する聖奈。そして既に歌った三人の注目は、俺らに向けられるのだった。

ねぇ黒澤くん。これ歌える? 一緒に歌わない?
 なんという助け舟だ。

 この時の染谷くんはとても心強く見えるのだった。

あ、うんうん! 歌えるよ。じゃあ一緒に歌おう!

 この状況で一人で歌える訳がない。それは染谷くんもそう思ったに違いない。

 二人で歌えば、その責任も半分こになるし、同じ仲間がいるというのは非常に心強い。



 ってか。白竹さん姉弟も聖奈もさ……

 とてもじゃないが、高校生とは思えないレベルすぎるだろ。



 さて。その結果なのだが……


「あはっ。みんなめちゃ上手いですねぇ~」と白竹さんは褒めてくれるが、聖奈も魔樹も「いいんじゃない?」といった顔を見せてくれた。



 これでいい。これで……

 いや、ほんと。いい訳をさせてもらうと、三人ともレベルというか格が違いすぎるんだよ。




 これが楓蓮なら……もうちょい上手く歌える自信があるのだが。

 ちなみに男の曲だけど。などと負け惜しみっぽい事しか頭に出てこなかった。 



 ※


 その後は白竹さんや魔樹。聖奈によるローテーションが組まれると、俺達は応援役に徹しようとしていた。
あんた達も歌いなさいよ!

 こう言われると、顔を引きつらせながら染谷くんと歌うハメに。

 あのな聖奈。お前らは上手すぎるからそんな余裕なんだよ。



 まぁ……でもこうやって歌っている間にも、恥じらいは無くなり、ついには一人で歌う俺達。 

 ヘタクソだろうがこの場が楽しければいいじゃない。そんな結論に達していた。




 そしてカラオケで五人が騒いでいると、時が経つのは早いもんだ。

 あっという間に二時間まであと十五分を告げる連絡が入った。



 ここでカラオケは終了し、予約で入れておいた曲をバックに話し合いとなった。

次。何処行く? ゲーセンいく?
駅前近くにあるショッピングモールの二階にアミューズメントっぽい場所があるらしい。
じゃあそこに行きましょっか
聖奈が立ち上がると、みんなも立ち上がろうとする。その時白竹さんが「ちょっと待って」と言う。
あの……あにゅ
 ん? どうしたんだ? 俺達を見つめる白竹さんはどことなしか恥ずかしそうな表情を見せると、今度は魔樹を見つめる。
美優。どうしたの?

 聖奈の返事にも眉を八の字にしながら困った様子である。

 そんな彼女を見て、染谷くんと顔を合わせるも、俺と同じような疑問系の顔になっていた。

あの、今日みなさんに……言いたい事があるのです
…………

 どうしたんですか? そんな改まって。

 その時魔樹の顔色を伺うが、その時ばかりはこいつが何を考えているのか分からなかった。

えっと。私。こ。こんな風に沢山の人と遊ぶの。わ、私。初めてで、その……だから……

 白竹さんも……初めてだったのか。


 などと思っていると、彼女はそこから口ごもってしまい、中々喋ろうとしない。



 その間固まる聖奈や染谷くん。そして俺。


 なんて声を掛けていいか分からないでいると、白竹さんは急に思い立ったようにスマホを鞄から取り出すと、その画面を見ながら喋り出した。


み、みんなと仲良くしたいです。私。小さい頃からあまり人と喋れなくて、こんな風な喋りになっちゃって。この……この集まりは大事にしたいと思ってます……だ、だから
 一生懸命喋ろうとする白竹さんの横に来た聖奈は、スマホの画面をちらっと見たかと思えば……

今のセリフそのまんま書かれてる。


きっと……今日の集まりでみんなに言おうとした事みたいね。

分かったわ。美優。こちらこそよろしくね
聖奈がそう答えた瞬間、白竹さんの顔がぽわーっと明るくなった。
はっ はひ! お願いしますっ!

 と同時に魔樹も笑顔になったのは見逃さなかった。



 

 待って。まってくれ!


待って白竹さん!


あの……俺も実は……こういう集まり初めてなんです

く、くりょ澤くんも?
聖奈以外は、疑問系な顔になっていたが、俺は構わず続ける。
本当なんです。中学とか、小学校とか……実は友達が出来なくて、だから……白竹さんと一緒です
ほんと?
魔樹は俺のいう事を信じられないと言ったように見える。
う~ん。でも黒澤くんってあんまりそういう風にも見えないっていうか……
まさかの染谷くんにも疑問視されてしまうのか……
いや、本当なんだ。色々あってさ……。恥ずかしいんだけど……思いっきり高校デビューなんだ
そこまで言って誰も何も言ってくれない。 そう思ったら……
蓮のいう事は本当よ。意外だけど中身はとっても繊細なのよ
みなの注目を集める聖奈だったが、更に続ける。
女の子みたいな性格だしね
おいっ! なんでそうなる!

 そんな聖奈に突っ込むと、高笑いをあげるのだった。



 だけど、そのやりとりが良かったのか、みんなに笑顔が戻るのだった。


 でも。みんなにはこれだけは分かってほしい。

俺も白竹さんと同意見です。この集まりは……大事にしたいと思ってます
勝手に敬語になっちまったが、その時染谷くんと目があうなり肩をポンと叩かれる。
黒澤くん。白竹さん。二人の気持ちは分かった。それなら僕も同じく、この集まりを大事にするよ
そうね。仲良くしましょ

 そう言いながら聖奈が白竹さんの背中から抱きつくと、一人だけノーコメントな奴に視線が集まる。


 魔樹は観念したように口を開いた。

……分かったよ。

……美優と仲良くしてあげ……

お前も仲良くするんだよ
 まさかの俺に阻まれるとは思わなかったのか、虚を付かれた様な顔になる魔樹だったが、すぐに無愛想な顔へと変貌する瞬間――

あんた達もいい加減にしなさい。


魔樹くん? 美優の為だと思うんなら、もうちょい愛想良くしなさいよ。蓮だって同じよ。ほら。ニコっと笑いなさい

…………

そ、そ~なんです。魔樹っ! 


もっとフレンドリーになるのでしっ! はいっ! スマイル!

…………
魔樹。お姉ちゃんのいう事を聞きなさい
は、はいっ! 分かりました。
  聖奈や白竹さんの提案に、目を合わせる俺と魔樹。


 そして超不自然なスマイルをお互いに見せ付けると、なんとか事態は収拾するのであった。


 そんな時、カラオケの予約曲も終了し、バッチリなタイミングかと思われたが……

ん。これは……
あ、あわわっ……ごめんなさい。あの……いっぱい曲を入れちゃってその……

 この歌は……知ってる。

 

 知ってるも何も、こりゃ乙女ゲーの俺様アルフレッドのキャラソンじゃねーか。


 

あら。美優もこのゲーム好きなの? 

え? 聖奈ちゃん。アルフレッド知ってるのですか?

よ~く知ってるわよ。結構前からやっててね。

アルフレッドは別にどーでもいいけど。ニコラは好き

 聖奈も知ってるのかよ。まぁあれは女の子なら誰でも好きそうなゲームだからな。

 

 ちなみに。アルフレッドというのはその乙女ゲーの中でも主人公格でランキング一位なんだぞ。

 そしてニコラというのは三位だが、俺もわりとニコラは好きだったりする。


 癒し系ショタなんだよ。彼は。

え?


美神さんもニコラが好きなんて。なんてこと。

嗚呼、お話してお友達になりたいっ!

 みんなが乙女ゲーの話をしている間にも、前奏が終わり歌詞がテレビ画面に写った瞬間だった。

 

 俺はマイクを取り、ステージに立っていた。

行くぜっ! みんなっ!


俺様についてこいよっ! ウォンチュー! 


 この瞬間。全員の視界をジャックしたのは俺だった。



黒澤くん?
ちょっとあんた。この歌知ってんの?

 知ってるさ。中学時代三年間は女だったんだぜ? 

 しかも結構本格派。わりーが。最初の掛け声だけじゃないんだよ。

 

 まくし立てるような台詞も一字一句間違えず、アルフレッドに成りきって俺様節を炸裂させていると……

ふわっ! しゅ。しゅご! すごいです~~~!

俺を……お前の身体に刻みこんでやるっ! 

シュビドゥバー!


 ああっくそ。ここは声が絶対でねぇんだよ! 

 楓蓮なら出るんだが。と負け惜しみは忘れない。

 



なんなの黒澤。何で乙女ゲーのキャラソン歌えるのよ。

しかも上手いし。

何だか俺だけ分からない世界だし。

ううん。男の子なら普通分からないから大丈夫よ。

蓮がちょっと変なだけだから。

 ナイスフォローだ聖奈。

 染谷くんが知ってたら知ってたらで……面白いけど

 やがてアルフレッドのキャラソンが終わると、何故か拍手喝采だった。

 


参ったね。黒澤くんにそんな隠しスキルがあったなんて
急に歌いだしてビックリでした。黒澤くんって面白いですねっ

そういって頂けると、はっちゃけた甲斐があるってもんですよ。


知ってるのは歌わないと。ね。

急にはっちゃけたのは、あんたなりに「仲良くしたい」っていう意思表示なのね?

そのとおり。それ以外に理由はありません。

正直言いますと、めちゃ恥ずかしかったです

 そんなやり取りをしている最中、魔樹だけがカラオケのリモコンをタップしていた。

おっと。魔樹も対抗するつもりなのか?

 みなの視線を集める魔樹は、リモコンでの操作を終えるとマイクを手に取った。

 

 そして。画面に写ったのは……まさかのニコラのキャラソンじゃねーかよ!

ちょっと……魔樹くん。これ本当に歌えるの?
マジかよお前……そう来るとは思わなかったぜ。
くくっ……

 みんなの心配をよそに魔樹は余裕タップリの表情を浮かべる。


 コイツが上手いのは別にいい。それは別に構わないんだ。


 でもな……このニコラのキャラソンは……

君~と、僕と。らぶちゅっちゅ。ちゅっちゅは嬉しいだーい好き。

わぁお! 魔樹がノリノリなのでしっ!

 そのクッソ恥ずかしい歌詞も、魔樹には関係無かった。

 しかも何処となしか見たことのある振り付けに、こいつも本物だと思った。


 歌い方も表情もショタニコラそっくりである。


 最初は聖奈も俺も目が真っ白になってたが、あまりにも堂々とした歌いっぷりに、口を開けたままになってしまう。

私も歌えるわよっ!
私も歌いますっ!

 えらいことになってきた。

 ステージ上で三人がニコラのキャラソンを熱唱するとは。


 この流れに沿って俺も歌っても良かったが、一人取り残される染谷くんに申し訳なく思い……


 つーか。何で魔樹がニコラのキャラソン歌えるんだよ! それが一番の謎だから。

 やがて三人の「ちゅっちゅ」が聞こえなくなると、全員が何故か満足げだし。 

あれですよ。魔樹も黒澤くんと仲良くしたいっていう意思表示なのです
三人で歌えるなんて。嗚呼良かった……

つーか乙女ゲーのキャラソンだろ? 恥ずかしくねぇのかよ!

しかも何だよあの顔は。すっげー満足そうだし。やりきった感パネーぜ。


 何だか魔樹ってさ……


 あーいう満足な顔やドヤ顔見てると「あ~嬉しいんだな」って思っちまって。ほっこりするんだよな。


 そう考えると、わりと分かりやすくて可愛い奴なんじゃねーかと思い出した。

 そんな時、部屋に備え付けられた電話が鳴ると、全員がハっとなった。


 早く部屋から出ないとヤバイぞ。

よ~~し! さぁ、次はゲーセン行くわよっ

そうだね。さぁて。今度は俺が何か見せ場つくんねーと。

 聖奈先導の元、遠方組は次のステージへと進もうとした。


 その時、ふと白竹さんと目があう。

 ニコっと笑顔を見せてくれると、俺も俺のもちうる最大限の笑みを返すのだった。


 そしてみんなでカラオケ屋さんのカウンターで勘定してる最中、聖奈が耳打ちしてくる。

ねぇ。今度二人で行く時は一緒に歌うわよ。
ああ任せとけ。楓蓮ならもっと上手く歌える自信がある。
うん。絶対だからね

 何だか白竹さんよりも聖奈のほうが喜んでねーか?


 まぁいい。その笑顔見てると、俺の黒歴史の中で覚えた事は決して無駄ではなかったと、そう思えるのだった。

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登場人物紹介

キャラのプロフィールは、章の始まりにも記載しています。


ここに記載されているのは主要人物です。

その他の登場人物は章の始まりなどに記載しています。


読者視点は神視点。

物語の中の人達が知らないことを全部見る事ができます


また、二章からはキャラの心の声まで聞こえます(フキダシが灰色)

 ★ 黒澤 蓮 くろさわ れん


 本編の主人公。高校一年


 男女入れ替わり体質。
 
 弟の凛と共に、新天地で新たに生まれ変わろうと、楽しい学校生活を送ろうとする。友人作りに重きを置き、人との付き合いにはとても慎重である。


 とても弟思いの良いお兄さん(お姉さん)

 ★ 白峰楓蓮 しらみねかれん


  蓮の女性の姿。白峰というのは偽名。

  黒澤家とは繋がりを見せないように演じる。


  心の中は男の子なので、女の子のファッションやらに興味が無い。

  とても美人なのにあまり自覚がなく、女性の姿はオマケだと思っている。

 ★ 黒澤 凛 くろさわりん


 小学校六年生


 男女入れ替わり体質。

 

 兄である蓮を慕い、とっても素直で女の子のような性格。
 ことある毎に兄に甘えてしまい、いつまで経っても、子供のままなので、蓮は凛の将来をとても心配している。



 ★ 白峰 華凛 しらみねかりん


 凛の女性の姿。

 外部との接触が無いので、彼女の存在を知るのは家族だけ。

 楓蓮と違い、おしゃまさん。


 ★ 美神聖奈 みかみせいな


 高校で蓮と同じクラスとなる。実は小学四年生までの幼馴染。


 容姿端麗。成績優秀。運動神経抜群。リーダーシップ抜群。お金持ち。

 など、全てを兼ね備えている人。


 二人目の主人公。

 ★ 白竹 美優 しらたけ みゆう


 蓮と同じクラスとなる。ピンクの髪が目立つ美人。

 自分の家の喫茶店で働いており、メイド服で接客をこなす。


 学校と喫茶店では、雰囲気がまるで違うのには理由があり……

 

 三人目の主人公。 

 

 ★ 白竹魔樹 しらたけまき


 蓮の隣のクラス。美優は双子の姉弟。


 学校ではとてもクール。喫茶店では男の娘?

 双方を知る蓮にとっては、非常に疑問な人物。


 四人目の主人公

 ★ 染谷龍一 そめやりゅういち


 蓮と同じクラスとなり、前の席という事で付き合い始める。

 わりと積極的。学校ではいつも笑顔で誰にでも優しいが……

 

 五人目の主人公

 ★ 平八 へいはち 


 聖奈専属の運転手。

 黒澤家の秘密を知っており、蓮の親である麗斗(れいと)とは旧知の仲



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