006.とある会社の事情

文字数 1,062文字

池森のマンション。


我が家のごとく上がり込む安崎に、ため息しかでない池森先生であった。

何だよ……




人がこれから超大作を書き上げようとパソコンを立ち上げたタイミングで。

先生の「超大作」はリアルガチ死亡フラグなんでやめてもらえませんか。
……




で、今日は何だよ。

今日は、『池森圭治のいつもギリギリ』に関していくつかお話がありまして……
あーわかったぞ、打ち切りだな!
まぁそう焦らずに……
せめて否定しろよ!
まず、前号で名前を出した作家さんの事務所やら何やらから、


一斉に抗議の連絡が来ました。

いきなり嫌なニュースかよ! 作家としての寿命が縮まってないか!
まだあったんですか?
……
あとは……



読者から「編集さんと池森しかしゃべって無くね?」という最もなツッコミが来ました。

今更にも程が有るぞ!


というか俺だけ呼び捨てな!

あと編集部からは、「相談者(バイト)の時給高すぎね?」という羨望の声が上がってました。
リアルなやつやめろよ……
まぁ、出版界は不況ですからね……
お前毎回そのセリフで色々流してないか?
……まぁ、いいじゃないですか。



でも『池森圭治のいつもギリギリ』、反響はすごいですよ。


先生が『文壇』で最後に連載してた小説の5倍ぐらい読者の反応がいいですよ。

喜んで良いのか微妙だが、まぁ打ち切りはなさそうだな……
いや、いつもより5倍のペースで苦情が来てます。
そこの反応かよ! 



好評を博してるんじゃないのか!

いや、まぁそれはそうですけど、いい反響も前作よりは多いですし……




編集部としては、このまま続ける方針です。

それは何よりだ。




新刊の予定もないし、これがなくなったら作家として露出がなくなるからな!

次の相談者は、バイトじゃなくて読者から募集してみようと思うんですが、どうでしょうね?
ん……まぁいいんじゃないか。その辺は任せる。




ところで、前号で出てきた那古野さん、本当にお前の会社で雇ったのか?

それがですね、まずパートの契約社員ということで入社してもらったんですが……




これがとんでもない有能で、託児所を確保するという条件で正社員になってもらいました。

おお! 結果的に読者の悩みを解決したじゃないか!
そうなんですが……





代わりに僕がパートになりました。

……












先生! 先生からも上になんとか言ってもらえませんか!



一緒に10年以上やってきた仲じゃないですか! お願いしますよ!

残念でもないし当然。男らしい最期といえる。
……






ですよねー。

わかってんなら仕事しろ!









『池森圭治のいつもギリギリ』 

 



 第6回 おわり




ゲスト……安崎(弊社アルバイト)


聞き手……池森圭治(作家)


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登場人物紹介

池森 圭治 KEIJI IKEMORI



32歳男性。作家。漫画原作者。

過去にはヒット作もあった作家だが、近年は鳴かず飛ばず。


ジャンルは本人の主張によると純文学だが、世間的にはイロモノ扱いされている。



<代表作>


『地を這うホイール』(著)

『すべてがパーになる』(著)

『加害者Aの放蕩』(著) 


『こんにちは希望の生徒』(原作)

安崎  ANZAKI




34歳男性。共創文芸社の編集。労働組合の委員長。


万年窓際族だが、巧妙にクビだけは回避している自称敏腕編集者。

那古野 絵見 EMI NAGONO



主婦。第5話に登場。

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